【感想・ネタバレ】散華 紫式部の生涯(下)のレビュー

あらすじ

越前から帰京した小市は長年言い寄られた宣孝とついに結婚するが、夫の裏切りに心は冷えきり、三年にも満たぬうちに死別する。
心にあいた穴を埋められずにいるなか、清少納言や和泉式部の傑作に心打たれた小市は、『源氏物語』執筆を開始。たちまち高い評判を得ると、藤原道長の強い求めに応じて、中宮彰子に出仕する。
数世代にわたる帝をとりまく非情な権力抗争や、人々の無常を肌身に感じつつ物語に昇華させ、源氏物語を完結させた紫式部の生涯を描く。〈解説〉山本淳子

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Posted by ブクログ

上巻を読み始めた先月からずっと、日常生活を送りながらも頭と心の一部は平安時代に行っちゃってたので、読み終えてからしばらくの間放心状態だった。すぐ現実に戻れなくて、戻りたくない気持ちもあって。ラストがあまりにも寂しくて涙が出た。

本作は紫式部の物語ではあるが、紫式部一家の、家族の物語でもある。そして天皇家や中ノ関白家はもちろん、複雑な藤原家一族どうしの関係の中で、それぞれが恋をしたり出仕したり、自分や家族の出世に喜び喜ばれ、妬み妬まれ、持ち上げられ蹴落とされ、多くの人が死に、生まれ、さまざまな人生が交錯してゆく。

〈本質的には現代人と変らぬ生き身の人間として、登場人物を描くことにつとめた〉と著者も「あとがき」に書いているように、読んでいる間ずっと私の目の前で、小市(紫式部)たちが息をし、しゃべり、和歌を詠み、必死に生きていた。みんな、確かにそこにいて、家族のようにいっしょに過ごした。

「全集版あとがき」には、どことどこが史実なのかが示されており、この物語の信憑性がグッと増して感慨深い。〈文芸作品というものは和歌一首にしろ、詠み手の内面と断ちがたく結びついているし、まして長尺の物語を紡ぎ出すとなれば、作者は持っている力のすべてを投入せざるをえず、その作品は作者本人の全人間的なものの投影とな〉るものであるから、これからは小市の人生を重ねながら『源氏物語』を読むことになるだろう。そういう味わい方ができることがうれしい。

こんなに人間的な小市が立体的に立ち上がり、またこの時代を生きた他の人たちも、一人一人を生き生きとイメージできたおかげで、多くを知ることができたし、かなり理解が深まった。本当に読んで良かった。

『散華』というタイトルが、心に深く深く沁み渡った。

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2024年04月10日

Posted by ブクログ

大河ドラマ「光る君へ」の主人公である紫式部の生涯を題材にしていたので読みました。
また、作者の杉本苑子さんは若い頃から読んでいたので。
源氏物語のストーリーが紫式部の生涯に散りばめられており、源氏物語も同時に楽しめました。
紫式部が亡くなり、年老いた父と叔母の二人が物語を結ぶシーンが儚く美しく源氏物語に通じるものがあると感じました。
この本が大河ドラマの原作であれば良かったのにと思う一作でした。

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2025年01月02日

Posted by ブクログ

一月からの大河ドラマに
備えて年内に読み切りたいと始めて2週間ほどでしたね。
書店には紫式部に関連した本が山積みしてありますが、
この方は、新しくリリースされた文庫本ではなく、
古本として手に入れていた単行本でした。
源氏物語は言うまでもなく、枕草子や伊勢物語は読んでましたので、楽しく読めました。
蜻蛉日記や和泉式部日記も読んでみたいと思います。

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2023年12月30日

Posted by ブクログ

うーん長かった‥

現在放映されている「光る君へ」での紫式部の人物造形が驚くほど似ている。この作品も参考にしているのではないだろうか。少し内気で社交下手、自己肯定感がやや低いところがあるが、芯が強く賢い女性。今の人にも理解されやすい様に、作品の中では考え方や思考回路が現代的な面があるが、人の本質は変わらないなので、おそらく紫式部はこの様な女性だったのでしょう。作者の杉本苑子が投影されているのかもしれません。

この作品では紫式部のに一生を描くとともに、平安後期の中流以上の層の人々の生活もよく描かれていますが、医療が発達してない時代の人の生き死にの儚さは現代人には想像できないものがある。この作品の中でも多くの人たちの死が描かれているが、ラストの切なさ悲しさは格別のものがある。

今まで殆ど興味のなかった平安時代ではあるが、関連本をこれからも読んでいきたい。

(星は上下巻を通したもの)

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2024年04月11日

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