【感想・ネタバレ】やさしい猫のレビュー

あらすじ

家族三人で暮らしたい、
ただそれだけの望みを叶えるのが
こんなに難しいなんて

シングルマザーの保育士ミユキさんが心ひかれたのは、八歳年下の自動車整備士クマさん。娘のマヤも面倒見のいいクマさんに懐いて、すったもんだはありつつも、穏やかな日々が続くはずだったのに……。

出会って、好きになって、ずっと一緒にいたいと願う。
そんな小さな幸せが突然奪われたのは、
クマさんがスリランカ出身の外国人だったから。

〈ハラハラしてます〉〈ラストがよかった〉〈知らないって恐ろしい〉
読売新聞連載中から反響続々
中島京子の長編小説最新刊

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

読み初めには想像もしなかった、圧巻の読みごたえ。
ドラマティックな物語展開。
知らなかったことを知り、知らなかったことを恥じる。
けれども少女の視点で語られる口調は、読者を決して拒むものではない。

小4のマヤはお母さんと二人暮らし。
ある時お母さんが連れてきた恋人のクマさんは、スリランカ人。
変わった料理を作ってくれたり、面白い話を聞かせてくれたりするクマさんを、マヤはすぐに好きになった。

お母さんが倒れて入院したとき、クマさんが泊まりに来てくれたから、マヤは一人の恐怖と戦わなくてすんだ。
いろんなことがあったけど、ようやく二人が結婚しようとしたとき、クマさんが逮捕された。

普通に就労ビザを持って日本で働いていても、会社が倒産したりして無職になれば、あっという間に不法滞在外国人になってしまう。
そうなると施設に収容されるか、されないにしてもかなり行動を制約されてしまう。
就職してはいけない、居住地している都道府県の外に出てはいけない、国民健康保険に加入ができない。
要するに「さっさと国におかえりください」ということだ。
日本で生まれた子どもでも、両親が不法滞在になってしまうと退去させられる。

クマさんを家族に取り戻すために、ミユキさんとマヤの長く苦しい戦いが始まる。

日本人同士なら、家族が家族でありたいことにこんなにつらい思いをしなくてもすむのに。
いったい何の罰を受けているのだろう。
3ヶ月ほどビザなしで滞在したために、一年以上も収容されて、体調が悪くても医者に診てもらうことすらできない生活。
おかしいじゃないか。

タイトルの「やさしい猫」とは、スリランカの民話。
エサを取りに出かけた父ねずみと母ねずみが帰ってこない。
子ねずみたちは通りかかった猫に泣きながら訴える。
猫は自分が食べたねずみの子どもだと気づき、自分の子どもと一緒に育てるという話。
強者が弱者の立場に気付いた瞬間の話ではないかと、マヤの友人ナオキは言う。

いろんな、胸が苦しくなるようなエピソードがたくさんある。
知らないことは罪だとは思わないけれど、知らないことは弱者が生きていくためには大変不利である。
目からうろこと涙をぼたぼたこぼしながら読んだ。

0
2025年11月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

キリスト教と社会という大学の講義で、難民問題について、在留ビザについて学んだ。学問として知ったことが現実で起きていると、肌で感じることが出来たのはこの本のおかげだ。

クマさんが受けてきた差別は、とてもリアルで、差別する側の人たちの気持ちも日本人としてよく分かるからこそ、私はやさしい猫、覚醒した猫にならなければならないと思う。
外国人を人とも思わない入館管理局の行いは、「追い出してやるぜ」というメンタリティに貫かれた行動は、裏返すと私たち日本人の、マジョリティの考えの現れとも言える。それを正しく理解するべきだと強く迫られる気分になる本だった。

0
2025年07月09日

「小説」ランキング