あらすじ
男は二度、女を撃った。女は一度、男の命を救い、一度、その命を奪おうとした。ふたりは同じ理想を追いながらも敵同士だったから……。悠久なる大河のほとり、野賊との内戦が続く国。理想に燃える若き軍人が伝説の野賊と出会った時、波乱に満ちた運命が幕を開ける。「平和をもたらす」。その正義を貫くためなら誓いを偽り、愛する人も傷つける男は、国を変えられるのか? 日本が生んだ歴史大河ファンタジーの傑作!!
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Posted by ブクログ
野賊との内戦が続き、腐敗気味の内政が横行する国で、理想を貫き続けた一人の軍人の物語。常に理想を体現する為に最適な手段を考え、様々な障害に屈すること無くそれを全うしようとする主人公アマヨク・テミズの姿が心を打ちます。(実際にこういう人が近くにいたら、融通が聞かない苦手なタイプに映るかもしれませんが…)
中盤までは比較的順調に昇進して行きますが、策略によって貶められてしまう以降の展開は、どう収束させるのだろうかがとても気になりました。最終的には序盤からたまに話題に挙るある人物の力により大団円を迎えます。最初はちょっと都合が良いかなー、なんて思ってしまいましたが、アマヨクの常にブレなかった理想を追求する姿勢がその人物を行動させたのだと解釈しました。
そうした「行動が周囲に良い影響を与えて行く」という、ある種のカリスマ性を持った主人公の姿は、「黄金の王 白銀の王」の穭と薫衣や「永遠の0」の宮部久蔵に通じるものがあり、それらの作品と同じような感動を得ることが出来たように思います。
Posted by ブクログ
■文庫に降りたので購入。再読。アマヨク・テミズは男でござる。あまりにもまっすぐでかっちょいい。でも眩しすぎる。あまりにもまっすぐなアマヨクの前で、歪んでしまった兄にも共感してしまう。それほどにまっすぐだ。
Posted by ブクログ
野賊が跋扈し内乱が続くある国で、国の平和のために戦う軍人の人生を描いたお話。
この世に存在しない国での出来事という意味ではファンタジーではあるものの、 魔法も超人も出てこないので歴史小説のような感じ。
主人公アマヨクは大貴族の私生児である母と平民の父を持ち、駆け落ちした両親と山奥で暮らしていたが、将軍である伯父の後押しで国王軍に入隊する。
少尉として最初の行軍で、野賊のオーマ一味と遭遇したことから物語が始まる。
あまたの戦いに勝利し着実に出世を遂げるアマヨクだけれど、
何度も死に目に遭ったり、信頼していた伯父に裏切られ拷問され囚人として採石場に送られるなど、主人公とは思えない痛めつけられ方をする。
ヒロイン的ポジションである野賊オーマの部下カーミラは、
普通だったら敵味方に分かれているのに愛してしまった女性、として悲恋の役割を担うところなのに、物語序盤でアマヨクは彼女を銃で撃つし、敵に捕まって拷問を受けたうえに、子供を二人も産まされるという夢と希望とは程遠い展開に。
その後もかなり悲惨な運命に翻弄されるカーミラ。
カーミラの産み落とした二人の子供も悲惨な境遇で、
正直冒険ファンタジーとしてこれでいいのか激しく謎だし、表紙の印象と違ってブラックだし、途中で読むのをやめる人もいそうなぐらい救いようがない。
だけれどだんだん、信念を持って愚直に進むアマヨクや、とても正直でまっすぐなカーミラの強さが魅力的に感じてくる。
カーミラの息子とアマヨクの関係性もよい。
一冊で30年近い年月が流れるため、どんどん物語は進む。
登場人物たちの心情は詳しく書かれない。
特に主人公なのにアマヨクの心理描写は薄くて、感情移入するのは難しいかもしれない。
それにアマヨクは心優しい人であるけどあくまで国のために働くという信条のため、 時にヒーローとは思えない言動も取る。
同時に悪人は単に悪人ではない。悪にも理由と根拠があるのだなと思わせられる。
人はみな良い人であり悪い人であるということを感じさせる深さがいい。
序盤はなかなか進みが遅いけれども、
二部以降は登場人物たちの動きも活発になり物語の起伏が出てきて一気に読める。
終盤からのスピード感もよかった。終わり方もすっきり。
かなり骨太重厚な物語です。