【感想・ネタバレ】吾妻鏡―鎌倉幕府「正史」の虚実のレビュー

あらすじ

電子版は本文中の写真をすべてカラー写真に差し替えて掲載。
鎌倉幕府草創から中期までの事績を記した『吾妻鏡』。源頼朝挙兵に至る経緯、二代将軍頼家の暗愚、三代執権北条泰時の武勇と仁徳ほか、小説やドラマが描く挿話の多くはこの史料に基づく。幕府の公式記録とも言われるが、史実の錯誤や改変も少なくない。本書では平家追討、奥州合戦、実朝暗殺、承久の乱など主要な合戦や争乱の叙述を、近年の研究も踏まえて検証。「正史」に潜む虚構を洗い出し、隠された意図を明らかにする。

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Posted by ブクログ

”はじめに”から抜粋
『吾妻鏡』を信じずべき「記録」の枠から解放し、事後の視点から振り返って歴史を叙述する一種の「物語」として読み直していきたい。

なるほど。

2代将軍頼家の悪王化は当然?として3代実朝も悪王化されているという指摘が興味深かった。
徳を失った源氏将軍から有徳の泰時~得宗家と言う流れ。

面白かった!
先日読んだ同じく中公新書「日ソ戦争」に続いて久々に読んだ新書2冊が大当たり!

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2024年09月24日

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歴史とは事実ではなく後世の人々による解釈と創造であることを教えてくれる。
鎌倉幕府の正史といえる「吾妻鏡」が北条氏を正当化するための虚構が含まれていることを指摘する良著。

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2024年10月12日

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虚実とあったので、興味を持って拝読。知らない研究の最先端結果も書いてあって勉強になった。
どちらかというと、これまでの先行研究をまとめてくれているという印象だが、素人には勉強になってちょうどよい。
関心持てたところは、原文なり先行研究を直接読んでもいいかなと思った。

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2024年08月31日

Posted by ブクログ

歴史とは、客観的事実ではない。もちろん、客観的事実としての過去がなかったわけではない。しかし、過去は叙述されて初めて歴史となる。そして、叙述にはその主体が必要である。叙述主体の現在から過去が振り返られ、事象が系列化され意味づけられることで、初めて立ち現る構築物。それが歴史である。

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2025年11月02日

Posted by ブクログ

同じ構造で似た内容の話が続くのは、吾妻鏡がそうだからとわかってはいるが、ちょっと満腹感に侵食はされる。けど、ちゃんとテーマは整理したうえでの解析なので、混乱はしない。起承転結的な構成も感じられて、飽きそうで飽きない。

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2025年09月15日

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著者は1983年生まれ。神戸大文学部•院を出て現在は灘高校•中の国語教諭。歴史家というよりも国語的な書物として吾妻鏡を見ている。面白い。
吾妻鏡は一見すると“史書”のような体裁をとっているが、あくまでも(誰かにとって)『正しい歴史』を描いた“物語”だ。本書はそのことを、膨大な先行研究を一つ一つ参照しながら一般向けに解説した新書本である。労作だ。読みでがある。

本書で一貫しているのは、「歴史とは過去の事実の羅列ではなく、事実同士が、あるいは虚構を交えつつ関係付けられ、一定の意味を与えられ、ストーリー性を付加されて初めて歴史になる」という認識に立っている事だ。私達は今、ウクライナで、そしてパレスチナで、どのように歴史が刻まれるのか注意深く見なければならない。

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2025年09月06日

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鎌倉幕府による正史・吾妻鏡について、歴史学の成果を元に記述の虚実を示すと共に、その成立過程や時代背景が分析される一冊。物語としての構成論や、一つの歴史観が形成される様相などが興味深かった。

