あらすじ
夏川秋代は、夫を亡くして公団住宅にひとり暮らし。ある日、「(長女の巴と)家族になろうとしている」と語る若い男が突然やって来た。戸惑う秋代をよそに家に上がり込む謎めいた男。彼は本当に娘の婚約者なのか、それとも新手の詐欺なのか――。
秋代には実は、長女だけでなく、二人の息子にも男の来訪について相談できない理由があった。アメリカで未婚のまま娘を産んだ長女、男らしさの抑圧に悩み在日韓国人のパートナーとうまくいかない長男、借金を重ねて妻子に出て行かれた次男……こじれた家族の関係は修復できるのか。
現代文学の最前線を走る作家が、家族のあり方や人々のつながり方を問う渾身の長編。
〈解説〉大前粟生
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Posted by ブクログ
不自然さもあったけど、考えさせられた。家族に隠しごとをする方は怒りを買うことを恐れている。しかし隠される方はだまされた、それは私がバカだからという思考になる。この二者で仮に秘密にするような事柄を打ち明けても、修羅場になるんだと思う。そしてまた言えなくなる。どうせわかってくれない。でも、家族以外の人間がそばにいてくれて、その後もずっと見守ってくれたら関係が修復することもあるのだろうか。わからないけど、家族の関係は感情的で閉鎖的だから、自分たちだけで冷静に改善することは無理。第三者の介入の必要性は感じている。
Posted by ブクログ
長く積み重なった家族の歴史を、こんなに短い期間で『あなたも頑張ってた。苦しんでた』って家族に言える様になるのかなぁ…と思った。大人になってから振り返ってその意味がわかった時、改めてショックを受けるし、初めは蘇った負の感情を受け止める事しか出来ないよなぁと思う。
影響を受ける事は、洗脳なんだと言われるとすぐわかるのだけど、"だまされ屋さん"と言われても正直しっくりこなかった。洗脳という言い方は、被害者意識が強い言い方なのかな?相手を許せる様になる頃には、もっとゆるっと、(だって私"だまされ屋さん"だもの)と言えるようになるのかな。
Posted by ブクログ
どの家族にも何かしらのわだかまりとか、自分なりに誰々のことを考えてこうしてきたとかっていう暗い黒い部分は存在してて、でも大人になると改めて全てを曝け出して話し合う機会も必要性もないからそのままになってることってあるよなぁと読みながら少し苦しくなった。
ミサトや夕海みたいな全くの部外者が入った方が、こういうことはうまく進んだりするんだろうなと思った。
人物が多く、ニックネームもあったのでやや複雑だったのと、内容的にも全部綺麗に解決ハッピーエンド!とはいかないが、家族に対する気持ちとか、自分の行動を改めて考えるきっかけになったので良かった。