あらすじ
周りからは一人に見える。でも私のすぐ隣にいるのは別のわたし。不思議なことはなにもない。けれど姉妹は考える、隣のあなたは誰なのか? そして今これを考えているのは誰なのか――三島賞受賞作『植物少女』の衝撃再び。最も注目される作家が医師としての経験と驚異の想像力で人生の普遍を描く、世界が初めて出会う物語。
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Posted by ブクログ
とても変わったお話でした。
結合双生児という、ひとつの体に二つの人格を持った姉妹の物語です。
彼女らをみていると、意識というものはすべての臓器から独立していることがはっきりしますが、それは誰しも同じだというのが本書の主旨。
自分だけの体を持っている人はいない。
みんな気がついていないだけで、みんなくっついて、みんなこんがらがっている。
自分だけの体、自分だけの思考、自分だけの記憶、自分だけの感情、なんてものは実のところ誰にも存在しない。
いろんなものを共有しあっていて、独占できるものなどひとつもない。
こういう感覚について今まで考えたことがなかったのでとても不思議な心地がしました。
分人、とも少し違う・・・
理性では分かっていても本能に負ける、とか、飲酒した際や(人によっては)運転中に人が変わる、とか、そういうところに出ているのかなあ。
捉え方のニュアンスだけ理解したような、してないような。。
Posted by ブクログ
ひとつの体に存在する2人の「私とわたし」
自分に結合双生児に対する事前理解がなかったからこそ、読みながら様々なことを考えた。
2人が一つの体で共存するという結合双生児、中でも稀とされる、身体の中央に境界線のある、完全に一つの体の瞬と杏。体は一つでも、意識は二つ。二重人格とも違う。感覚も思考も共有。ふたごとも違う、1人でもない、その感覚を自分には理解はしきれなかった。
瞬と杏のような結合双生児は実在するのか、前例はあるのか、という疑問が浮かんだが、そんなのはどうでもいいことだと改めた。読みながら「意識ってなんだろう?」という2人の問いを、一緒になって考え始めた時点で、私たちも当事者なのだと思う。
理解しきれずも、自分のことのように理解したくなる、そんな不思議さのある作品。
語りの切り替わりが印象的だった。「瞬」の目線と「杏」の目線がコロコロと変わり、その変わり目に、これといった合図はなし。だからこそ、読者がその場にいるような感覚になる。まさに、その場で、瞬と杏に対峙しているような感覚。
読んでいる最中にも、「あぁ、今話しているのは杏ね。」となって、きっと2人と話している作中の人たちもこんな感覚なんだろう、と思う。と同時に、「きっとお父さんならすぐに判別できるんだろうなぁ」と寂しくもなった。
Posted by ブクログ
最初は普通の姉妹の物語だと思って読み進めていたのに、一人称が「私」と「わたし」で入り混じっていることに気づいた瞬間、一気に物語に引き込まれた。
著者が医者だと知っていたので、少し構えて読み始めたが、医学的な専門知識はほとんど登場せず、医学に明るくない私でもとても読みやすかった。
姉妹や兄弟で性格が違うのは当たり前のことで、例えば「頭は二つで胴体が一つ」の有名な結合双生児たちの例はすんなり受け入れられるのに、「頭からつま先まで一つの頭に一つの胴体を共有している」となると、なぜか途端に特別な設定のように感じてしまう。その自分の感覚が不思議だった。
でも、その違和感こそがこの物語のカギであり、姉妹の性格や思考の差異、周囲の反応を通して「意識とは何か」「肉体とは何か」「人間の本質とは何なのか」を深く考えさせられる、大きなポイントになっている。
ページ数も少ないためテンポよく読め、設定もテーマも明瞭でとても興味深い作品だった。