あらすじ
「ネズミはビールにキレよりもコクを求める」「赤ワインに醤油を垂らすとコクが増す!?」「男性生殖器と口の中には深い関係がある」「牧場のミルクが美味しい科学的根拠」「甘味無しの世界は殺伐としている」――。ビール、ラーメン、吸い物、カレー、あらゆる食物で感じられるコクとは一体何なのか。その正体を科学者の目で探ることで見えてきた美味しさの秘密。「コクの構造」が今明らかに!
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Posted by ブクログ
久々の「ネタ本」シリーズ。日本人が美味しさの表現方法の1つとして使う「コク」というものが何なのか?を様々な観点から考察した本。正直いってバカげているが、その突き抜け感が最高に良い。
日本人にとって「コクがある」という表現はあまりにも乱用されすぎている。食品の美味しさを表現する時に、濃いめの味付けがされているものや、味わい深いものに対してはおしなべて「コクがある」と表現されることが多いが、実際問題コクの意味を正しく理解して使っている人は殆どいないと思う。旨味があることの総称としてコクという表現を使うが、そのコクの正体に迫ったというかなり挑戦的な内容だ。
とはいえ、著者は食品・栄養化学を専門としているので、本来はコクや旨味よりも食物の栄養価について詳しい専門家といえるのだが、この2つが密接に絡み合っているという点が非常に面白い。
著者曰く、コクは3層構造となっており、中心部をなす「コアーのコク」と、その周りを取り囲むように「第二のコク」「第三のコク」があるという。
コアーのコクは、「糖分」「脂肪」「ダシ(旨味)」の2つであり、それらは全て生命にとって重要な栄養素を含んでいる、これら3つの要素のうち単独あるいは複数の組み合わせによってコクは成り立っていると著者は見ている。動物実験でも他の栄養素には固執しなかったにも関わらずこの3要素だけには固執する性質が見られるようで、人間にとってはまさに無意識に、本当としてコクに惹かれている、というわけである。面白のは、コレ以外の成分、たとえば塩分や酸味には、動物実験のマウスも執着しないという点。味を整えるのに塩やお酢を使ってもコクを深めることにはつながらない。
食品の美味しさを追求していくと最終的に必ずこの3要素に行き着くことは料理人や食品関係者の間では常識中の常識だそうで、料理に深みを与えるためには、砂糖か油かダシを足すのは必然。もし著者の言う通り、コクが生物学的に欲している
ものだとしたら、我々が塩分や香りがやたら強い欧米の食事を日本人が好まないのは、日本人がよりコクに執着的であり、生物として飢餓の期間が強かったのかもしれない。
第2のコクとは「食感、香り、風味」だが、これは人類が経験的に学習した第一のコクにつながる「連想」でしかない。それ単体ではコクとは呼べず、第二のコクは第一のコクとつながってはじめて意味を成す。たとえばとろみや粘り、甘い香りなどといったものだが、この分類をきちんと分けている点はかかり面白い。
そして更にその外側にある第3のコクとは「精神性の世界」。味という枠を飛び出して、たとえば「コクのある演技」「人生のコク」といった表現の世界を指す。この食品と直接結びつかない世界にも定義を置いている点も面白かった。
他にもエピソード形式でいろんなお話を織り交ぜて語ってくれる本なので非常に読みやすい。薄いので一気に読み切ってしまったのだが、本来読みたいビジネス系・自己啓発系・史実系の合間にこの手のネタ本を挟むと脳がほっこりする。
他にもいくつか似たようなネタ本を積ん読してあるのでまた機会を見て読んでいきたい。
Posted by ブクログ
カタカナで書かれた「コク」という単語が沢山出てくる。こんなに一杯見てると「コク」っていう単語がおかしく感じられてきて、「コク」って言葉はこの世に無いんじゃないかと思えてくる。
本書のタイトルにもある「コクと旨味」なんかカレーやシチューのルウを始めとする食品のCMに出てきそうな言葉だが、そもそもコクって何だろう?
「コク」って「深み」に近いかな?と思っていた。そうでなければ本書でもちょっと出てきているがワインの「ボディ感」のようなものだろうか?
しかし著者はそれらとは別に「コク」を定義している。コクには核となる「糖分・油・旨味」があり、その上に香りやら食感の第2層、精神性の第3層と。そして、第2層第3層となるに従って経験により産み出されるので、子供ではわからない。
コクをキイワードに旨さの構成が科学的な検証もふまえて書かれているが、固いだけでなくラットが油の中毒(?)になる話、軟口蓋(口の天井の後ろの方)と男性器の類似性などは雑学的な面白さもある。
しかし、最後まで「コク」ってなんぞや?はわからなかったw