あらすじ
日本経済の未来も、日本企業の活路も、イノベーションにしかない。しかし、いったいどうすれば、イノベーションは起こせるのか――? ・なぜ日本企業から、グーグルやアップルが生まれないのか? ・イノベーションが起こりやすい環境、起きにくい環境とは何か? ・政府、企業、個人はそれぞれ何ができるのか? イノベーションを真正面から論じた本格的分析の書。任天堂、ソフトバンク、ソニーなど、各企業のケースも満載。<本書で検証するイノベーション、10の仮説>1) 技術革新はイノベーションの必要条件ではない2) イノベーションは新しいフレーミングである3) どうすればイノベーションに成功するかはわからないが、失敗には法則性がある4) プラットフォーム競争で勝つのは安くてよい商品とは限らない5) 「ものづくり」にこだわる限り、イノベーションは生まれない6) イノベーションにはオーナー企業が有利である7) 知的財産権の強化はイノベーションを阻害する8) 銀行の融資によってイノベーションは生まれない9) 政府がイノベーションを生み出すことはできないが、阻害する効果は大きい10) 過剰なコンセンサスを断ち切ることが重要だ
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Posted by ブクログ
イノベーションが必要だといわれることが多いが、イノーベーションとは何かを教科書的に解説した良書。
内容は、8側面(+終章)からイノベーションを解説して、その具体例として様々な引用から後から考えると必然だったことが、実は当時はそうではなかったことを感じさせることが多い。技術が必ずしもイノーベーションを引き起こしていないことがよくわかる。
どうしてもIT関係の具体例が多くなるが、著者の博識からも経済学や経済理論、歴史的な事実等の引用も多く、単なる技術論、経営論だけではないと思う。しかし、同じような話が続くために、途中であきる人がいることもわかる。
イノベーションに関しての横断的な書籍は少ないので、難しい本ではないので読んでみてはいかがだろうか。
Posted by ブクログ
イノベーションに必要なのは技術ではない、大企業のコンセンサス主義ではイノベーションは起きない、知的財産権の強化はイノベーションを阻害するだけ、などなど思い当たる部分が多数あり。
Posted by ブクログ
読み始めは分かりやすく面白い内容が続いた.
後半になると少しめんどくさくなったが,言っている内容はなるほどと思うないようであることは間違いない.
~主に前半で気になったところ抜粋~
特許は技術開発の手段であり、技術は経営の手段である。
技術の新規性と収益は無関係である。
既存技術を組み合わせて高い付加価値を生む。
ITの最大のメリットは新しいサービスを実現すること
ITやサービスで競争優位の源泉になるのは、プラットフォーム競争で顧客とフレームを共有する言語ゲームであり、そこで勝敗を決めるのは客観的心理に近いかどうかではなく、いかに多くの人々と言葉を共有するかである
むずかしいのは新しいアイデアを開発することより、古いアイデアから逃れることである。
イノベーションが失敗しないための条件
1.要素技術はありふれたもので、サービスも既にあるが、うまくいっていない。
2.独立系の企業がオーナーの思い込みで開発し、いきなり商用化する。
3.企業がひとつだけなので標準化は必要なく、すぐ実装できる。
4.一企業の事業なので、政府は関心を持たない。
5.最初はほとんど話題にならないので市場を独占し、事実上の標準となる。
おもちゃは必需品じゃない、なくなっても困らないものだから性能とか品質より、おもしろいかどうかである。
水平思考とは、既存のものを今までとは違う角度から考える。
ソフトウェアは基本的にサービスを実現するものなので、ユーザーの要求に応じて多くの機能を実現し、そのイノベーションも急速だ。
ここではOSのように標準的なプラットフォームを握ったものが勝つので、標準化をめぐるプラットフォーム競争が重要になる。
すべてをオープンにしてもビジネスとしては成り立たず、どこをクローズドにするかの戦略がビジネスの成否を決める。
プラットフォーム自体はなるべくオープンにする一方、それに付随するサービスで収益化する仕組みを作っておく必要がある。
Posted by ブクログ
かつてinnovationという単語は日本で「技術革新」と訳されたため、多くの人が、革新的な変革は新しい技術の発生を伴うと誤解している。しかし、わかりやすい例として、iPodやiPhoneといった製品を見ればわかるように、その製品自体に新しい技術要素がなくても革新的な変革を起こすことができる。
停滞が目立ってきているとはいえ、変革が起こり続けている業界のひとつはIT業界である。ここ数年の日本のIT業界の停滞はひどいものであるが、それを尻目に海外からのinnovationが押し寄せている。クラウド、SaaSの法人企業への導入は確実に進んでいる。IT業界にとっての停滞の原因、これからのinnovationは何かということを考えながら読み進めた。
企業は今現在、得意分野であり、売り上げや利益に貢献する分野にこだわる。目の前にクラウド、SaaSというような、ほぼ100%世に進展するであろう流れが見えているとしても、今まで作り続けてきた製品に固執する。そのほうがわかりやすい結果を出せるからである。
innovationを起こしてきたのは最大規模の企業ではなく、中小企業だったり、新参のベンチャーに近いような企業だったりした。この本の考えによるとクラウド、SaaSを作り、実際に世に送り出すのは世に名の知られていない小さな企業であり、その品質はお世辞にもよいといえないもの、ということになる。この「品質がさほどよくないもの」というところが重要で、最大規模の企業は、(特に日本の場合)はそのようなものを顧客に提供できたものではない、と二の足を踏んでしまう。
このようなことがIT業界だけではなくいろいろなところで確実に展開している。今、提供しているサービスは確かに必要なものではあるけれども、何年後かにはinnovationと呼ばれる流れとともに現れる信じられないほどの低価格のサービスにとってかわられる。
このようなinnovationは不可避なものであるから、労働する側は常に自分が提供できるサービスを柔軟に変えられるようにするしかない。
日本の雇用制度はその点、柔軟性がない。最近はずいぶん怪しくなってきたとはいえ、以前多くの人が前提と考える終身雇用制度が強いからである。
自ら提供する旧来のサービスの必要性を測定し、その一方で新たに起こる流れを見て、提供するサービスを自ら変化させることができること、そういうことが必要なようである。ただその新たなサービスの提供には「必ずしも新技術が必要なわけではない」、そこが重要なようです。