【感想・ネタバレ】陰翳礼讃のレビュー

あらすじ

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ほの暗さの向こうに、美しい世界が見えてくる

建築や灯り、漆器や芸能などを題材に、暗がりに潜む日本の美の本質を捉えた谷崎潤一郎の名作『陰翳礼讃』。「日本の美」を考える上でのバイブルとも言える1冊が、作品にふさわしい美しい写真とともに楽しめる、ビジュアルブックとして蘇ります。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

自身の美意識に新しい見方が加わった一冊だった。この本を読んで学校の授業で豊臣秀吉の金の茶室のことを聞いた時のことを思い出した。当時は天井から柱まで全て金箔なんてむしろ下品だし、成金趣味も甚だしいとか思ったものである。しかし、当時は、今の様に全体を明るく照らすライトなんかではなく蝋燭のゆらゆらとした明かりが茶室の美しい明暗を作り出していたのだ。そう考えると確かに全体が金でも下品にならなかったのも頷ける。また、現代まで西洋の影響を受けず、道具が独自の発展を遂げていたらとの考えが面白かった。途中途中の写真に癒され、さくっと読めるのでとても良い。何度も読み返したくなる本。

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2026年06月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

日本のわびさびを言語化するとこういうことなのかなと。障子ごしの光、和紙のきめの繊細さ、黒光りする古い木材、蝋燭の火の揺らぎを写す漆器、薄暗い能の舞台と衣装で映える黄色人の肌、わずかな光さえ照り返す金屏風…とうとう羊羹の色にまで(!)美しさを見出して、うっとりするような言葉で表現していた。現代的な道具や急激な欧米化で、日本元来の生活様式が追いやられ、陰の美しさが失われることを嘆いているけど、作者自身も衛生面や利便性、費用面で葛藤があると書いていたので親しみやすかった(バチバチに「日本の古い生活様式しか許さん!」みたいな態度ではないので、現代の暮らしに慣れきっている自分たちが責められているような気持ちにならなくて良かった)
そして、この文章を裏付けるようにどの写真も素敵だった。

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2025年10月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 耽美派と言われ、背徳の世界を描いた作品群という印象が拭えない著者。本作も「陰翳」の文字に、どこか淫靡で秘めごとめいたイメージをこれまで持っていたが、実は、軽妙洒脱なエッセイではないか? と著者の意外な面を垣間見た気になった。

 明治生まれで、自分の生まれた年まで生きていたことを思うと、当時の男性にしては長寿だったろう。本書を記したころは50前後で、現代なら脂の乗り切ったところであろうが、
「早い話が、街頭の十字路を号令で横切るようになっては、もう老人は安心して町へ出ることが出来ない。」
 と、日本の高度経済成長、一足飛びの発展に戸惑う老人としての感慨も述べていたりもする。うん、エッセイだな。

 なにしろ、冒頭の方で、
「日本の建築の中で、一番風流に出来ているのは厠であるとも云えなくはない。」
 と、いきなり小学生のネタか? と思えるような場所から語りはじめるのだから、どこか可笑しい。

「やはりああ云う場所は、もやもやとした薄暗がりの光線で包んで、何処から清浄になり、何処から不浄になるとも、けじめを朦朧とぼかして置いた方がよい。」

 これなど、マジで語っているのか、面白おかしく書いているのか、どちらだろうと笑えてくる。

 ともかく、まずはPIE INTERNATIONさんの装丁、企画としての本書に賞賛を送っておかなければ。
 このシリーズ、大川裕弘氏による写真との組み合わせでいくつか出ていて、去年、たまたま軽井沢に立ち寄ったときに現地の書店で『茶の本』(岡倉天心著)を見て、いいなと思ったもの。
 それより先立ち、本書が出ていたが、勝手に恐れ多くて、手に取る順番が逆になったが、本書も、写真と共にキーフレーズが抜き出され、『茶の本』同様に、視覚的にも著者の意図を補完するような美しい写真と共に、非常に読み応えがある作りとなっている。

 『茶の本』同様に、東洋文明、日本古来のアートセンスを、文字通り“礼賛”する内容で、日本文化に改めて敬意を払いたくもなり、誇りを感じることができる好著だ。

 漆器や日本画の金箔のつかい方、その見方もさることながら、それらが置かれている日本家屋そのものの芸術性を高く評価しているところが白眉だろう。日本の美の全ての基礎は、建物からなるという論旨だ。

「寺院のみならず、宮殿でも、庶民の住宅でも、外から見て最も目立つものは、或る場合には茅葺きの大きな屋根と、その庇の下にただよう濃い闇である。」

「左様にわれわれが住居を営むには、何よりも屋根と云う傘を拡げて大地に一廓の日かげを落し、その薄暗い陰翳の中に家造りをする。」

「日本座敷の美は全く陰翳の濃淡に依って生れているので、それ以外に何もない。」

 こうして、漆器、建築のみならず、陶器や料理、能や歌舞伎といった芸能など、ありとあらゆるアートを語り、そこにある陰翳の意味を解いていくが、最後に記す一文が、自身の本分、文学に触れているところは、流石、『文章読本』を記した大作家だけのことはあると感心する。
 むしろ結論は、そこにあったか?! とさえ思えた。

「われわれが既に失いつつある陰翳の世界を、せめて文学の領域へも呼び返してみたい。文学という殿堂の櫓を深くし、壁を暗くし、見え過ぎるものを闇に押し込め、無用の室内装飾を剥ぎ取ってみたい。」

 お見事!

※本書の翌年に上梓した『文章読本』も、改めて当たってみようと思った。

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2026年07月24日

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