あらすじ
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ほの暗さの向こうに、美しい世界が見えてくる
建築や灯り、漆器や芸能などを題材に、暗がりに潜む日本の美の本質を捉えた谷崎潤一郎の名作『陰翳礼讃』。「日本の美」を考える上でのバイブルとも言える1冊が、作品にふさわしい美しい写真とともに楽しめる、ビジュアルブックとして蘇ります。
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Posted by ブクログ
日本のわびさびを言語化するとこういうことなのかなと。障子ごしの光、和紙のきめの繊細さ、黒光りする古い木材、蝋燭の火の揺らぎを写す漆器、薄暗い能の舞台と衣装で映える黄色人の肌、わずかな光さえ照り返す金屏風…とうとう羊羹の色にまで(!)美しさを見出して、うっとりするような言葉で表現していた。現代的な道具や急激な欧米化で、日本元来の生活様式が追いやられ、陰の美しさが失われることを嘆いているけど、作者自身も衛生面や利便性、費用面で葛藤があると書いていたので親しみやすかった(バチバチに「日本の古い生活様式しか許さん!」みたいな態度ではないので、現代の暮らしに慣れきっている自分たちが責められているような気持ちにならなくて良かった)
そして、この文章を裏付けるようにどの写真も素敵だった。
Posted by ブクログ
大学生の時にロシアに10日ほど行ったことがあるんだけど、現地のロシア人学生に「とても興味深かったわ」と言われた思い出がある。当時はあまり読書に熱心でなく谷崎潤一郎も知らなかったので「へ、へえ~そうなんだ(愛想笑い)」としか返せなかった。ハチャメチャに悔やまれる。日本人がいかに闇の中で美を見いだして来たか。具体的な例をあげながら書かれているんだけど、ずっと納得しかなかった。なぜ畳の上に座っていると心安らぐのか。なぜタイル張りのトイレがちょっと落ち着かないのか。心のどこかで感じ取っていた美的感覚を全部言語化してくれていてとてもスッキリする。特に衝撃だったのが、私は今まで金の屏風や金閣や大阪城を見ながら「金ぴかってちょっとケバケバしくて下品だなあ」という印象しかなかったんだけど(好きな人ごめんなさい)、それを「暗いところで見る」という視点。そういえば今は照度調整された美術館の中や夜でもライトアップされた外で見ることがほとんどだから、その視点は考えたことがなかった。暗闇で浮かび上がる屏風の金色は明かりが少なかった当時リフレクターの役割を持っていたかもしれないという説。闇と同化させ、全部を見せないというまさに“引き算の美”。とっても見てみたい。現代ではどこで見れるのだろうか。