あらすじ
福島原発事故は、本当はどこまで深刻な事態に陥っていたのか? 「冷温停止」の年内達成で、一段落なのか? 「汚染水処理」の順調な進捗で、問題解決なのか? 「原子力の安全性」とは、技術の問題なのか? SPEEDIの活用、環境モニタリングの実施は、なぜ遅れたのか? ――原子力の専門家であり、内閣官房参与として原発事故対策に取り組んだ著者が語る、緊急事態で直面した現実と極限状況での判断。【光文社新書】
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Posted by ブクログ
福島原発事故の問題を、技術的にも社会的にも的確に解説し、これからの社会に必要なことを示した、最良の書。それにしても、何冊も本を読んでいながら、田坂さんが原子力工学の出身とは知りませんでした。
Posted by ブクログ
タイトルがミーハー週刊誌ぽくて好きじゃないけど、さすが田坂さん。なんて論理的で的確なんでしょう。
原子力の本質を非常にわかりやすく伝えている。
「含みある一言→それは何?→○○です。」
のパターンを多用しており、内容に引き込まれるし、小気味よいリズム感もあり、内容もさることながら文体としても素晴らしい。日本語が丁寧に選んであり、洗練を感じる。
原子力にまつわる本質的な内容と、これをテーマにしたときのあらゆるものの考え方と思想、論理的な文章…様々なことをこの本から学んだ。
原子力ではないが、この人のような思想と仕事ができるようになりたい。
Posted by ブクログ
ほんと題名のとおり、「官邸から見た原発事故の真実」が虚心坦懐に述べられているものであった。
原発を推進する立場にあったが、原発という人間が本来制御できないものであるので、人間としての矜持をちゃんと持っておられる内閣府元参与だった。
政府が答えるべき「国民の七つの疑問」にこんご政府がどう向き合っていくのか、現民主党政権の危うさが気になるところだ。
最後、工学部出身者が語る、「新たなエネルギー社会と参加型民主主義」は圧巻であった。
事実を事実として厳粛に受止め、何ら驕ることなく矜持を持って、望ましいエネルギー社会のパースペクティブが語られていた。
Posted by ブクログ
p.252
「我々は、運が良かった」
著者のこの一言が、すべてを言い表していると思う。
そして、根拠のない楽観的空気に厳しい警鐘を鳴らす。
だから、僕は言い続けようと思う。
原発は、いらない。
たとえ、自分の使える電気が少なくなっても、街がちょっと暗くなっても、職場が多少暑くても、我慢しよう。実際、去年の夏はそれで乗り切ったではないか。
自分の子供を、放射能まみれにだけはしたくない。
Posted by ブクログ
原子力の専門で、内閣官房参与としてあのときに対応にあたったヒトのなかで実は情報をここまでつまびらかにしているケースは少ないと思うので、貴重な発言の数々だと思う。このヒトの本はわかりやすい本が多いが、難しい内容をこうしてわかりやすく説明する技術は一級だと思う。この疑問に原発推進の方々はこたえないといけない。とくにバックエンドの問題は、次世代に先送らずになんとかせねばと思う。
Posted by ブクログ
僕のバイブルである「仕事の報酬とは何か」の著者で、
原子力工学を学び、現在はシンクタンク代表を務める田坂広志さん。
原子力、危機管理の専門家として内閣官房参与となった田坂さんが居なければ管政権は何もできなかったであろうことがよく分かる。
ただ、田坂さんのような専門家を招聘できるのも一つの力ではあるが。。。
福島第一原発で起こったこと、それを受けて官邸が下した判断、
そしてこれから人類が背負う宿命を分かりやすく学びました。
脱原発or原発推進という二択ではなく、現実と向き合って、
未来を切り開かなければならない。
冷静に現状認識できる良書です。
Posted by ブクログ
"大阪へ向かう新幹線で読む。本日は東日本大震災が起きてちょうど1年たつ3月11日。原発事故対策として内閣官房参与として活躍した著者。
事故の影響の大きさを改めて知る。そして、まだわからないことが一杯あることも知った。
日本は、原子力爆弾を2つも落とされ、核実験でも被害を受け、今回の原発事故。これだけの(この言葉が適切かどうかわからないなが)災害、被害にあっている国として果たすべき役割があるのだと考える。
統計調査も長期的に行っていく必要もあるのだろう。先日、週刊誌にこんな調査が紹介されていた。がん検診を受け続けていた人と、受けていない人のがん発生率の調査を新潟大学医学部の教授が紹介していた。20年、30年という単位での調査は欧米では行っているが、日本ではあまり行われていないそうだ。
目に見えない放射能とわれわれは付き合っていかなければならない。
科学的な事実を理解して、適切な判断ができないといけないと痛感した。
この日は震災の起こった時刻に黙祷をささげた。"
Posted by ブクログ
・Fail Safe(人間が失敗しても安全が確保される)とSafety in Depth(ひとつ
の安全装置が作動しなくても、他に幾重にも安全装置が施されている)
・「確率論的安全評価」の限界
