あらすじ
ヒトラーの護衛に過ぎなかった親衛隊は、ナチ政権発足後、党や全国の警察組織を掌握。強制収容所を創り敵対勢力を弾圧する。第2次世界大戦開始後は行動部隊、アウシュヴィッツなどの絶滅収容所を起動しユダヤ人の大量殺戮を主導、80万人の巨大な軍事組織・武装親衛隊も併せ持った。本書は、ヒトラーに最も忠実な「エリート」たちの選抜から、ホロコーストの実行、カルト的信仰、戦後の姿までその全貌を描く。解題・芝健介
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
本書はバスティアン・ハインの著作を原著とする、優れたナチ・ドイツ,シュッツシュタッフェル(親衛隊)及びその武装組織武装親衛隊(ヴァッフェン・シュッツシュタッフェル)の成り立ちと犯した罪と戦後のこれらの扱いについての優れた,今年2024年3月25日中公新書2795,として刊行された日本語のものでは親衛隊や武装親衛隊に関する最新刊の部類の概説書である。
ヒトラー衝撃隊(Stroß truppe Hitler)というのは初めて知った。親衛隊の更に核として最も信用できる、自身の護衛隊としてヒトラーが望んで選りすぐったごく少数の組織だという。いわゆるミュンヘン一揆の失敗後裁かれたこの「ヒトラー衝撃隊」は本書によれば37名とされている。(更なる詳しい感想は後日)
Posted by ブクログ
「金髪碧眼長身イケメンでいけすかないエリート、戦時下に銃後でユダヤ人はじめ気に入らないヤツをイビり、前線から命からがら生きて帰った国防軍兵士を督戦の名の下に撃ちまくる」ステレオタイプなSSのイメージ持ってたけど、果たしてそれがどうなのか気になって読んでみた。
ヒムラーって初めはゲッベルスの部下やったんや。何となくヒトラーの下でゲーリングがアタマ一つ抜けながらもゲッベルス、ヒムラー、ヘス、リッペンドロップ、シュペーア、もう一つ下からハイドリヒあたりが寵愛を競ってたら上手く取り入ったのがポルマンかと思ってた。
Posted by ブクログ
ナチ親衛隊(SS)についていくつかのテーマを持って歴史的に概説した本。少し人名が多すぎて分かりずらいが、もともとはドイツで出ている本のようなので、多分、単に日本人にはあまり馴染みがないだけなのかも知れない。もっとも興味を引いたのが、最終章の戦後に親衛隊がどう扱われたかと言う部分。最近まで(正確には今でも)元親衛隊員が追及され裁判にかけられているとは知らなかった。確かに、戦争時における犯行(蛮行)というのは、果たして機能(歯車)としての兵士の受動的なものなのか、それとも個人としての能動的なものなのかと言うのは測りがたい。ドイツが全体主義的になった時代に親衛隊にだけ全責任を負わせて、他の国民は犠牲者だという考え方(「国民のアリバイ」というらしい)には違和感があるが、全国民に罪を被せるのも現実的には難しいだろうとは思う。これは日本にも当てはまるのだろう。
Posted by ブクログ
突撃隊の影に隠れ目立たなかった親衛隊が突撃隊の粛清とともに歴史の表舞台に出てくる。誕生当時から暴力性がかなり高かったらしいが、絶滅作戦から一気にギアが上がり、犠牲者数の感覚が麻痺してくる。戦後の裁判で判決が出ている通りの絶対悪であるが、悪名の高さが故にドイツ国民の戦争責任までも押し付けられている。この象徴的な一組織に責任を押し付けるのは、軍部と一部の政治家に戦争責任を丸投げした日本国民と共通するものがあるだろうと感じる。
Posted by ブクログ
SSの前身組織からドイツの降伏、さらに戦後の裁判や評価などについて、コンパクトにまとめている。入門書ではあるが、最新の研究動向もしっかりと包括しているようで、読み応えもある。
全体主義、ホロコーストへの関心から関連する本をある程度読んではいるものの、自分のSSへのイメージはかなりステレオタイプだったと思う。
例えば、暴力的な突撃隊に対して、エリート的なSSというのは、この本によると有意な差はない。ヒットラーの親衛隊ということで、ナチズム的な人種主義思想の体現者たちということがポイントかな?ということで、SSへの採用にあたっては、北方系アーリア人的であることが特に重視されたようだ。だが、戦争の進行に伴って、占領地下の「ユダヤ人問題」を解決するため、戦況の悪化に伴い多くの動員、リクルートする必要が生じて、だんだんその要件は緩んでいったようだ。
SSの主要なメンバーの名前がたくさん出てくるが、ほとんどは知らない人々。つまり、戦争中に亡くなったり、影響が低下したりしているので、ユダヤ人問題の最終解決を中心に本を読んでいるとあまり出てこない人がたくさんいたということか。
