あらすじ
貧しい家に生まれたひとり息子は,両親の愛情をまっすぐに受けとめて育ち,働きづめの母親を懸命に支えた.大好きな体操,個性的な先生たち,つらかったクリスマス,大金持ちになったおじ,母親との徒歩旅行……軽妙かつ率直に語られる数々のエピソードが胸に迫る.ケストナーのエッセンスがつまった傑作自伝,待望の新訳.
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Posted by ブクログ
洒落たまえがきにはじまり、
職人技のような流麗たる筆で語り尽くすラスト、そしてまた飄々としたあとがきで終わる なんともケストナーさんな1冊でした。
ご両親の生まれから 出会い ドレスデンのかつての美しさ。
ケストナーが生まれてからは まるでエーミールと探偵そのままで、下宿人の先生のことなんて懐かしいとさえ感じてしまいました。
でもやっぱりお母さま。
それはそれはやり手なお母さんですが
しっかりと悩みを抱えていました。
クリスマスの贈り物を父と母それぞれが競うように用意していたのを感じ取ってしまう繊細な少年ケストナーには、
何度も母を探し歩く不安な日々がありました。橋の上で川の流れを見つめる母を見つけるまた小さな男の子の姿は、今はもうどちらの気持ちもわかる歳になった読者を泣かせます。
_彼女は完全な母親になろうと思い、そうなったのだから、彼女の賭け札であるわたしにとっても疑いの余地はなかった。つまり、わたしは完全なむすこにならねばならなかったのだ_
つらい…
エキセントリックなフランツおじさんや小学校のレーマン先生とのロッククライミングなどなど ほんとに鮮やかに子ども時代が描かれますが、
1914年の8月 休暇先から満員の汽車に乗ってドレスデンへ帰る人々。
_世界戦争がはじまった。わたしの子ども時代はおわった。_
この悲しみを含んだ鋼のような言葉の後に
おわりのあとがきがあります。
正直私はここが1番好き
猫たちとのたのしい会話で このおはなしに書いたことと書かなかったことを照れくさそうに言い訳しているというか
羊飼いの少年の靴下が下がりそうなことを心配しつつ 飄々とサヨナラするなんて
やはりマエストロでした。