あらすじ
採譜が禁じられていた、システィーナ礼拝堂だけのための聖歌『ミゼレーレ』。少年モーツァルトが聴き覚えて楽譜を起こし世に広まった、喩えようもなく美しい聖歌と、パリのアルメニア使徒教会で起きた聖歌隊指揮者の謎に満ちた殺害事件にはいかなる関わりがあるのか? 遺体は両耳の鼓膜が突き破られていた。凶器は? 遺体のそばには子供の足跡……定年退職した元警部と、優秀だが薬物依存で休職治療中の青少年保護課の若い刑事が、それぞれのこだわりのもと、バディを組んで事件に挑む。『クリムゾン・リバー』の著者による圧巻のミステリ!
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Posted by ブクログ
ジャン=クリストフ・グランジェ『ミゼレーレ 上』創元推理文庫。
何年振りに文庫化されたグランジェのミステリー小説。
その昔、海外翻訳物の連続殺人鬼ミステリー小説ばかり読んでいた時期がある。扶桑社海外ミステリーが創刊され、勢いのあった時代である。グランジェもその時に読んだ作家の1人であった。その時は、後に映画化された『クリムゾン・リバー』と『コウノトリの道』を読んだ。2作とも非常に面白く、その後『ヴィドック』と『狼の帝国』も読んだ。
それから何と長い時間が経過したのだろうか……
さて、本作の上巻であるが、やはりグランジェだった。何とも重厚な雰囲気の中で奇怪な殺人事件が描かれる。謎が謎を呼び、殺人事件は連続殺人事件へとつながっていく。その謎の中核を成すのが、憐れみたまえという意味を持つ美しい聖歌『ミゼレーレ』だった。
2006年12月、パリのアルメニア使徒教会で聖歌隊指揮者でオルガン奏者のウィルヘル・ゴーツという名の63歳の男性が殺害される。彼は謎の凶器で両耳の鼓膜を破られ、激しい痛みの中でショック死していたのだ。
たまたまアルメニア使徒教会を訪れていた元殺人課主任警部のリオネル・カスダンが捜査権が無いにも関わらず、この事件の捜査に着手する。
同じ頃、過去のトラウマからヘロインの依存症で休職中の青少年保護課警部のセドリック・ヴォロキンも、この事件に興味を持ち、独自に捜査を始める。
捜査の過程で知り合ったカスダンとヴォロキンはコンビを組み、捜査を進めるうちに、この事件は次第に連続殺人事件へと発展する。
本体価格1,300円
★★★★★
Posted by ブクログ
クリムゾンリバーや通過者、死者の国、等の作者なのでかなり期待しながら読んだ。
退職警部のカスダンと、薬物依存で治療中のヴォロンがバディを組んで、上から捜査中止を命じられた殺人事件を追う。グロい殺人方法と小児性愛者の罪と共にナチスが関わった拷問実験等がアルメニア出身のカスダンの心に火を付ける。カスダンとヴォロンの視点で交互に語られる。上巻終わりから事件が加速する。