あらすじ
パリに暮らすインテリアデザイナーのポールは、離婚歴のある39歳。美しいがもう若くないことを自覚している。恋人のロジェを愛しているけれど、移り気な彼との関係に孤独を感じていた。そして出会った美貌の青年、シモン。ポールの悲しげな雰囲気に一目惚れした彼は、14歳年上の彼女に一途な愛を捧げるが――。二人の男の間で揺れる大人の女の感情を繊細に描く、洒脱で哀切な恋愛小説の名品。
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
内容だけを見るとポールやロジェにうんざりして敬遠しそうなタイプの話なのに、サガンの繊細で美しい筆致がうっとりさせながら読ませてくるからすごい。
泣きながらも祝福されたかのように走り去っていくシモンと結局はロジェを選び、諦観と物憂さの日常に帰っていくポールのラストがもうなんとも言えず良かった。
ポールの主人、あるいは所有者としての顔をするロジェに反してシモンはそんな顔しなかった。そんなシモンに心打たれながらもポールは息をするように浮気をし続けるロジェを待つ日々を選ぶ。
ポールの放った「わたしもう歳なの」これがもう答えなんだろうな。
ポールはロジェと過ごした時間が長すぎた。美貌も歳も未来もまばゆいシモンとどうなるかわからない明日にワクワクするよりも不安のほうがずっと漂っていたから、長い時間を過ごした理解のある相手との停滞した日常を選ぶ未来は読みながらなんとなくわかってた。でもやっぱりそれが美しい。
はぁ〜〜〜堪能したわ。サガンの他の本も再販してくれないかな。いまものすごくサガンを読み耽りたい。
Posted by ブクログ
美しい。あまりにも緻密に、繊細に、恋が、恋の愚かさと美しさが、描かれている。
文体がとても好きだった。翻訳本でここまで文体を魅力的に感じたのは初めてだ。翻訳者さんが素晴らしいというのもあるのだろう。
ラストシーンといい、恋とはいかに滑稽なものか、という。
147 それでも彼女はシモンと暮らし、夜は彼の腕のなかで吐息を漏らし、時には自分から彼を抱きしめた。子供か、でなければ技巧に長けた愛人たちにしかできないような抱きしめ方で。所有欲にあふれながらも、所有というもののはかなさに怯えるあまり、その激しさに気づいていないような抱きしめ方で。