あらすじ
最後の1秒まで幸福は追求できる
その真実をつづった遺稿を特別収載。
最期の時間でたどり着いた「人生の最終原理」とは――
筆者は2022年の夏に食道癌が見つかった。
本書は、癌の各局面にあっての考え方や意思決定の記録である。
お金よりも大事なことにどうやって気づくか、
限られた時間をいかに生きるか――。
遺稿「癌の記・裏日記」も特別収載。
【本書の内容】
第1章 癌患者と投資初心者は似ている
ステージIII、「真面目な癌患者になろう」
情報を、拾うか、捨てるか
上機嫌な癌患者でありたい
第2章 がん保険はやっぱり要らなかった
治療にかかったお金はいくら?
「不安に対処する」ための保険は賢くない
加入していい保険の条件
第3章 癌になって分かった、どうでもいいことと大切なこと
悩ましい頭髪の問題
わが物欲生活と身辺整理
再発、意識する持ち時間
癌患者には親切にしないで
第4章 山崎式・終活のセオリー6箇条
最晩年の住まいと介護を考える
お金を守る超合理的相続対策
「墓なし・坊主なし」のわが家の弔いルール
第5章 お金より大事なものにどうやって気づくか
〝善意の愉快犯〞として生ききる
お金は「増やし方」より「使い方」こそ大切だ
「幸福」を決めるたった一つの要素
「お金より大事なもの」にどうやって気づくか
最終章 癌の記・裏日記
【著者プロフィール】
山崎元(やまざき・はじめ)
経済評論家。専門は資産運用。1958 年北海道生まれ。東京大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。野村投信、住友信託、メリルリンチ証券、楽天証券など12 回の転職経験を持つ。連載記事やテレビ出演多数。著書に『全面改訂 第3版 ほったらかし投資術』(水瀬ケンイチとの共著、朝日新書)、『超改訂版 難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください!』(大橋弘祐との共著、文響社)、『経済評論家の父から息子への手紙――お金と人生と幸せについて』(Gakken)など。2024 年逝去。
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Posted by ブクログ
著者が亡くなったことを知り驚いて、読んだ。癌治療を投資のにたとえていらっしゃるのが経済評論家らしい。余命までをロジカルに冷静に過ごされたように読めるが、実際はつらい時もあったんだろうな。お母様が亡くなられた後1週間後に自分が亡くなるとは。かけつけたかっただろうな。
Posted by ブクログ
かなり踏み込んで書いてある。面白い。シンプルな装丁。最期の日記は編集されていないような感じ。
抗がん剤の副作用について、脱毛については記載あるも、痛みについては一切記載ない。あえて触れなかったんだろうか。祖母は胃がんで痛みに耐えかねて殺してくれ、と言っていた。筆者は痛みについては触れず、淡々と仕事をする。色々な絶望や痛みと闘って当然の癌との闘病。しかし、日常を取り戻すかのような仕事ぶりは尊い。敬服。1番辛いのは家族とそれほど会えないことだな。子供が小さいと本当に感染症は避けられない。会えないのは辛い。
ヒントからして、大学病院は順天堂だな。順天堂は人権方針を掲げていて、筆者が直ちに退院したい、と言ったら即日退院になったのは、患者の人権に配慮したものと思う。入院していれば寿命が延びたとは思うが、筆者の望む生活は叶わなかった。それであれば短くても自身の望む生活をしたかったのだろう。個室でも食事の配膳とかは病院のリズムに合わせないといけない。
順天堂は基本的になんでも高いが、順天堂ですら、癌の標準治療で100万程度(うちほぼ個室料)なら、確かにがん保険、医療保険は要らないな。ほとんどの人は高額療養費は知ってても、けんぽ独自の給付の規定は案外知らない人が多い。調べておこう。
筆者の生ききった感は、自分が何のために働いていて(正しいことをわかりやすく多くのひとに伝える)理解しており、それをある程度達成したことと、息子が性格がよく優秀で自分より秀でた個体を残したという生物的な満足らしい。この2つ、参考になる。愛情表現としては淡々と聞こえるがじんとくる。