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2024年12月09日

Posted by ブクログ

鎌倉幕府草創から中期までの事績を記し、従来、鎌倉時代史の根本史料とされるとともに鎌倉時代を描く小説やドラマの種本とされ、鎌倉幕府の「正史」とも言われる『吾妻鏡』について、頼朝挙兵、平家追討、奥州合戦、比企氏の乱、和田合戦、実朝暗殺、承久の乱、宝治合戦という合戦を中心としたトピックを取り上げ、歴史学の進展により明らかになってきた鎌倉時代の実像に照らし、その誤りや改変、曲筆を検証して、事後の視点から振り返って歴史を叙述する「物語」として読み直す。
非常に読みやすい構成で、教科書や大河ドラマなどで得ていた鎌倉時代の知識・イメージを刷新しつつ、振り返ることができた。
『吾妻鏡』は、鎌倉時代の正史的存在として、北条得宗家に都合のよいように編纂されたものとは思っていたが、このように北条得宗家の支配の正当性を歴史的に紐づけるために練られた「物語」となっているというのは、本書を読んで認識を新たにした。また、『吾妻鏡』が『平家物語』や『明月記』などの原史料をパッチワーク的に組み合わせて作られたものだといったことも初めて知り、興味深かった。
著者は、日本中世文学を専門とする国語科教師ということだが、本書は、歴史学の基本手法である史料批判の良い素材となっているとともに、人間が過去を語り直し、意味づけ、更新してゆく営みとしての「歴史」について考えさせられる良書だと感じた。史料批判に当たって、事実誤認や虚構を明らかにするだけでなく、何を語っていないかや、事実であってもどのような配列等で語っているかなどに着目することも大切だということを感じさせられた。また、歴史の持つ「物語性」を自覚することの重要性を再認識した。

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2024年12月07日

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鎌倉時代にはあまり興味がなかったのですが。この本で吾妻鏡は面白いと教えてもらいました。読みながら「賢者は歴史に学ぶ」が頭をよぎり、「歴史は勝者によって描かれる」ことを再認識しながら、「盛らない話はつまらない」と腑に落ちました。つまらない歴史ストーリーは語り継がれず残らない…敗者の歴史も残らない…偏った歴史から学ぶことになる…でも面白いからそれは良い。ただ、虚実あるフィクションだと頭の片隅に!

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2024年11月11日

Posted by ブクログ

「歴史とは過去の事実の羅列ではない。事実同士があるいは虚構を交えつつ関係づけられ、一定の意味を与えられ、ストーリー性を付与されて初めて歴史となる」

論争の絶えないテーマであるが、研究室の片隅で認定される事実だけが歴史であるなら、それにどれほどの意味があるのだろうとの疑問も拭えない。本書では非常に成功した歴史書である「吾妻鏡」が次々と起こる事件に付与したストーリーの意味とは何か、誰を顕彰し誰を貶めねばならなかったか、一つ一つの記述に切り込みながら解き明かされる。

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2024年11月06日

Posted by ブクログ

<目次>
序章   『吾妻鏡』とは何か
第1章  頼朝挙兵(1180年)~忠臣たちの物語と北条氏の優越
第2章  平家追討(1185年)~頼朝の版図拡大と利用される敗者たち
第3章  奥州合戦(1189年)~幕府体制の確立を語る軍記物語
第4章  比企氏の乱(1203年)~悪王頼家の退場と逆臣の排斥という虚構
第5章  和田合戦(1213年)~頼朝の政道を継ぐ実朝と北条泰時
第6章  実朝暗殺(1219年)~源氏将軍断絶と得宗家の繁栄を導く神意
第7章  承久の乱(1221年)~執権政治の起源と語る軍記物語
第8章  宝治合戦(1247年)~北条時頼による得宗専制の開始
終章   歴史像の構築

<内容>
著者が灘高の国語教諭というのが驚きだった。高校教諭でも(灘高でも)研究が進められるのだ、ということ。また『吾妻鏡』が歴史書ではあるが、軍記物語および歴史物語であるということ。北条氏に都合のいい本という認識はしていたが、虚構の積み重ねには驚いた。また1300年より前閉じられていることも知らなかった。確かに冷静に考えれば、作者たちが同時代史を語るのは怖い。事件などの当事者や関係者が多く生存していれば、書きにくいわけで、中国の正史も前王朝の滅亡後に書かれるのが当たり前なのだから、室町幕府が書くならわかるが、鎌倉幕府徳宗家北条氏関係者が書けば、幕府の終焉まで書くはずもなく、利害を意識するのも当たり前なわけだ。著者は、その徳宗家の物語として『吾妻鏡』を捉えてるのだ。

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2024年08月10日

Posted by ブクログ

吾妻鏡がどのような目的、意図で作成されたのかの解説本。歴史は勝者によって語られ、如何に今の系譜が正しいかを証明するもの、ということがよく分かった。ある程度、歴史の流れが分からないと誰?誰の子孫?となる。大河ドラマを見ていて良かった。

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2024年09月29日

Posted by ブクログ

鎌倉時代の正史と思っていたが、脚色だらけ。北条得宗家を正当化するための書物に過ぎない。
ということが分かった。

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2024年08月24日

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