あらすじ
故郷の仙台で母親を亡くし天涯孤独となったおふゆは、母の最期の言葉を頼りに江戸に行き、縁あって、絵師歌川国藤のもと、住み込みで修行中の身である。思うような絵が描けず、悩んでいたある日、亡くなった役者の姿を描いた「死絵」に出会う。一方、幼少時に仙台で知り合った昔馴染みで役者の三代目富沢市之進が、浅草の芝居小屋の夏興行でついに主役を張るという。おふゆは市之進の母親お京に誘われ、初日の舞台を見に行くことになるが……。憂き世を照らす、一途な愛と親子の絆に涙する、書き下ろし時代小説。
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Posted by ブクログ
珍しい女性の絵師の話を、作者の森さんは書いている。
絵師の話が好きでよく読むが、女性の絵師といえば北斎の娘、お栄しか浮かばない。でも、他にもきっと志した女性がいたに違いない。道は険しいが、ひたむきに絵と向き合うおふゆ。
ここでは「死に絵」というものが出てくる。おふゆがなぜか惹かれる。苦労しっぱなしで亡くなった、母親の安らかな死に顔をふと思い出す。
確かにその後の展開が読めてしまうが、これはどうやらシリーズもののようなので、次回に期待したい。
Posted by ブクログ
両親亡きあと、絵師見習いとして仙台から江戸へ出てきたおふゆ。絵師としてやっていけるのか悩んでいた時、亡くなった役者を描く「死絵」に魅せられた。
おふゆには思いを寄せる旅芸人・市之進がいた。役者として大躍進を遂げていた市之進だが、不慮の事故で急死してしまう。おふゆはその市之進の死絵を描くことになったのだった――。
すらすら読めてびっくり。筆力のある著者だなと思ったら、ケータイ小説を長く執筆してこられたとのこと。『写楽女』もあわせて、切ない恋心の描写、読者をひきつけるドラマチックな展開は絶品だと思う。