確か1月1日に亡くなっているので、本当にギヒギリまで日記が載っている。筆者は何より考えることが好きなんだろう。「論」を売ることを生業としているのだから当たり前か。
意思決定の根拠にならない情報は入れない。そのために、病気を公表しない。親切な人を遠ざけ、お礼や面会の時間を体力回復に充てる。
カネより大切なものに気づくきっかけは怒り。怒りとは、喜びよりもより個人の価値観が出やすい。怒りを感じるポイントは個体差がある。怒りをヒントに価値観を浮き彫りにする手法もたしかアンガーマネジメントで出てくるような。
しかし、怒りのままではいけない。怒りは原始的な本能的な感情。スイッチにはなっても革命後の制度を安定させることはできない。Twitterのような自由で無責任なメディアに吐き出され蔓延するのは怒りばかり。怒りは信用、共感、プライドに変換しよう。
筆者のように30台後半で3000万の収入ある人は数%しかいない。だから大半の人の意思決定の参考にはならないかもね。最も大きな費用が就業不能の機会費用になるかは、本人の稼ぎ次第では。
稲盛和夫さんの、明るい人が成功する。明るい人とは、人の長所を見つけられる人。ってのは、人を好きになれるか、→愛嬌よくなる(自分も含めて、長所にフォーカスできる)→人間関係良好ってことだろう。
筆者が、死の間際に思った、愛嬌の大切さとは、結局、人間関係に恵まれるかってことだ。田内学さんも言ってるけど、お金が偉いわけではない。お金は手段だから。お金があっても働いてるくれる人がいなければ無価値。ネットワーク、経済圏を持ってなければ、通貨という手段は無価値。
お金は目的でなく手段。ため方より、使い方を考えよう。Die with Zeroはファイナンシャルウェルビーイングで注目されていて、筆者の感想が興味深かったが、とても冷静。パーティー文化ではなく、日常の大切さとか、日本は公的医療が発達してるとか。
筆者はマーケティングを敵視している。マーケティングで需要を作り出して経済を活性化している側面もあると思うけど。流行にのることやブランドものを身につけるのって、それこそ承認欲求だよね。マーケティングに煽られあ物欲は自己承認欲求、幸福追求。
地位材競争から降りるのが幸福の道、とはそれはそうだけど、不動産とか子供の教育費用とか、必要に迫られて買うけど実は地位材のものある。そこから降りるのは難しいな。
ガイドラインまで読んで医者と会話する筆者。さすが。経済学でも基本書は捨てない方がよかったとのこと。PCを何台ももちAppleが好きなのに、紙に書き込みとかしてるのは意外。
お墓の撤去、勇気ある…そこまでできたら相続は揉めない。
難しいことはわかりませんが…の改訂、まんがで読破資本論の解説、人生にお金はいくら必要か、白井聡の資本論、ぜひ読んでみたい。
Posted by ブクログ
改めて惜しい方を亡くしたと思う。新NISAが始まったその時に亡くなったことがあまりにも運命的だと感じる。他人の評価も過去もサンクコストと言える彼に、自身がインデックスを取り崩す段階で、「取り崩せない問題」を語ってほしかった。
恐らく、同じように「必要な時に取り崩す。損をしても、その時の最適解を選ぶ」なのだろうけど。
癌との付き合い方向かい合い方と投資を比較しているのも面白い。
自身が余命を医師に聞いたことを、投資初心者が保証を求めるのと同じだとして「馬鹿と笑ってくれていい」と言い切れること、いつものユーモアが健在であることに尊敬する。
後藤氏との対談でも言っていたが、「希望と予想を混同させない」。これはとても役に立つ示唆だ。よくポジティブシンキングというけど、いつも違和感があったので、明確に言語化してくれた。『夜と霧』でも根拠なく「クリスマスは家族と過ごせる」と希望を抱いていた囚人はクリスマス後に亡くなることが多かったとあった。絶望は人を死に追いやることもできるのだろう。事実は事実として、受け止める勇気を持とう。