そして、ヒムラーをはじめ主要なSS幹部は、敗戦時に自殺しているため、結局のところ、何が全体で起きていたのかは藪の中的な状態になる。
そうしたよくわからない中での戦後の裁判やさまざまな研究の紹介の部分がとても有意義だった。
この本の記述を読んでいくと、必ずしもヒトラーが明確な指示しているわけではなく、幹部が指示を解釈して、冷酷な暴力を指示し、それを受けて下部メンバーが組織への忠実さを示すことを競争するかのように過激化していく、というグループ・ダイナミクスが生じているように思った。
戦後、ホロコーストの責任を親衛隊におしつけて、あるいは究極ヒトラー一人におしつけて、ドイツのほとんどの人はやむなかったという安全圏に引きこもり、経済的な復興に邁進したということか。
冷戦という時代もあり、元親衛隊の社会復帰も比較的スムースに進み、人によっては、戦後にも社会的に高い地位、経済的にも成功した人も多かったようだ。
こうしたことはどのようにナチズムを意味づけるかということであるとともに、私たちがそこから何を学ぶか、日本における「戦犯」についてどう考えるのか、倫理的な問いがあると思う。
Posted by ブクログ
戦争に優しい戦争・酷い戦争の区別があるのだろうか?戦闘員ならミサイルで粉々に吹っ飛ばしても良く、民間人は丁重に殺すのか?秩序ある戦争遂行など歴史上あったのか?程度の差はあれど惨たらしいものではないか?惨殺・掠奪・強姦などいつの時代でも何処にでもある。第二次世界大戦後のドイツ・日本が裁かれた軍事裁判は戦争という悪の中で行われた悪を裁くという一種の茶番だったと思う。
本書で問われているのはSSによる『ドイツ人の敵』ユダヤ人に対する苛烈な対処である。歴史的・宗教的・経済的に様々な要因でヨーロッパには反ユダヤ主義が古くからあるが、絶滅を図るほどの憎悪はどこから来るのだろう。しかもユダヤ人は戦闘の相手ですらなかった。
ミルグラム実験で明らかになった、権威者への盲従の最悪の事例だが、だからこそ全体主義は危険なのであり、民主的な政治指導者が次善の策だとしても必要なのだ。
Posted by ブクログ
侵略戦争と並行して行われた民族浄化とホロコースト。
その組織形態と実態の概説書として、割と簡潔にまとまっていると思う。
戦争による領土拡大についてはヒトラーの意思が反映されていたのは間違いないが、対ユダヤ人に対する一連の行為についてはどこまで把握していたのだろうかという疑問が湧いてくる。
アーレントのいう「運動」が慣性力を得て、無限に展開したという印象をもっている。
詳細にわたる全てがヒトラーの指示なのか。ヒムラーの独断で動いていた部分はないのか。SS隊そのものが、最終的解決という方針に向かって組織的に暴走したのか。この辺りを今後テーマとして個人的に深めていきたい。
Posted by ブクログ
『アンネの日記』や『夜と霧』は読んたことかあった。しかし、ナチス親衛隊そのものについて詳しくは知らない。
そこでナチス親衛隊の続きについてまとめられている本書を手にした。
ヒトラーの護衛チームでしかなかった親衛隊。ナチ党が政権を取ると第三帝国の警察機関を併呑。悪名高いゲシュタポやアインザックグルッペン、強制収容所を運用し、敵勢力を弾圧する。
第三帝国の勃興から終焉までは親衛隊の歴史と言っても過言ではないかもしれない。
本書は、ヨーロッパの人名や地名などの固有名詞がよくでてくるため、日本人の我々には読み進みるのが少し大変かもしれない。しか親衛隊の概要、歴史を知るのにはとても良い一冊であるといえる。
Posted by ブクログ
ホロコーストを主導したナチ親衛隊(SS)の歴史と犯罪を伝説的な伝聞を排除して再検証した良書
とにかく名前がたくさん出てきます
それだけ多くの人間が主体的な役割を担っていたってことなんだろうね
特に一般の親衛隊員をどこまで罪に問うかってところも非常に難しいんだけど、そこに自らの意思がどの程度あったかって最終的には本人しかわからんもんな〜って思ったり(強制されて断ると自分の生命が危なかったという主張)
かと言って全員厳罰に処す!ってなるとやってること同じになってきそうな危険もはらんでてマジムズい
とは言えこのようにきちんと検証し続けるってのは大事だと思うんよ
そして警鐘を鳴らし続けるんが大事なんよ
だってさ、この人類史上最大の悪行を肯定してる人たちも存在していてさ
恐いったらありゃしないよ
とにかく鳴らそう!警鐘を!
みんなで鳴らしまくろう!警鐘を!
カランコロンカランって昔の喫茶店か!
めっきり少なくなった純喫茶か!( ゚д゚ )クワッ!!