・NIMBY;Not in My Backyard Syndrome
NOPE; Not on the Planet Earth
Posted by ブクログ
チェック項目14箇所。原発事故の後の最大のリスクは「根拠の無い楽観的空気」。根拠の無い楽観的空気が広がったとき信頼の喪失が起こる、国民から政府への信頼が決定的に失われる。国民からの信頼を回復するには政府が原子力行政について国民から信頼を失ったことを深く自覚するべき。信頼回復には2つのことをする・・・「身を正すこと」、「先を読むこと」。高レベル放射性廃棄物は極めて長期にわたって(10万年以上)人間環境から隔離し安全を確保しなければならない。東海村の臨界事故は技術的要因ではなく作業員がマニュアルに無い想定外のことを行ったことによるもの。原発再稼動には地元の協力以上に国民の納得が必要、国民感情の理解が必要。ソ連政府は原発事故のとき36時間以内に住民4万5千人を避難させるためにバス3000台を緊急動員した。日本では未曾有で未経験の災害だったため、対策マニュアルも整備されていない、原子力災害において周辺住民を強制避難させる強権を発動できる法律的根拠が無い。リスクマネジメントで最も取ってはならない判断・・・この基準を遵守するとかなりコストがかかる、実際には大した健康コストではないから当面基準を緩めようという「経済優先主義」な判断。リスクマネジメントにおいては「空振りコストは覚悟する」。これから特に大きな社会問題になるのは「将来被爆しによって病気になるのではないかとの不安を抱えながら生きていく」という精神的な健康被害。強力なリーダー出現の願望と幻滅が繰り返されているが真の原因は我々の中に巣食っている「自分以外の誰かが、この国を変えてくれる」という「依存の病」であり、この病こそ克服しなければならない。英雄願望を克服し、自覚を高める、この国を変えるのは他の誰でもない、我々一人ひとりの国民なのだ!
Posted by ブクログ
原発事故の真実、原子力政策の未来を垣間見ることができた。
田坂氏の著作は、本当に信頼できると思う。
最後の、「我々は運がよかった」という言葉がとても印象に残った。
Posted by ブクログ
原子力推進派の著書が、今のままでの原子力利用に警笛を鳴らす。
国民誰もが感じている、福島原発事故の徹底的原因追求がないままの
原発再稼働の危うさ。
技術的な見地からは当然だが、政治的、構造的、原子力産業、
エネルギー政策の抜本的に改革なくして、同じ事の繰り返しになってしまって、
福島原発事故を教訓に活かすこともできないこと。
日本人全員が、目の前の問題にとらわれるのではなく、
子孫たちのことを考えた、日本のあり方を考えていかなければいけない。
Posted by ブクログ
根拠のない楽観的空気が最大のリスクである。
原子力の問題を語る際、安全、安心が重要であるとされるが、原子力の問題で最も大切なものは、【信頼】である。
福島原発事故が起きた後で、政府は今後のエネルギー政策を慎重に考えなければならない。
【いかなる状況にも備える】
4つの挑戦
①原子力エネルギーの安全性への挑戦
②自然エネルギーの基幹性への挑戦
③化石エネルギーの環境性への挑戦
④省エネルギーの可能性への挑戦
Posted by ブクログ
ただ「運が良く」首都圏3000万人避難が起こらなかったのにも関わらず、経済優先で原発依存に戻ることを批判。さらに絶対問題としての最終処分。重要な提言と思う。
Posted by ブクログ
「福島原発事故」についてはすでに多くの書が出版されているが、本書は2011年の事故後に内閣参与として事態収拾にあたった専門家が著者である。
専門家として「原発」への深い憂慮をわかりやすく展開しており、「高レベル放射性廃棄物の最終処分問題」「行き場のない使用済み燃料」や「国民の七つの疑問」を読むと、問題の一層の深刻さがよくわかる。
すでにマスコミで「福島原発」を取り上げることも少なくなっているが、「福島原発事故」は、現在でも収束したわけでもなければ、解決したわけでもないのだということがよくわかった。
本書は、たんたんとインタビューに答える形で進行しているが、内容は深刻である。
政治の世界では、民主党は「脱原発依存」を掲げ、一方自民党は今回の総裁選でも5人の候補全てが原発に肯定的な主張だったように、「原発」は、まさに国民を二分する課題となっているが、事態を専門家の目から見た視点はそれなりの重さを持っていると思えた。
現在多くの「福島原発事故」についての書が発行されているが、そのほとんどが「反原発」「脱原発」の本だろう。これらの専門的知識を多くの人々が読み、自分のものとしていることは、今後の日本の政治に多くの影響を及ぼすことは間違いがないように思えた。
本書は、専門家の立場から「これから始まる真の危機」と原発事故の収拾策を指摘しているが、政治の世界でも「原発」は重要な選択肢となるだろうことを本書を読んで痛感した。
本書は、「原発事故」と「エネルギー政策」という専門的課題を誰もがわかりやすく紐解ける良書であると思うが、「政策」や「ピジョン」については抽象的で大雑把のように思え物足りなく思えた。