あらすじ
なぜ日本企業はイノベーションを起こせないのか?
宗教を理解すれば、ビジネスがより深く考えられる。
経営理論から読み解けば、宗教がわかりやすくなる。
変化が激しい時代だからこそ、ビジネスパースンにとって
宗教を学ぶことが不可欠だ――。
博覧強記のジャーナリストと希代のの経営学者が初対談。
キリスト教やイスラム教から、トヨタやホンダ、イーロン・マスクまで。
人や組織を動かす原理に迫る。
・歴史上最も成功した「組織」はキリスト教とイスラム教
・企業研修は、ミサや礼拝を見習うべし
・「お金のためじゃない」から資本主義社会で成功する
・イスラム教が「ティール組織」を作れる理由
・米大統領選をも左右する、アメリカ社会の根底にある宗教思想とは?
ビジネスパースンの課題は、宗教と経営理論で解決できます!
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Posted by ブクログ
一言要約:幻想の共有は不完全だからこそ発展をする
宗教とは言わずもがな人間が生み出した精神世界の話で、フィジカルなものではなくいわば幻想であるが、逆説的に人類の生み出した全ての「価値」は始まりは全て脳内世界の幻想であるとも考える
この幻想が縦(複雑化)、横(対象事物)、時間(時代の流れ)に対して広がり、個体間を超えて他者と共有し、個体同士が共感をすることで単体では弱い人類が強力に支え合いある地域や社会、延いては(生物として)地球全土をある種征服したといえる
かつ、広がりを増すごとに個体ごとに異なる幻想が生まれだし、それがテーゼに対してアンチテーゼとなり、ぶつかり合うことで新たな幻想(ジンテーゼ)が生まれるアウフヘーベンが起き、社会、文化、人類そのものを発展させたのだろう(物事の進化発展は全てこの理であろう)
宗教はある種の「想像力」のなせる技で、ついにはアメリカという超大国を「創造」までした、人類の最大の武器なのだろうと帰結する
よって、著者らのいうように、宗教の理解とは組織経営を理解する上で多すぎる示唆を与えてくれた
Posted by ブクログ
宗教と経営理論の類似性(根底に人/組織、それらの行動がある等)に着目し、互いの領域の知見を対話形式で披露することで、各領域の理解を深めることを試みた一冊。経営学に慣れ親しんでいる身としては、両利きの経営等のコトバ自体は把握しているものの、宗教という視点を入れることにより、議論が広がり非常に面白かった。
例えば、経営が苦しい状況において、両利きの経営を実践する(ここでは知の探索を継続する)ためには、仕事に従事する各人が、「なぜ我々が知の探索を行うのか」をメイクセンスしている必要がある。但し、これは言うは易しであり、特に日本での成功事例はまだ多く積み重ねられていない状況。では、なぜ海外ではこの理論をサポートするような企業が多数生み出されているのか、それを理解する一つの観点が宗教である。つまり、企業→個人というレイヤーだけでなく、そもそも宗教→個人という関係性において、「なぜ汗水を流して働くのか」という理由が個人で腹落ちしており(例えば来世での救済)、故に特定の行動に至るということ。こう考えると、以下引用箇所(p.136)にも記載の通りだが、経営学研究においても、個人や組織に対し、このような複層的な作用が働いていることを念頭に置きつつ、議論を重ねることが肝要であるように感じる。もちろん、どこまでどの変数が作用しているのか、ということを完全に可視化することは困難であるが、宗教という観点を入れることにより、解釈に幅を持たせられることはできるはずであり、多様性のトレンドとも相まって今後盛り上がる可能性はある。
(弊社は現世救済型ではなく、来世救済型になるというのは笑い話としてメモ)
特に印象に残った箇所は以下
「「創造性は移動距離に比例する」。「知の探索」とは要するに人間の認知の幅を広げることで、いちばん手っ取り早い手段は、自分自身を遠くに移動させることなんです」(p.88)
「経営学も本来なら、こうした視点を導入しなくてはいけないと思うんですね。「なぜ経営者はこのような行動をとるのか」「なぜこのような組織が出来上がってくるのか」といった問題を検討するときに、知らず知らずにその人自身や、その人の家族、地域、あるいは国に埋め込まれている宗教の影響を考慮する必要がある。ウェーバーの議論は、経営学と非常に親和性が高いというか、ある意味、補完的なものであると感じます」(p.136)
「私には大学時代の指導教員から言われたフレーズで、すごく印象に残っているものがあって、いわく「完璧な論文は、いい論文じゃない」。世の中を揺るがすような論文は、ツッコミどころがけっこうあるんだと。だからこそ、「ここはおかしい」「自分ならこう解釈する」と議論が盛り上がる。いっさい反論や解釈の余地がない論文だと、それ以上の発展がないわけです」(p.171〜172)
「「両利きの経営」も、言ってみれば「矛盾を内包できると強い」ってことなんです。幅広く「探索」することと、ピンポイントで「深化」させることは完全に別のベクトルですが、これを両立できると強みになる」(p.246)