警告として、同様なことがライフプランニングにも言えるとある。期待リターンは希望リターンであり、リスクを無視しているからだ。長期投資はリスクを低減するものではない。私も彼のこの主張に初めて出会った時は驚いた。あまりにも「世間の常識」とかけ離れているからだ。それでも、人間は経済的合理性だけでは判断・行動できないので、最初に戻るが惜しい方を亡くした。
著者が『Die With Zero』で賛同する主張
・真に価値あるお金の使い道は経験⇒思い出
・楽しむ能力は年齢に依存する
・「仕事が面白い」はお金を使わない理由にならない
・寄付、相続は生きているうちに有効に使う
著者は賛同できないところは、「祭り」=大きなイベントよりも「日常」を重視したほうが良いとしている。私も著者に賛成する。ハレとケ、としてメリハリをつけないとDieの著者のような富豪でない限り、どんどんエスカレートすると思う。人はアドレナリンよりもセロトニン的な幸せの方が良い人生を送れると思う。
稲盛和夫氏が部下に宛てた手紙の冒頭
「明るい人が成功する。人の長所を認める人が明るい。」
人生最後の日のい最終原理
本人の側で、最後まで楽しんで、幸福を追求することができて、一方、過去の通算成績は持っていくことができないし、責任を負うこともできない。
他人はあなたを過去で評価するかもしれないが、それに対しては影響を与えることもできないし、もう働きかけることができない。
この境目を最大限に都合よく活用すること。
著者のご母堂がご子息より一週間早く亡くなってしまい、逆縁にならなかったことは奇跡だと思う。
ご冥福をお祈りいたします。
Posted by ブクログ
投資にあたり非常にお世話になりました。
ご冥福をお祈りします。
著者に対する想いとは、はっきり切り分けて本書についてだけ評価、感想を書く。
まず本書ではないが、帯にダメ出し。内容とズレている!
「タブーなき経済評論家が見抜いた人生で大切なだった一つのこと」
とあるが、特に一つに言及していない。
人生で大切なことを、網羅的に、お金に絡めて綴っている。
一つを深くではなく、広く浅く。
(人生で大切なたった一つのことって何だろう?って読み始めてしまいミスリードされた。)
ビジネス書を読む習慣がある私には目新しいことはなかった。
・健康診断を受けよう。
・がん保険不要、保険は必要最低限で。
・ものは持ちすぎない。
・お金は使いどきに使って価値がある。
・幸せは人間関係。
など。
私が知りたかったことは、
「投資でお金を貯めて貯めて、いざ使おうと思ったときに早すぎる死」このとき何を思うか?
その答えはなかった。
近い答えとしては、
サンクコストバイアス(過ぎ去った過去)に縛られず、常にこれからどうやって、幸せに過ごすかが大切
とのこと。
つまり、想定外は起こる、過去を悔やんでもしょうがない、じゃあこれからどうするかが大切、ということだろう。
頭では理解するが、実際に余命宣告されたときに、心はついていけるのか、と疑問。
心がついていけるかは、それまでの人生の過ごし方によると思う。
著者は早過ぎる死であるが、ある程度自己実現できたから、心もついていけたのではないかと。もちろん、本人の心の強さもあるだろうし、もっとやりたかったころも多いと思うが。世間一般と比べたら、好きな仕事で稼げて、お金も時間もあり、人間関係も良好、自分の人生の目的も見つけ実現できていたようだ。そして65歳。
私はどうか?相当悔いが残るだろう。
ある程度長生きすることを前提に、数年間はいろいろと犠牲にして、投資に注ぎ込んだ。
その甲斐あって、今40歳にして成果が出て、人生これから再出発。
今死んだら後悔が大きい、あと10年生きられれば後悔はないかな。
でもいつ死ぬかは分からない。
サンクコストバイアスに縛られず、これからどう幸せに過ごすか、日々向き合っていきたい。
その他全体的な内容については、今まで得た知識は、実際に余命宣告された人にとっても、やはりその通りということで、より確信が持てた。
また定期的に違った角度から復習できるのは良い。
知っていると身に付いているとは大きな差があるので。
人間ドックを受けよう。