【感想・ネタバレ】人質の法廷のレビュー

あらすじ

法治国家の欺瞞を暴くリーガルサスペンス!

駆け出し弁護士・川村志鶴のもとへ、突如、当番弁護の要請が入った。荒川河川敷で起こった女子中学生連続死体遺棄事件――遺体には証拠隠滅のため漂白剤がまかれ、冷酷な犯人像が推測された。容疑者には被害者の中学校に侵入し、逮捕された過去があったが、断じて犯行には関与していないと志鶴に訴える。警察による自白強要が疑われた。

志鶴が刑事司法を志した背景には、高校時代の友人のバイク事故死がある。自動車運転過失致死と処理されたが、彼女は冤罪を疑っている。そんな過去を持つ志鶴は、依頼人の潔白を晴らすため奔走する。

そこに立ちはだかるのは起訴有罪率が99・9%という現実だった。逮捕イコール犯人という世間の目。「人質司法」とも称される長時間勾留で有利に捜査を進めようとする警察・検察。共同弁護を務める先輩すら有罪前提の弁護方針を説き始めるなか、孤立無援の志鶴は依頼人を救い出すことはできるのか――?

構想・取材期間8年に及ぶ超弩級リーガルサスペンス。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

ものすごい熱量を感じるし、丁寧に取材を重ねて書かれたであろうことが伝わる。
スッキリ勝利!みたいな結末でないことも、リアリティを感じた。
何より、夢中で読み進めてしまう面白さ。

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2025年10月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

600ページ、2段組の超長編。読み出したら止められない、まるで映画を見ているような感じがしてきて、ハラハラ、ドキドキ、文字通り、夢中になって読んだ。

駆け出し弁護士の志鶴が、女子中学生2人を殺害遺棄した罪で逮捕された、増山の弁護を引き受けたことで話が始まる。任意の聴取、脅されて、意に反した調書に署名してしまってからの逮捕、取り調べ、勾留、裁判‥。一連の流れがわかりやすく解説されつつ、一年目とは思えない、志鶴のエネルギッシュな弁護活動が展開されていく。
ソリの合わない先輩弁護士の田口、インターン先での恩師、都築弁護士と協力しながら、地道な調査を続け、なんと真犯人に繋がる情報もゲットする。公判では裁判官や検察官たちと、丁々発止のやり取りをこなす。無実だと確信していても、最初から全てを話さない増山には、粘り強く諭し励まし、増山の老いた母親のフォローも忘れない。いやいや、志鶴さん、頭が下がります、本当に。

強力な証拠であったDNA鑑定を突き崩すことに成功し、一つ、また一つと、増山が犯人ではないという証拠を築き上げ、ついには、被害者の母親をして「間違った人を罪に問わないでほしい」と言わしめる。志鶴を懐疑的な目で見ていた田口は、検察官の無理筋な提案に対して、感情を爆発させた渾身の「異議あり!」を繰り出す。そして志鶴の、一世一代ともいえる、魂を込めた最終弁論。胸が熱くなった‥泣きそうになった‥。

無罪判決が出ることを恐れた検察側は、増山の起訴を取り消すという、異例の判断をする。増山の不利な証拠を捏造して、再び起訴するのでは?と志鶴たちは推測する。しかし、増山の取り調べを担当した刑事が志鶴たちの事務所を訪れ、警察が真犯人の身元を特定したことを、秘密裏に教えてくる。この刑事は若手で、増山を犯人と信じて、先輩たちの過酷な取り調べを静観していたものの、公判を通じて考えが変わった模様。裁判長も、判決前の協議で、増山の犯人説を否定する。志鶴たちの弁護が、身を結んだと言える、嬉しい場面だ。

増山の事件をメインとして、志鶴はキャバ嬢の事件も担当する。ストーカー化した客に殺されそうになり、必死の反撃で相手の男は死んでしまう。正当防衛を否定され一審は懲役13年。調査を尽くして万全の用意で臨んだ控訴審では、執行猶予が付いたものの、懲役3年。無罪を信じていた志鶴は、無力感に苛まれる。この事件でも、増山の事件でもあった、被害者遺族参加制度。遺族が容疑者に直接質問することができる、貴重や機会だ。しかし、容疑者を犯人だと信じている遺族が慟哭する様子は、推定無罪の壁をやすやすと超えてしまう。諸刃の剣だと思った。
志鶴が弁護士を志すきっかけになった、高校時代の親友のオートバイの交通事故でも、親友が原因で起きた事故だとされる。民事でやっと、事故相手の白バイ警官が悪かったという判決が出て、志も読者も安堵するのだ。しかし、死者は帰って来ない。

