【感想・ネタバレ】ポアロのクリスマス〔新訳版〕のレビュー

あらすじ

富豪の一族が久方ぶりに集った館で、偏屈な老当主が殺された。犯人は家族か使用人か。聖夜に起きた凄惨な密室殺人にポアロが挑む

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Posted by ブクログ

ネタバレ

面白かった…やっぱりクリスティー作品には登場人物たちの様々な会話、行動、思惑を絡め合わせて事件を複雑に見せる技術はもちろんのこと、それ自体に魅力があることがすごい!
そもそもポアロが外国人というのもあるけど、今回はイギリスの富豪の一家にスペイン人女性や南アフリカの青年も混じって、その土地で育った人々の個性が滲み出てくるような会話や人物描写が楽しかった。

あとこの作品の冒頭に、『マクベス』の引用がある。
「あの老人にこんなにたくさんの血があったなんて、だれが考えたでしょう……」
そして、クリスティーが義兄から「もっと血が大量に流れる元気で凶暴な殺人」をと望まれてこの作品を書いたことが記されている。

たしかにこの事件の被害者であるシメオンは、血溜まりの中で遺体として発見されたが…正直、時間が起きたときはこれだけ?と思ってしまった。
元気さと凶暴さ足りなくない?と…
でもポアロが暴いた真犯人は、思ってもみなかった人物で、その人物の立場からするとより一層事件の凶暴さが際立つ…

そして「血」!!
この事件はまさしくシメオンと同じ「血」が流れている人物によって行われたものだった…ここで冒頭のマクベスの引用を思い返すと、全く違う印象を受ける。なんと皮肉めいた言葉なんだろう…

解説でこの作品が『死との約束』のあとに書かれたものだと知り、なるほど、と思った。
たしかに家族の中に一人、殺される理由が十分にある人物がいて、という状況が全く同じだ。
これを中東からイギリスに舞台を変えて続けて書くことに、クリスティーの自分への自信を感じる。
たしかに今回はイギリスの暗いどんよりした雰囲気を楽しめた。状況は似ているけど全くの別物として読むことができた。

というかクリスマスが近いからぴったりだ!と思って読んだけど、全然クリスマスって感じじゃなかったな…

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2024年12月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

富豪の一族が集まるクリスマスイブに偏屈な老当主シメオンが殺された。部屋は密室なのに明らかに自殺とは思われない殺され方…犯人は一体?
スーシェのドラマを何度も観ていたので犯人もわかっていたから楽しめるかな?って思っていたけど、ポアロが出てきてから一気に読めた。というか、シメオンが嫌な奴すぎて進められなかったというのもあるかも。
ドラマとは確か3兄弟だったのに原作は4兄弟でビックリしたし、他にもいなかった登場人物が…ただ、カタカナの名前を覚えにくい私なので4兄弟プラス3人の妻、誰が誰なのかなかなか大変でした(・・;)

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2024年03月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ひょえ〜〜〜!そんな犯人もアリなのか!と思わず声が出てしまった作品。個人的に、先日読んだミステリーも〇〇が犯人で、〇〇も疑ってかからないといけないんだな、と少々複雑な気分です……。
それにしても。
クリスティーには「すごく面白い」か「面白い」作品しかありませんね、ええ。

タイトルがそのまま『ポアロのクリスマス』ということで、この時期が来るのを待ちわびていました。しかもこのタイミングで新訳版が刊行!
そのまえがきとして、クリスティーが義兄にあてたこんな言葉がありました。
「『もっと血が大量に流れる元気で凶暴な殺人」を読みたいと。どこからどう見ても殺人でしかありえないものを!
 そんなわけで、これはあなたに捧げる――あなたのために書いた――特別なお話です。」
私は特別スプラッタものが好きというわけではありませんが、この不穏な出だしにはかなりワクワクしてしまいました。

大富豪の老人とその子供たちといえば、『パディントン発4時50分』も思い出されます。その際も個性豊かな子供たちが出てきますが、今作はそれがグレードアップ。
各々の人生、性格や考え方、他の家族との関係性が非常に丁寧に描かれています。そして彼らを支える妻たちも三者三様。だからこそ、すっかり「家族のストーリー」に惹き込まれて騙されてしまったわけですが。。
最後もハッピーエンドで、これが雨降って地固まるということでしょうか。彼ら「家族」が、これからはもっといい関係を築いていけたらいいなと思いました。

最後に、ミステリーにしては珍しく付箋を貼った場所をご紹介。こうした家族ならではの難しさって、万国共通なんでしょうね……。
p134
「で、家族が、一年じゅう離ればなれでいた家族たちが、また一同に会するわけです。そうした状況のもとでは、友よ、非常に強い緊張が生まれるということを認めなければなりません。もともと互いをよく思っていない者同士が、打ち解けているように見せなければならないというプレッシャーを自分にかけるわけですから!(略)でも、偽善は偽善です!」
p136
「無理してこしらえた状況は本来の反応を引き起こします」

(おまけ)p448
"わたしの場合は、いついかなるときとセントラル・ヒーティングだ……"

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2023年12月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

クリスマスの前後に読むとより現実と小説がリンクして楽しめる気がする。
「アクロイド殺し」と同様、まさか探偵と犯人が最初から一緒に事件捜査をする、ミステリーばかり読む人間にとっては「そんかの反則だ!」とつい立ち上がってしまうか、恐れ入ったと素直にまた最初から読み直すかのどちらかだと思う。警察官が犯人とは、現実を生きる身としてはあってほしくはない展開だ。事実、読み進めていく中で私は一度も警察官は疑わなかった。警察官を疑っていてはミステリーを読む度に大変な労力が必要になってしまう。
作品中、夫人達がポワロが買ったつけ髭について話す場面があるが、個人的にはそこがとても好きだ。またポワロが人の口髭を見て手入れに何を使っているのかと聞いたところでは、ポワロも身なりを気にする普通の人間らしいところがあるのだと微笑ましく、くすりと笑ってしまった。近頃は立派な口髭をたくわえた紳士には滅多にお目にかかれないが、口髭を美しく維持するにも苦労があるのだろうかと考えたりもした。
ピラールとスティーブンは身分を偽って出会った者同士だが、列車内での初対面で既に互いに好印象を抱いたあたり、きっとこの二人は結ばれるだろうと予感があったので、この二人が翌年のクリスマスを奇妙な縁で結ばれたリー家で、今度こそ愉しく過ごせるだろうと想像した。

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2023年11月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

『死との約束』を書いている途中に、この被害者設定をそのまま借用して、直球の本格を書こうと思いついたのだろうか。またもや財力で一家を支配し、家族をゲームの駒のように動かして楽しむ富豪が登場する。おそらく『メソポタミヤの殺人』のような広義のものを除き、ポアロ初の密室らしい密室。実際は、終盤にとある証言が出てようやく、不可能状況(犯人消失もの)だったということが判明する。
【ややネタバレ】

記憶に残る伏線を大量に敷き、それでもなお欺いてくる真犯人の隠し方の上手さはいつも通りだが、今回はクリスティーでは滅多にお目にかかれない物理トリックで新鮮だった。
さすクリ要素は死体発見時の引用セリフ「あの年寄りが、あんなにたくさんの血を持っていたと、誰が考えただろう?」
この引用、かっこいいだけじゃない!血まみれで血ぬられた血生臭いミステリー、なるほど。
当時の血に関する科学捜査ってこのレベルも見抜けなかったの?てのは少々意外だった。

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2025年10月21日

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