あらすじ
15歳のとき、俺はアキに出会った。191センチの巨体で、フィンランドの異形の俳優にそっくりなアキと俺は、急速に親しくなった。やがてアキは演劇を志し、大学を卒業した俺はテレビ業界に就職。親を亡くしても、仕事は過酷でも、若い俺たちは希望に満ち溢れていた。それなのに――。この夜は、本当に明けるのだろうか。苛烈すぎる時代に放り出された傷だらけの男二人、その友情と救済の物語。(対談・小泉今日子)
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Posted by ブクログ
青春時代を思い返すと楽しいもので溢れており、その後の未来はその時には誰も分からない。
少年がある少年に「アキ・マケライネンに似てる」という一言から、母親から虐待を受けて愛着障害を持って育った少年の人生を変えてしまう物語だと前編までは思っていた。
後半からは一変。楽しかった高校時代が終わり、社会人へと進んでいくが少年2人は違う道へ進み、それぞれの歩んできた人生を経て造られた性格や社会的環境などにより1人は鬱により仕事を失い、1人はやりたかった役者を辞め、バーでバイトをするも売春が絡んでいるような所であったり、家に置いてた給料は取られ、でも性格的に誰かに助けてと訴えることはできない。貧困の中生きる気力を失った2人の夜が明けた最後がとてもよかった。
誰かが手を差し述べて助けてくれたことがきっかけで、何もかも失った主人公が助かった。
Posted by ブクログ
日本の貧困に焦点を当てた本作、奨学金、虐待、母子父子家庭の辛さなどあらゆる問題が取り上げられていた。確かに最終的にアキも主人公も救われていたけれど、そこに至る2人の苦労の長さと救済の呆気なさが少し釣り合ってないように思えた。主人公が父親を亡くしたところから始まる苦労人生やアキの生きづらさは見ていて辛い気持ちになった。なので途中から終盤あたりまでかなりずっと暗い気持ちで読み進めていた。森という突如出てきた真っ直ぐで泥に沈まないキャラクターによって全体の闇が晴れていく様子は見ていてよかった。押見のあれは何ハラに当たるんだろう
Posted by ブクログ
作者の特徴として、社会問題や自分の主張したいことを物語に載せて少し遠回りしながら伝える、みたいなところがある気がするんだけど、それに対して僕の感受性が弱すぎて毎度拾えてない感じが否めない。
本作はアキ・マケライネンという無名俳優に憧れた深沢暁と若くして父を亡くした俺の視点で展開する。彼らは世の中的に言う「不幸」を背負いすぎていて中学生から大人になり、あるいは死ぬまでずっと暗い演出が続く。もちろん救いの手を差し伸べてくれる弁護士の中島さんや後輩の森など、同級生の遠峰など頼れる人は周りにいるが結局ずっと陰鬱な内容である。
Posted by ブクログ
手の届かない目標に届かない現実に慣れてしまうと盲目的にただ頑張るようになってしまう。辛いと感じている事を麻痺させてしまうと分からなくなってしまう。子供の頃からそれが自分にとっての当たり前だったら、その理不尽しか知らなくなってしまう。アキにとって示されたもう一人のアキは人生を変えたけど、自分の人生を自分のものとして生きられなかった気がする。自分自身の精神的な痛みもちゃんと自覚しないとと思った。