あらすじ
会ったことはないのに、つながっている。
さまざまなひとたちをつなぐ、ささやかな絆。
何をしていましたか?
ツイッターに投げられた質問に思い思いの答えを返す人たち。
問いの全文が知らされるのは答えが出揃ってから――
小説家のネムオが震災後に始めたそんな言葉遊びが、
さまざまな男女の人生を丸くつないでゆく。
この著者にしか書けない、静かだけれど力強い長編小説。
解説=藤野可織
※この電子書籍は2013年12月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
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Posted by ブクログ
5年前の東日本大震災後、あらゆる情報網が麻痺した際にTwitterが情報拡散や励ましの一躍を担ったことは記憶に新しい。逆に、無責任なツイート・リツイートの応酬が混乱を来したり、心ない言葉が飛び交ったりし、その使い方について議論が起こったこともあった。
この物語では、Twitterの有用、あるいは短慮な使い方にフォーカスしていない。「何をしていましたか?」などの投げかけられた質問に思い思いの答えを返す大喜利のようなことをしている人々の群像劇である。中には震災の被災者もいるが、決して悲惨さは描かれていないし、和やかなタイムライン上では震災があったことすら触れられていない。まるで、日本中で叫ばれた「絆」というものの外側にいるみたい。
物語中、登場人物が切り替わる部分でも段落が変わらない(これが読みにくかった!)。Twitterのタイムラインのように、無数の人々が「日常」を重ねている。同じ瞬間にラジオを聴く人がいて、同じ瞬間に別々の坂道を登っている人がいる。
簡単に世界中に発信できるようになった「言葉」。秋葉原で事件を起こした犯人も、ネット上(Twitterではない)に自分の行動を事細かに記していたという。果たして、言葉の受け取り手がいれば、あの事件は起こったのだろうか。言葉のあり方について、今一度考える時期に来ているのかもしれない。