あらすじ
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人気シリーズ「乙女の本棚」第37弾は、文豪・谷崎潤一郎×イラストレーター・夜汽車のコラボレーション!
小説としても画集としても楽しめる、魅惑の1冊。全イラスト描き下ろし。
その悶えは苦しいと同時に甘かった。
幼いときから稚児として寝食を共にしてきた千手丸と瑠璃光丸。何をするにも一緒だった二人の運命は、成長とともにそれぞれの道へと分かれていく。
谷崎潤一郎の名作が、ノスタルジーを感じさせる美しい作品で大きな話題を呼び、本シリーズでは江戸川乱歩『人でなしの恋』、谷崎潤一郎『刺青』、坂口安吾『夜長姫と耳男』を担当するイラストレーター・夜汽車によって描かれる。
名作文学と現代の美麗なイラストが融合した、珠玉のコラボレーション・シリーズ。
自分の本棚に飾っておきたい。大切なあの人にプレゼントしたい。そんな気持ちになる「乙女の本棚」シリーズの1冊。
感情タグBEST3
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Posted by ブクログ
夜汽車の絵が美してすごく好きだ。綺麗で可愛らしくて神々しい稚児の瑠璃光丸と千手丸が、目映いばかりに神秘的に描かれている。
生まれてこの方、ずっと俗世を離れて比叡山で共に暮らしてきた稚児の千手丸と瑠璃光丸。美しい容姿を持つ点は共通しているけれども、千手丸は2つ年上、瑠璃光丸は血筋が高貴という点で違いがあった。
似たような境遇の二人が、異なる選択の末、全く違う人生を歩んでいくことになるのだが、幻想的な美しさに加えて、人の生き方をも考えさせる良書だと思った。
俗世を何も知らずに仏閣で暮らせるなんて素晴らしいと、二人は俗世を知る人々から言われ続けていたが、本当にそうだろうか。比較する対象を知っているからどちらが良いか言えるのであって、俗世を知らない二人が好奇心を持ち、体験していない俗世を羨むことは当然だと思った。
生まれてから一度も女という生き物と接したことがなく、「女は魔物。女は危険」とだけ聞かされ続けたら、確かめたくなるのは正常な反応だ。まぁ、それで頭から離れなくなってしまうのはまさに煩悩というのだろうが、耐えきれずに行動を起こして、女というものを確かめに行った千手丸は、煩悩に負けたといえども、行動的で素晴らしいと思う。女のいる俗世こそ極楽だったと発見できたことは、行動しなければ至らなかった境地だったろう。
女がいる俗世に一緒に行こうという千手丸の誘いを断った瑠璃光丸も、それはそれでスゴイ。血筋が違うと言われ続けて、同調したくないという思いがあったのだろうか。知っている世界は狭まったかもしれないが、誰も到達できない所に行ける可能性があるのは、彼の魅力だ。
どんな道を選ぶかで、人の人生は全く違う方向へ進んでゆく。どれが正しいということはないと思うけれど、人と違う生き方をしたいなら、大勢と同じことを選んでいては駄目だと思った。
こっちは行かないほうがいいと言われているのに、惹かれる気持ちもよくわかる。弱くったって、誰も責められない。人はないものねだり。なくても幸せだよと言われても、欲しくなってしまう。その煩悩や悩める姿に親近感を感じて、私は千手丸が愛おしいと思った。
行ってみたい方に行けばいいのだと思う。
どんな景色を見たいのか、堪えても見たいものがあるから耐えるのか、求める気持ちに屈してその世界を見に行くのか。
究極の選択という場面に誰しも巡り合うのだろう。どちらを選んでもいいのだけれど、尊敬されるのは少数の道を選んだ人。大多数はそうできないから、畏敬の念が生まれるのだ。そういう点で、瑠璃光丸を見習いたい。
できるならば、少数の人が選ぶ道の一つを、私も選んでみたいものだ。
Posted by ブクログ
そんなに女人をみたくなるものなのかと不思議だった。
ふたりは対照的な性格だなぁ。来世を信じているところが新鮮だった。
瑠璃光丸の三世にわたる恋が成就しますようにと祈らずにはいられない。
かといって千手丸を責める気もない。