【感想・ネタバレ】企業変革のジレンマ 「構造的無能化」はなぜ起きるのかのレビュー

あらすじ

イノベーションが生まれない、事業変革ができない、利益率が低下し続けている──。
事業最適化がもたらす組織の断片化により、必要な変化が滞るという
企業変革のジレンマを、私たちはどうすれば克服できるだろうか。

デビュー作『他者と働く』で異例の大反響を呼んだ注目の経営学者が、
〈構造的無能化〉という独自のキーワードをもとに、
今、多くの企業が直面する複雑な問題のメカニズムを丁寧に解き明かし、
状況打開への道筋を示す、まったく新しい企業変革論。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

著者は宇田川元一氏。1977年生まれ、経営戦略論や組織論が専門で、現在は埼玉大学の准教授。同じく宇田川氏の「他者と働く」とても良かったので、こちらの本も読みました。

感想。いい本だ。私の現実に最適だ。


備忘録。
・それぞれの仕事の範囲で正しいことをしている人たちが集まることで、結果として、新しいことを生み出せないことが起こる。やがて企業は停滞する。

・組織の断片化、思考の幅と質が制約され、各部門が目先の課題解決を繰り返し、徐々に疲弊。合理的に分業していく先に、硬直化、組織劣化が。これを本書では「構造的無能化」と表現。

・問題の全容がはっきりとわからない、風土の問題や意識の問題と、整理されがち。

・変革とは、自分たちの課題を考え、試行錯誤を繰り返していく過程。

・三枝氏の「V字回復の経営」のような再生案件であれば明確な問題意識があり、変革のコンセンサスも構築されやすい。今多いのは、ある意味生活習慣病のような、いきなり外科手術を行えばかえって健康を損ねるようなやつ。

・新規事業が生まれないとか、エンゲージメントが低いとか、利益率が下がっているとか、これらは表層的な問題で、その背後にあある複雑な問題がある。

・本書で目指す企業変革とは次の4つのプロセスを遠隔に実践できるようになること。①全社戦略を考えられるようになる。②全社戦略へのコンセンサス形成(各役員が自分の役割を理解する)。③部門内での変革の推進。④全社戦略・変革施策が現場でアップデートされる。

・何が問題かよくわからない状態の組織は、流行のソリューションを次々と取り入れがち。それでは状況は改善されず、時間や、お金や組織が浪費される。

・変革が進まない理由。①多義性。多様な解釈が可能な状況。今後の自動車業界は、Aかもしれないし、Bかもしれないし、Cかもしれない、というイメージ。不確実性とは違い、不確実性は確率論的なもの。②複雑性。問題が複雑に絡み合っていること。解決策がわかりにくい。③自発性。施策を打ち出しても積極的に実行されない問題。

・過去の成功体験を紐解くのは、ぜひ実践してみたいアクション。組織がうまく機能していた状態を教えてくれる。

・戦略とは、困難な課題を解決するために設計された方針や行動の組み合わせ。(byリチャード・イメルト「戦略の要諦」)

・戦略と問題の不一致。戦略を立てる人と、問題に接している人の目線の違い、理解度の違い。これが戦略を明確に打ち出すことを躊躇させる。

・計数目標もそう。経営側は10%増収を打ち出しても、現場の現実感と乖離しているとか。

・まとめると。企業変革が進まないのは、組織の断片化を契機に、それぞれの努力がうまく統合されない問題がある。それを統合するには全社戦略を考え尽くし、自社の戦略へのコンセンサスを形成することが不可欠。会社組織はそもそもこの必要性に気づかない。この状況を打破するには、自社で起きていることを多角的に捉え直し、有能な打開策を講じ続けることが必要。より上位層でコンセンサスを形成していくこと。

0
2024年11月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

企業変革論の多くは明確な問題があることを前提とする。企業の抱える問題とは一致していない。徐々に悪化する慢性的疾患状況からの回復の手立てが必要。
長期的視点から見れば、既存の事業の継続だけでは衰退は明らかだが、新しいものが出てこない。

表面的な理解でそれを解決しようとすると回血液内。

構造的無能化のメカニズム
事業基盤を確立すると、効率を求めて分業化とルーティン化が進む=収益には貢献する。
その結果、組織が分断して、環境の認知の幅は狭くなる=変化の兆しを捉えても事業を再構築できない=不全化。
離職の増加、収益の低下など問題が起きる。
表面的な問題解決に終始する=表層化。

0
2024年10月25日

「ビジネス・経済」ランキング