【感想・ネタバレ】ピュアのレビュー

あらすじ

妊娠を義務付けられた女性が男たちを「食べる」世界を描く表題作や単行本未収録作等、今を反映し性と人間に鋭く切り込む全6篇!

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

この短編集を貫くテーマは、性とジェンダー。大半はヘテロセクシャル・シスジェンダー同士の関係性を描いていますが、一部は女性同士の強固な結びつき、シスターフッド的な風味を感じさせます。そして、ほぼ全編に漂う暴力性。
現代に生きる女性作家が、直球ストレートに性を扱った作品群ですが、決してセンセーショナルではありません。むしろ、いろいろと考えさせられます。

惜しむらくは、全作品が既存のジェンダー規範に囚われていること。「SEX=暴力」という現実の側面を全面に押し出し、男は搾取する側、女は搾取される側、という前提で価値観が構築されているところが、極めてコンサバティヴです。表題作は、暴力の方向性が男→女ではなく女→男に逆転している点が新規的ではありますが、最終的に「強い母親が愛する男と結ばれて子供を守り育てる」という従来の規範に収まってしまうのが、ちょっと勿体無いな、と思いました。
・・・ただ、ね、これが現実なんですよね、実際のところ。この短編集を「性の描き方が浅い」と批評するコメントも散見されますが、だって、実際そうなんだから、仕方ないじゃん。と、鴨は思います。
所々に漂うシスターフッド風味には正直違和感を覚えないでもありませんが(鴨自身がそういう経験がないので)、女同士の結びつきを強固にすることによってしか女は自分を守れない、という側面を強調した結果なのかな、と鴨は理解しました。

オンナSF者の一人として、読んでおいて損はない作品だと思います。でも、この作品について誰かと語ろうとは思わないかなー。自分の心の中だけで、じっくり噛み締めたいです。

0
2024年12月07日

「SF・ファンタジー」ランキング