あらすじ
ローマ史研究の第一人者が、古代地中海文明の全史を描く全8巻シリーズ、好評第4巻。講談社選書メチエ創刊30周年特別企画。
第4巻のテーマは、「ヘレニズム」。ギリシアの北方、マケドニアの王アレクサンドロスの東方遠征によってギリシア文化とオリエント文化が融合し、あらたな文明世界が創出される。著者・本村氏によれば、地中海世界4000年の歴史の中で「見過ごされがちだった重要な時代」であり、だからこそ、このシリーズの中で特に1冊を設けたかったという。
紀元前334年に東方遠征を開始したアレクサンドロスは、10年足らずのうちにペルシア帝国を滅ぼし、インダス川に達する大帝国を築く。このあらたな世界では、オリエント文化のギリシア化と同時に、ギリシア文化のオリエント化が起こり、そこに生まれた普遍的な文化は「ヘレニズム文明」と呼ぶべきものだった。ギリシア語が共通語として用いられ、それまで様々な言語によっていたオリエントの学問や思想がギリシア語で表現されるようになる。
また、ヘレニズムは、空前絶後の「宗教融合(シンクレティズム)」の時代であり、ギリシアやエジプトの神々が地中海世界の各地で信奉された。人類最初のグローバル化の時代に、「個人の救済」という契約を神に求める心性が現れ始めるのである。
目次
はじめに
第一章 声なき「高地の民」
1 マケドニアの軍事ルネサンス
2 デモステネスとアリストテレス
3 侵略か、防衛戦争か
4 ギリシア世界の覇者、フィリポス二世
第二章 希望の大王、東へ征く
1 アレクサンドロス伝説と「英雄の資質」
2 帝国ペルシアへの侵攻
3 テュロスからペルセポリスへ
4 世界の果てをめざして
第三章 後継者たちの戦いと均衡
1 帝国の中核――アンティゴノス朝マケドニア
2 ギリシア、インドに接す――セレウコス朝
3 エジプトの外来政権――プトレマイオス朝
4 ヘレニズム諸国の経済と都市
第四章 共通語は新しい神を生む
1 ローマの台頭とヘレニズム文明
2 思想と人間観の変容
3 救済者として現れる神
おわりに
参考文献
索引
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Posted by ブクログ
ギリシア北方「声なき高地の民」マケドニア。フィリッポス2世がギリシアの覇者になり、その子アレクサンドロスが東征を開始する。そこで生まれた学芸と思想。人類最初のグローバル化。宗教融合。
この辺りの歴史は好き。フィリッポスのギリシア制覇からアレクサンドロス東征、後継者戦争と流れが分かりすくて良い。
Posted by ブクログ
地中海生家の歴史4
・「若き英雄 アレクサンダー大王の一生」河津千代を小学校6年生の頃何度も読み返したのを思い出した。アレクサンドロスの遠征譚は戦闘の奇術も少なく平板。
・アレクサンドロスの遠征によりヘレニズム文明が誕生。
共通語コイネー、ムセイオン、建築・彫刻様式、自然科学
神々との関係においては、エピクロス派は人間界は神界と隔絶しているから人間界のことを思索するうえでは神々は無関係、ストア派は神々の力は人間と自然のあらゆるところに及ぶ故にロゴスにより生きるべき。
・共同体から離れたデラシネとなったコスモポリタンが求めた心性は、共同体の救済ではなく個人の救済であり、ディオニュソス信仰の狂騒と酩酊を通じた救済、宗教融合により生まれた救済を約束する密儀宗教(ミトラ教、イシス女神信仰など)。