【感想・ネタバレ】哀れなるものたちのレビュー

あらすじ

19世紀後半、天才医師と、奇怪な手術で蘇生された女がいた。そう記された古書に魅せられた作家はある行動に出る。映画化原作

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Posted by ブクログ

ネタバレ

あらすじを書くと、19世紀末の医学博士の若き日の回想録と、その妻による回想録に対する反論を、20世紀後半のある作家・画家が編集したことを書き記したフィクション、ということになる。それだけ。世に出回っている、身投げした女性に胎児の脳を云々というあらすじは、上記の回想録の部分を要約したものである。
この本の中の語り手は、編者、医学博士、医学博士の妻の3人であり、このすべてが信用ならない。
編者はこの本の著者と同じアラスター・グレイだがあくまでフィクションであるこの本の架空の登場人物と見るべきである。ああややこしい。

で、中でも最も信用ならないのが編者である。回想録が真実であることを裏付けるための事実を並べ立て、巻末には異常なほどの量の注釈で補強しようとしている。回想録の真偽については回想録の最初の発見者とは意見を異にしているらしい。一人前の作家であるという自負があり、見栄を張りたいという様子が透けて見える。
ということはつまり、回想録はアレであって、妻の反論の方がアレであって、世に出回っているあらすじはつまりアレであって、、、ということになる。この構造的ないたずらがとても面白い。訳者までもが、この編者のたくらみに加担したような解説文を寄せているところも笑える。

ちなみに、ある意味本編とも言える回想録の部分は、奇想天外なゴシックホラー的、SF的な冒険物語となっていて、ここだけ取り出してももちろん面白い。

映画化されているが、本全体なのか回想録の部分だけなのか気になるところ。

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2024年06月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

それぞれの世界で描かれる哀れなるものたちの数奇な人生。

語り継がれる人々の人生は全て主観的なものでしかなく、それが真実か否かは物語において特別意味はなさない。あるのは文章の中で確かに生きているという事を改めて教えてくれるとても素晴らしい物語だった。

ストーリー上でアラスターグレイと共に登場する歴史家のノンフィクション作家と事実か否かで意見が分かれるところから始まるのもまた粋というか。。。

終盤マッキャンドルズが語る史実が終わりベラから見る自身の史実と合わせて、中略という形で客観的に語られるアラスターグレイの史実が繰り広げられるが、全ての人が幸福で格差のない理想郷を望んでいる彼女の存在そのものが未だ存在し得ない社会主義のユートピアと重なり、この物語の虚構性と来ることのない世界平和を語られているような哀しい気持ちにさせられた。

こちらが何かに渇望する哀れなるものへの仲間入りをして締め括られる物語、本当に素晴らしかった。

映画見た人は絶対見た方が良い!

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2024年06月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

奇書だ…!というのが第一印象。

実際の手紙のヴィクトリアが夫をバカ呼ばわりしていたり「こんな物書く時間があれば社会貢献のために働けよ」的なこと言ってたのが残念な気持ちになった。資本主義や家父長制の倫理と似たような考え方に陥ってしまうのが。
事実と違うのに自分がフランケンシュタインの怪物にされてたら腹立つのも分からんではないが。

ヴィクトリアは(1914年には)アーチボルドの回顧録の内容を嘘だとして拒絶したが、1920年の「愛の経済」(の序文と書評)を読むとヴィクトリアが(アーチボルドの書いた)ベラと同一化していったようにも感じる。これの本文も読みたかった。

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2024年02月21日

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