あらすじ
その瞬間、手にしたかったものが、僕の目の前を駆け抜けていったような気がした――。テレビ制作会社に勤める秋吉、知人の結婚式で出会った風俗嬢の優香、育児放棄気味の母親と暮らす十歳の明菜、末期癌を患う秋吉のクライアント、大関。長い人生の中でのほんの一瞬、四人は絶妙な距離を保ちながらも、ひと夏を過ごす。嘘で埋めつくされた日常の中で、願いのようにチカリと光る「本当」の物語。(解説・菊地成孔)
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Posted by ブクログ
夏。その響きはただの季節のようにも感じるし、青春の大切なひとときを感じさせるもののようにも思う。この作品は、そんな忘れられない、しかし年が経つとおのずと忘れてしまうような、忘れたくないひとときを描いた作品だと感じた。儚い。余韻が残る作品だった。もう遅いなと思うことは案外まだ間に合うぞ、といったメッセージもあるのだろうが、僕は、青春のひと時を感じるということに感想の全てを持って行かれた。青春の甘酸っぱい記憶や忘れられない記憶、何気ない景色を見た時にふと思い出す記憶、そういったものを作り出すのに年齢は関係ないのだなと感じた。結局は自分がどう考えて、どう行動するか。そしてその瞬間をどう感じ、どう意味づけるかだと学んだ。結婚式の後、初めて会った人と2人で手を繋いで、ただ朝まで話しながら歩く。この記憶に忘れられない、どこか懐かしく名残惜しいものを感じる。そういった大切なものを、大切にすることが、人生を豊かに過ごすコツのようにも思われた。この作品は、終わりがあっけなく、分かりやすい結末が書かれていないだけに、その先の登場人物について想像させられ、何とも言えない儚い気持ちになった。ただ、そういった部分も含めて、読んでよかった一冊。
Posted by ブクログ
「ボクたちはみんな大人になれなかった」より好きな作品だった。あぁ、取り残されてしまったなぁと思った終盤、胸が苦しくなって泣きたくなった。主人公にとって忘れられない、ただの夏