あらすじ
明の海賊と日本人の間に生まれた少年は海へ――。
「国性爺合戦(こくせいやかっせん)」のモデル・鄭成功を描く
闘いと冒険の物語。
鎖国時代の平戸。孤独な少年・福松を迎えに来た母は、
台湾を根城にする大海賊の頭だった――
明に渡った福松はやがて鄭成功となり、清と闘う道を選ぶ。
日本と中国の血を持つ男が台湾の民族的英雄に、
後に「国性爺合戦」主人公として江戸の人々を熱狂させる。
生きる場所を求め闘う魂を描く大スペクタクル長編!
解説=仲野徹
※この電子書籍は2021年6月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
1人の青年が海賊になり、更には民族的英雄になるまでの大スペクタクル。
国や立場によって個々の名前が変わるため覚えるのが大変だがとても面白い。
同じ学校で学んだ友達が違う道を選ぶように、同じ釜の飯を食った仲間と道を違えば殺し合うことになる時代に、自分の選んだ道を直向きに貫き通す情熱に感服した。
今当たり前に生きてる現代も、昔は主人公らのような人たちが死に物狂いで作り出した時代なんだ、そんな現代=人の世とは何かを考えさせられる。
主人公に反した部下の父の言葉だが、人それぞれが天下であり、天下=国を治めるという考えだから天下を摂っても国内に反乱思考のものが出るというのは現在にも通じると感じたが、治める側に立って考えてみると、個々に合わせてる余裕はないのだろうとも感じた。
Posted by ブクログ
あっぱれ、国姓爺!海風に乗っている心地を何度も味合わせてもらいました。
"アジアの大海賊時代"、国家交替期の空気感、中華の地の果てしない大きさ、国家というものの矮小さと遠大さ、ままならない世の中や人生、人間社会の歪み、そうした中でも寄り添い合い生きる者たちの温かさ、時代のうねり。これらがリズム良く、ダイナミックに描き出されています。
それにしても、海賊というのは気持ちの良い生き様だなぁ~(悪どい人たちがいたことも分かっているが、それはここでは脇に置いておく)。
川越宗一さん、初めて読みましたが、すっかりファンになりました。
Posted by ブクログ
川越宗一『海神の子』文春文庫。
以前読んだ『熱源』が非常に面白かったので期待は大きい。
本作も『熱源』のような熱量を感じる歴史小説であったが、面白さという点では『熱源』の方が一枚上であった。
本作は、後に台湾の英雄となり、江戸の人々を熱狂させた舞台『国姓爺合戦』の主人公のモデルとなった鄭成功の半生を描き出した歴史小説である。
中国の海賊と日本人の間に生まれ、弟と共に平戸に預けられていた福松のもとに母親の松が迎えに来る。松は台湾を根城にする大海賊の頭となっていたのだ。
福松は中国に渡り、鄭成功となると、割拠する海寇たちや東インド会社を下して力を付け、ついには大明国から城と将軍職を与えられるほどの人物になる。しかし、李自成の乱が起こって明は滅亡し、清軍が攻めてくる。鄭成功は、鄭家を守るため、自ら新帝を立てることで『天命』を我がものとしようとするのだが……
本体価格980円
★★★★