【感想・ネタバレ】世界を動かした名演説のレビュー

あらすじ

名演説とは時代や歴史、社会問題や政治運動を色濃く記録したサムネール(縮図)だ! 武器にもなり癒しにもなる言葉の力とは。チャーチルの第2次世界大戦の戦況を逆転させた演説から、ドイツ発史上最強の謝罪演説、ゼレンスキーの戦時下演説まで。冷戦、戦争責任、グローバルサウス、人種差別、宗教戦争、コロナ禍そしてウクライナ戦争。現代史と世界情勢の要点を、話術のコツと合わせて総覧し、歴史に残る名言を味わい尽くす。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

 配役の妙。
 話術に長けたパックンが、修辞学に基づいて、演説の内容をレトリックや言葉遣いについて分析、池上さんが、演説がなされた時代背景や世界情勢を解説し、その意義を補完する。
 対話調にまとめられているので、お手軽に読みやすい。筑摩書房編集局のお手柄か。

 取り上げられた演説は全部で15。チャーチル、J・F・ケネディは当然ながら、レーガン、キング牧師、ネルソン・マンデラと、名だたる名演説が列記されている。
 ややもすると、それらは何度も見聞きし、世の名言集にもピックアップされているようなものも多い。池上さんの解説にも、いまさらながらの目新しさもない章も少なくない。
 そこを、英語のネイティブで話術の達人のパックンが、修辞学に基づく解説を加え、なぜ、その演説が聴衆の心を捉えたか、その後の行動を促す結果になったか、世界を動かしたかを解説する点が新鮮。

 説得力のある演説の3つの要素、エトス(信頼性)、ロゴス(論理)、パトス(勘定)は憶えておこう。

 近年の演説も含まれる。ドイツのメルケル首相や、当時の安倍首相、そして、ゼレンスキー大統領らのものだ。
 まだ現役の人の演説を、ここで取り上げ持ち上げるのはどうなのだろう。

 本書、チャーチルの章で、ふたりはこうも言っている。

P:それにしてもこんな見事なレトリックで国民を鼓舞して、戦争に勝ったからいいものの、もし負けていたらチャーチルは今とは正反対の評価を受けていたかもしれません。
池:だからチャーチルは是が非でも戦争に勝たなくてはならなかった。

 つまり、その後の結果が、その演説を名演説たらしめた、ともいえる。
 徹底抗戦を国民に訴え、海外からの支援に頼り、国民を盾に戦争を続けるための演説が、果たして「正」だったのか? 
 時の洗礼を受け、やがて淘汰されていくのだろう。

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2023年11月17日

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