あらすじ
2123年10月1日、九州の山奥の小さな家に1人住む、おしゃべりが大好きな「わたし」は、これまでの人生と家族について振り返るため、自己流で家族史を書き始める。それは約100年前、身体が永遠に老化しなくなる手術を受けるときに提案されたことだった
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Posted by ブクログ
ひらがなだらけだったり幼い子供が書いたような独特な文体で序盤は読むのに苦戦しました。
しかしその文体から主人公が満足に義務教育を満足に受けられていなかったり、父親からの性、身体、精神などありとあらゆる虐待を受けて本人が子どものまま成長したことなどの劣悪な環境が伺えてとても辛かったです。
また、家族史なのに父親からの虐待の話はほぼ出てこないところに主人公は消えないけど忘れたい、記録したくない記憶なのだと言うことが鮮明に伝わってきて胸が痛みました。
また、そう言った過去から自分自身に対してどこか投げやりで無関心なところがあったり、自分の感情に対して鈍感な部分があり、それを終盤になるまで主人公は機械化した影響と考えていますが、誰も助けてくれない虐待から自分の心を守る為にはそうするしかなかったのだと思います。サラッと重大なことを書いたりしているのも重大だけどそう思わないことで自分を守っているのだと思います。
そうして色々な辛い過去を書いたり話して自分を見つめた主人公が最後のトムラさんとの会話で「じぶんをゆるさないことでしか、ほんとうのいみで、じぶんをゆるせないんです。」と言ったところで胸を打たれました。
死にたいと思うほど辛い記憶を消せると知っているのにそれをしないことが自分への罰で、それを抱えることで自分を許しているんだと思います。
そして最後の「いつかうんよく、またどこかでだれかとあったら、そのときはともだちになりたいな、たぶんともだちがいちばんいいな、かぞくよりもこいびとよりも、たいせつにできるとおもう。」に辛い虐待をしてきた父親。それを気持ち悪いと見捨てる兄妹。そして人生を奪ってしまった恋人の甥。その全員と死別した上で辿り着いた答えに泣きました。
その後の「でもまずは、わたしはわたしと、ちゃんとともだちになるところから。」に自分を見つめた結果自分のことを大切にしてこなかったことに気づいた主人公の成長にさらに泣きました。
そうして自分と向き合い、新しい人生の第一歩を踏み出したところでこの作品のタイトル、「ここはすべての夜明けまえ」の回収はエモすぎました。
某漫画の登場人物がベタ褒めしていて気になったので読みましたがここまで傑作だとは思いませんでした。
SF要素はほぼ皆無なので少し物足りない気もしますが、その素朴さを含めてこの本は完成されていると思います。
今後の人生で自分を見つめ直したい出来事に出会う度に何回でもこの本を開くと思います。
Posted by ブクログ
現代の人間が考えられる、ギリギリ無くはなさそうなSFで、いちばんリアルで、いちばん惨いお話。最初はそんな印象だった。
お父さんは割と最初の方から気持ちの悪い優しさがあって、そこから徐々に現実を確定させていく語りだったけど、シンちゃんの聖人君子さは浮気発覚!ってとこで結構急にひん曲がって面白かった。で、そのまま衝撃の事実!って驚かせで展開が進むんじゃなくて、性的虐待を受けたことによる反動かつ融合手術を受けたことによる効果、全て含めて『新ちゃんを恋人として愛していなかった』というある種冷めた結論のその理路整然とした感じが個人的にはなんかスっと飲み込めてよかった。
なんだろうね。人って、確かに忘れて生きていくことがいちばん合理的なのに、どうしてもあの時の後悔を何度も反芻して、どうしようもないことを何度も繰り返しとい続けて、見つかりもしない答えを見つけようとするのかな。そう思って読んでたら、最後に語られてて、このお話はふわふわしていて取り留めがないのにちゃんと答えに着地するってその感じがいいんだな、って思った。
忘れて生きていくことは幸せなことだ。間違いない。でもそうしたら、私は私をゆるせない。だから人は、忘れないことを選ぶ。そう、そうだなぁ。たしかに。
「今回、死ぬかもしれないのはわたしの記憶みたいです」。このとき考えさせて欲しいと言ったことが、彼女が人間であることの表れでもある気がした。きっと私たちは、体が生身の肉じゃなくなってもちょっと許せる。でも、記憶や自我がなくなることは、なんだか全ての喪失に思える。そう考えると、記憶はその人そのものであるのかも?
