【感想・ネタバレ】ふしぎなキリスト教のレビュー

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Posted by ブクログ 2021年05月19日

 しばしばキリスト教は西洋文化の起源の一つだから勉強した方がいいという。現状のすべてをキリスト教一つに還元はできないと思うが、確かに今ある多くの西欧文化にキリスト教の影響はあると私も思う。それを勉強したとは思うが、どこから手を付けていいのかわからない。そんな人は多いのではないのではないか。

 本書...続きを読むはこのような疑問に対する最良かつ最大の答えになりうる。

 筆者は、日本の社会学のスーパースター(と私が勝手に思っている)大澤氏と、これまた社会学の大御所の橋爪氏との対談集。
 対談は、とかく浅くなりそうなところだが、この本は大澤氏のねちっこい揚げ足取り的な質問に対し橋爪氏が丁寧に答える形で一部でユダヤ教、二部でキリスト教についてその特徴や本質が語られる。そして三部ではこの二つの宗教の果てにある現代社会を概観する。

 この第一部や第二部は神学や哲学に興味がある人にはおすすめ。ツンデレ的な神と人との関係、聖典の各所に見られる矛盾の理解の仕方、神とのコミュニケーションの方法、預言者の立ち位置、等々についてどのように理解するべきかを橋爪氏が丁寧に解説している(なお旧約聖書について基礎知識を手っ取り早く得たい方には里中満智子氏の『マンガ 旧約聖書』シリーズ三巻をおすすめします)。

 そして出色は第三部の「いかに「西洋」を作ったか」。キリスト教の歴史の変遷とその意味合いについて解説し、その他の歴史的事項とも合わせて読み解きます。東方教会と西方教会は何が違うのか、プロテスタントはどうやってカトリックから生まれたか、中世キリスト教のギリシア哲学との邂逅の影響とは、近代哲学(というかカント)へ逆説的に影響したキリスト教的要素とは、新大陸発見の理由はキリスト教精神の発現ではないか等々。救済を、予定説と現世での努力との二項でとらえ、これゲーム理論で解き、さらにこれを宗教者の目でどう理解するか、というのも面白かった。最終的にイスラム教やヒンドゥー教、そして共産主義までをも見渡した上で現代のグローバリズムの状況を本書の見方に沿って読み解く。この第三部後半のドライブ感は半端なかった。

 ただ当然ではあるが、本書ですら単なる二次文献に過ぎない。我々は筆者の用意した高性能の乗り物で知的ドライブをしただけだ。より深く学ぶためには、我々読者自身が聖書を読み、哲学書も読み(まあ難しいだろうが)、そのうえで幾許かでも自分の意見や見方を持ち、その上で改めて本書を読む。そうやって個々人が個々人なりの意見や見方を持つようにできれば、著者である二人の社会学の泰斗も教育者として本望であろう。そして私もできればそのように思考をすすめていきたい。一生かけてになるでしょうが笑

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Posted by ブクログ 2022年04月19日

イエス・キリストの存在のため、同じ一神教であるユダヤ教、イスラム教と決定的に異なるキリスト教。キリスト教にあけるイエスは預言者であり「神の子」である。
福音書はそれぞれイエスに対する証言であり解釈。聖典が神の言葉ではないのは特殊。
さらに、そもそもイエスの母語(アラム語)ではないギリシャ語で書かれた...続きを読むので、聖なる文字もない。
ローマ帝国が分裂したのち、東方教会とカトリックに分かれ、東方教会は現地語に訳して布教をしていく(○○教会が増えた原因)。
カトリックは権威づけのためラテン語に限定。
イスラム教由来で伝わったギリシャ哲学も導入。
宗教を否定するマルクス主義はキリスト教的終末論の再現。

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Posted by ブクログ 2021年05月05日

西洋の前提になるキリスト教について、徹底的に考える、日本人。

幼稚園からキリスト教系だったので、あまりキリスト教について、深く考えることもなく、自然に捉えていたのかもしれない。それは、わかったつもりになっていただけだったのかもしれない。

タイトルはキリスト教ですが、比較対象として他の宗教もあげら...続きを読むれていて、宗教全体の勉強になります。文明の対立がなぜ起こるのか、これからグローバル化が進む世界で、どのように欧米、つまりキリスト教が根付いている価値観と付き合っていくのか。

キリスト教の信者じゃない人が、徹底的にキリスト教に語る、って、そういえばあまりないのかな。私としては「そこ疑問に思うのか」とか「そういう捉え方をするのか」という感じ。とにかく、お二人がキリスト教の信者じゃないことはよくわかった。

ただ、信仰する分には、こういうこと考える必要ないのでは、と思ってしまったのも。キリスト教って腑に落ちないことがある、という人が、ざっくりと読めばいいのでは、と思います。対談集としては、テンポよく、おもしろいし。

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Posted by ブクログ 2020年05月06日

 まえがきより・・・近代というのは、西洋的な社会というものがグローバルスタンダードになっている状況である。西洋の文明的なアイデンティティ、その中核にあるのがキリスト教である。近代化とは、西洋から、キリスト教に由来するさまざまなアイデアや制度や物の考え方がでてきて、それを、西洋の外部にいた者たちが受け...続きを読む入れてきた過程だった。
 
 つまり、近代化の先にある現代化?のリーダーシップを握ろうとするならば、キリスト教を理解しなければならない?
 そう気づいた人は、先ず、この本を読みましょう。
 少しは、今まで納得できなかった出来事を腑に落とすことができるかも?

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