あらすじ
ダンボール箱を頭からすっぽりとかぶり、都市を彷徨する箱男は、覗き窓から何を見つめるのだろう。一切の帰属を捨て去り、存在証明を放棄することで彼が求め、そして得たものは? 贋箱男との錯綜した関係、看護婦との絶望的な愛。輝かしいイメージの連鎖と目まぐるしく転換する場面(シーン)。読者を幻惑する幾つものトリックを仕掛けながら記述されてゆく、実験的精神溢れる書下ろし長編。(解説・平岡篤頼)
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Posted by ブクログ
主人公って、常に目撃される側なわけですよね。そして常にその「視線」によって何者かであることを強制されている。その重圧に耐えて生きているんだと思うんです。
この小説は読んでいて、見る見られるとはどういうことかを常に考えさせられました。箱男たちはなんとなく自らが主人公になることを拒んでいるような気がしました。主人公としての重圧、自分の人生を生きる重圧、それって私たちも日頃から少なからず感じているもので、箱男はそこから逃れて、「見る側」であることを選んでいるような気がします。
「見る側」って読者である我々もそうですよね。私達は本という箱に入ることで、見られることから逃れている時、ある種の安堵感を得ています。でも、作者も同じ「見る側」なのかなと思いました。作者も結局は、自分で編み出した物語を見続けているイチ目撃者に過ぎなくて、時に登場人物たちは作者が動かしているのか、はたまた人物自ら動いているのか、分からなくなるんじゃないでしょうか。そう考えると、見る側にもそういった別の苦悩があって、見る見られるの関係は常に循環し続けているのかなと思います。
自分を認識しているのは「私」でしょうか?それとも「あなた」でしょうか?自分とはそういう相互的な作用によって生み出されたものなのかもしれないですね。
イチ箱男の長い感想でした。
Posted by ブクログ
いつか安部公房を読み解ける日がくるのだろうか……と思いながら読み続けます。
いくつくもの散文や回りくどい場面展開や、一見何の意味もない差し込みが多重に重なって……
だけど、結局、自分は一歩も動いていない、箱の中の落書きに過ぎない(?)だとか、どういう頭の構造したら書き抜けるんでしょうか。
主人公と一緒に思考の迷路に陥りそうです!
覗きみることの露悪性は、映画や他小説でも見受けられるテーマですが、抽象が過ぎるぜ!
Posted by ブクログ
情報を整理しながら読んでいったはずだけれど、理解するのが難しい小説だった。登場人物はごく少ないのにも関わらず、なぜこんなにも入り組んで話の展開が読めないのだ。怒涛の展開に頭が追いつかない。
読み始めてしばらくすると、映像化は無理じゃないかという思いでいっぱいになった。言葉によるこの絶妙な可笑しみをどう映像で表現するのかと。
でも読み進めてちょうど半分を超えたあたりで、それどころじゃないと気付かされた。かなり実験的な試みを感じる小説で、こんな複雑な構造をしているとは想像もしていなかった!
途中、意味がわかりかけたのに終盤で再びけむに巻かれてしまって、途方に暮れている。
箱男にとっては居心地のいい箱の世界かもしれないが、読者の私は何らかの答えが欲しくなってしまう。
Posted by ブクログ
ダンボールを被ってまちにでる?
箱男が家の前に住み着く?
隣の家のトイレを覗き見?
箱の下ははだか?
突飛なようだけど、安楽死やら路上生活者の記事やらなにやら社会問題がちりばめられていて。
死んだ僕のしたいを打合せ通り醤油工場のうらにすてる?
Posted by ブクログ
難解。語りや視点が色々と変化してしまい混乱してしまった。箱男と贋箱男の区別もちょっと難しくなってしまって。解説まで読んで少しわかったかな(笑)しかし一読だけでは理解できない(笑)ちょっと『ドグラ・マグラ』を読んでいるような(笑)あそこまでおかしくは無いですが(笑)とりあえず時間をおいて再読しないと(笑)そして他にも安部公房が積読になっているから読んでいこう(笑)
Posted by ブクログ
結局のところ、どこまで妄想なのか謎。箱にこもって被害妄想に駆られた分裂気味の男性が、わけのわからない日記を書き散らしているだけのようにも見えるし、途中から箱男が死に向かう理由についてミステリーのように「辻褄合わせ」のストーリーが展開されてよく練られた小説のようにも読める。
箱男のコンセプトは興味深いが、見られないところから一方的に女性を眺めたいという男性ならではの欲望が「箱」と結びついているせいで、性欲的・変質者的な描写が多いのは共感しづらい。とはいえ「見られる」ストレスは自身も大変共感するので(コロナ禍のマスクがその後も外せなくなった)、箱に潜む生活に関してはそれなりに興味がわいた。箱女ならどんな小説になるんだろう。
映画は解釈違いだったけれど、永瀬正敏と浅野忠信はかっこいい。
Posted by ブクログ
再読。
覗き趣味の話。
文庫で出ている安部公房作品をある程度読んでから再読したので、初めて読んだ時のような拒絶反応はなく楽しめた。
わけがわからないのは変わりないので筋を追うよりテーマを楽しむ作品と思おう。