あらすじ
ヒトはウイルスと共に生きている。私たちのからだは一見きれいに見えても実はウイルスまみれだった!
免疫学者とウイルス学者がタッグを組んで生命科学最大のフロンティアを一望!
ウイルスはつねに悪者というわけではない。われわれの身の回りには病原性を持たないウイルスがいくらでもいる。われわれのからだの表面や気道や消化管の内腔には多くの細菌が存在して常在細菌叢を形成しているが、実はこれらの場所には多種多様なウイルスが同時に存在していて、常在ウイルス叢というものが存在する。
さらに、私たちの遺伝子の中には非常に多くのウイルス由来の配列が散在している。これに加えて、ウイルスそのものまでがゲノムの中に挿入されていることがあり、その一部はなんとヒトの遺伝子として働いていることがわかってきた。つまり、ウイルスは外界からの侵入者ではなくて、一部のものはわれわれの体内に棲みついて、われわれはそれを利用しているのである。われわれのからだという「母屋」がウイルスに「軒を貸した」状態になっていて、まさに「ウイルスはそこにいる」のだ。
●なぜ感染すると病気に?
●ミクロの世界で繰り広げられる 驚きの攻防戦とは?
●新型コロナウイルスは持続潜伏する可能性が
●巧妙な仕組みで体内に潜伏する肝炎ウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス
●子宮頸がんウイルス、麻疹ウイルス、エイズウイルス、EBウイルスなど、体内に潜伏する病原体
【本書の内容】
第1章 新型コロナウイルスでささやかれる持続感染の恐怖
第2章 ウイルスとは何か
第3章 ウイルスに感染すると、なぜ病気になるのか
第4章 ウイルスがからだに潜り込むカラクリ
第5章 厄介な潜伏ウイルスたち
第6章 病原性ウイルスvs.人類 ミクロの世界で繰り広げられる攻防戦
第7章 ヒトのゲノムに入り込んだウイルスたち
第8章 医学でウイルスを克服できるのか
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
■ウイルスの大きさは通常は0.1マイクロメートル以下で、多くはナノメートル単位であり、電子顕微鏡でないとその姿を確認できない。一方、細菌は通常、マイクロメートル単位で光学顕微鏡で見ることができる。
ウイルスは生命の最小単位とされる細胞を持たず、タンパク質の殻と核酸からなる粒子である。ミトコンドリア(エネルギー産生に関わる細胞内小器官)を持たないので、自分でエネルギーを作ることはできない。また、リボソーム(タンパク質合成に関わる細胞内小器官)を持たないので、自分でタンパク質を作ることもできない。
宿主細胞の中に入り込んで、宿主細胞のタンパク質合成機構、代謝機構やエネルギーを借用してはじめて増殖が可能になる。
教科書的には「ウイルスは細胞を持たず、自分でエネルギーを作れないだけでなく代謝もできない。したがってウイルスは生物ではない。」と書かれることが多い。
■インフルエンザウイルスや新型コロナウイルスでは、呼吸器系の上皮細胞に感染して細胞内でウイルスが増殖すると、細胞が急いで炎症性サイトカインを作り始める。炎症性サイトカインとは、炎症を起こすサイトカイン(=細胞同士が互いにシグナルをやり取りするときに使う一群のタンパク質)のことで体に敵が侵入してきた際の警報役として機能する。
Posted by ブクログ
ウィルスは病原体としてではなく体内にも遺伝子の中にも存在する。
コロナウィルスから老化の原因と考えられるウィルス由来の遺伝子までほとんど知っていた事柄をわかりやすくまとめて解説している。
中学生くらいまではヒトの体を合成できるのではないかと機械論的に想像していた。その後腸内細菌叢などの存在から無理な話だと理解していたが、細菌どころかウィルスまで関連しており生命の複雑さを改めて実感した。
ウィルスが進化して細菌になったのか、知りたいところだ。