この話では、実際にあった冤罪事件にも触れている。フィクションの世界で、増山やキャバ嬢の境遇に胸を掻きむしられる思いなのに、実際の事件での冤罪被害者たちの絶望感は察するに余りある。おそらく、今どきの世の中の人の多くは、「警察イコール正義」という概念が揺らいでいるのではと思う。不祥事多いし。こうして冤罪は作られていくのかと思うと、コワイし、マスコミの報道も一歩引いた目で見なくては、となる。

一つ、注文するなら、真犯人の逮捕、裁判、死刑判決まで書いて欲しかったなとは思う。胸糞悪いヤツなので、ザマミロ!と溜飲を下げたかった。
あと、もしこれから読む人がいるなら、女子中学生の殺害場面は気分が悪くなるかもしれないので、ご注意を。

作者、法学部で学んだ人か、元法曹界の人かと思ったら、普通に文学部だった。しかも、日本ファンタジーノベル大賞受賞。ジャンルが違いすぎてオドロキ。取材は大変だっただろう。参考文献の多さが、それを物語っている。

自信を持って人にお薦めできる、貴重な一冊である。

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2025年06月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

厚さに驚いたが読み始めてすぐに引き込まれた。読者には真犯人が明かされるので、実は冤罪じゃないかもと疑うことなく読み進められたのも良かった。自分が裁判員だとしてこの内容を冷静に考えることはできそうもないな。

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2025年01月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

すごい長かった。

物語というよりルポタージュ感があると言うか…。

弁護士会の作った被疑者ノートなどの冊子とかのあたりは説明的というか、多分実際に本当にこういうものがあって、8年かけて取材したことを、著者としては余すことなく伝えたくなったんだろうなぁって感じを受けた。

私はといえば、完全に娯楽小説のノリで読み始めたのでこの感じには正直面食らった。

この点は著者が描きたかったことと、読者たる私が物語に何を求めて本を手に取ったかと言う視点のすれ違いなので、よく調べもしないで読んだのが悪い。

そんな不幸な巡り合わせのために、600ページもあるのに物語としては、少々物足りなさを覚えてしまった。

…いや、確かに弁護士は探偵じゃないんだけどさぁ!
なんというかあまりにも現実的な解決に呆けてしまったというか。
法廷での弁論はほんとに見事でスカッとしたんだけど!でも!私は!
あのクズ野郎の真犯人が地獄に落ちるところを見たかったんだよおおお!(血涙)

そんな不満はさておき、ここで描かれてるのは恐ろしい話で、被疑者になったら志鶴ちゃんみたいなスーパー弁護士が駆けずり回ってなりふり構わないレベルで死ぬほど努力してくれない限り、マジで死刑になる可能性あるって…まともな精神では受け止め切れるものではない狂気の沙汰。

そんでもってそんな気の毒すぎる境遇におかれる増山君の好感度の低さがまたリアル。
なんというか…主人公のアンチテーゼというか賢いわけでもなく、誠実なわけでなく、かわいいわけでもなく、なんなら倫理的にちょい問題のある、序盤は助けてあげたい!って共感するのがかなり難しいキャラで読みながら思わず「物語の訴求力としてどうなん?」と思った。申し訳ない。
ただこここそ、おそらく作者が描きたかったであろう冤罪の恐ろしさ、どんな人間にもやってないことに対して罰せられるべきではないという原則や、誰もが持っている権利というものを読者にとっくりと理解させるのにうってつけの人材ではあるのかなと読み終えてから感じた。
読みたかった話ではないけど、最後まで読まないのは残念かもしれない。私は最後まで読んでよかったと思う。

で、我ながらちょろくて本当申し訳ないんですが、やっぱり私はエンタメを求めてたので、田口先生が段々事件に向き合って本気出してくれるところ、特に大声出すとこ、アツい展開で好きでしたよ!
(でも序盤の態度は本当酷かったからある意味ズルいキャラかも)
それを思うと、やっぱり、弁護士になったばかりなのに一貫した誠実さ、へこたれなさ、正道を貫く勁さをもった志鶴こそ、正真正銘主人公だと思う。

いや、ほんとスーパー弁護士だわー。こんな人マジでいるのかな。

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2025年01月25日

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