人生で何か一つ、間違ってないと思えることがしたい。この時の間違っていないは、倫理的にとか道徳的にとかそういう話じゃないんだよね。「自分がそうしたくてそうした」「誰がなんと言おうと自分の意思でそうした」そうして行われたことは、その人の人生にとって、間違いであるはずがない。正解、と言うにはあまりに曖昧模糊としているけど、脊髄みたいに1本揺るがないものが伸びているそんなものの気がする。
トムラさん、個人的になんか好きだった。恋人の話あたりからけっこうノリノリに聴いてくれてて良かった。最後のお別れの時もさ、トムラさんに血が通っていてやっぱ良かった。
だってさ、自分とは違う意見を聞いて、けどそれに対して「いいえそれは違いますよ」と正論を繰り返すのではなく、「なるほどな」「いやよくわからんけど」「そっか」「そうなんだね」で返ってくるものほど嬉しいものはないからね。あーあ私もこうでありたいな。そう思うと、トムラさんはちょっと私の理想に近いのかもって今何となく思った。
Posted by ブクログ
あまりにもつらい人生(?)を生きてきた主人公。最後に脳の記録からつらい人生を消去するか記録を改ざんしたほうが、幸せになれるがどうするかと問われたときに、出した彼女の答えがものすごく考えさせられたし、そのページをめくる手が止まらなかった!
「過去と向き合うことと見つめることは違う」「過去を見つめながら、自分のために自分の人生を生きていく」非常に哲学的でどこまでも人間的な考えだった。忘れたほうが幸せ、だからすべてを消去すべきという超合理的な正論に対して、それは正論かもしれないけど、自分にとって納得解ではない、自分の人生に自由と責任をもつため、どんな辛すぎる過去も引っくるめて最期まで生きていく。そんな主人公の意志と覚悟に胸が熱くなった!
Posted by ブクログ
歪んでしまったもの、壊れてしまったものはやり直せないけど、わたしを救えるのはわたししかいないと思えたことで最後の最後に呪いがひとつ解けた気がして涙が止まらなくなった。
血とか恋愛感情からうまれる繋がりじゃなくて、彼女はずっと対等で大切にできる友だちがほしかったのかな。
なぜだかずっと宝石の国のことを思い出しながら読んでた。
Posted by ブクログ
老いず忘れない身体になった「わたし」が家族史を綴りつつ、今までの人生を振り返るお話。
家族史や「わたし」視点の部分で仮名が多いところは、体だけでなく心の時間も止まってしまっているような表現に感じられて、読み返すときに1度目とは違った意味合いを感じました。
家族以外のトムラさんと、出会い話すことで、自分自身と向き合い整理ができたのかなと思います。
最後、重いものを背負いつつもしっかりと前を向いて歩き出そうとする彼女が素敵だと思いました。
Posted by ブクログ
ひらがなばかりの文章で名前も見た目もわからない主人公の姿を想像するのが面白い。今よりも技術が進んだ未来だけど、誰も幸せそうではなくて感情がある今の方が、苦しみも多いけど幸せも感じられそうだ。
匿名
人間が目指す理想とは
色々なことを考えさせられる近未来のストーリー。
主人公は酷い対応を受けた家族を恨むでもなく、むしろ淡々と生きている。逆に計算された理想的な世界で生きている親切な人達の対応に違和感を抱く。それは現代社会にも通じるようなぞわっとする恐怖感。私達はどこに向かえばいいのか、何が善なのか考えさせられた作品。
Posted by ブクログ
主人公が書いたカジュアルな家族史。
主人公は
父の価値観
家族という単位
融合手術という制度
周囲との関係性
が常に前提としてある。
どんな人もなにかしらそういった関係性の中でしか存在できないけど、その関係性を引き受けたうえでどう選ぶかを問うお話だったと思う
アルジャノーンに花束を を思い出させるくらいのひらがな長文はかなり疲れた
Posted by ブクログ
家族の業は繰り返されるという点が印象に残りました。奇しくも最近自分が娘を持つ親となったので、彼女とのコミュニケーションにきちんと向き合わないといけないのだな、と思いました。
Posted by ブクログ
自分の幸せを振り返る日記みたいな本だった。
前半は、主人公が漢字を習っていないので平仮名がほとんど。読みにくいったらありゃしない。簡単な漢字と平仮名が組み合わさっている、芸が細かい...。
融合手術により、ほぼ機会と化した主人公。高度に技術が発達した社会。
最大幸福化できる行動をAIが提示、記憶を改竄し自分の都合のいいように(自分が幸せと思えるように)することが可能になった社会。
何か温度のあるものが抜け落ちている、そんな状況で、自分だったらどんな選択をするか、そればかり考えていた。