あらすじ
孤独をおぼえる人に光射す物語
小学生の頃に失踪した父をモデルにした創作小説と宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』を修士論文に選んだ大学院生の私。賢治の未完の物語に導かれるように、私は押し込めていた過去の自分と向き合っていく。
そして結婚を前提に同棲を望む恋人の亜紀との関係に息苦しさを覚え始め……。
迷いや痛みを抱えるすべての人に光射す傑作小説。
解説・柴崎友香
※この電子書籍は2021年7月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
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Posted by ブクログ
ー本当は自信がないのかな?だから結婚なんて思い切ったことを言って、相手の反応を伺うのって、自信がないときの男がやりがちなやつだよ。
ーとはいえ、原さんに好かれないと持てない自信なんて、あってないようなものだから、それはやっぱり彼自身の問題なんじゃないかな?他人と自分の問題を混同して責任とか感じないほうがいいよ。
そう、本当そう!亜紀くんは、すごく昔の自分みたいと思ってた。内向的で、好かれてるかいつも不安で、真髄には触れないで、そのくせ色々察してて。
ー原さんは、原さんに、冷たい。時々、びっくりするほど、冷淡。ーそうかもしれない。自分が嫌いだから。でも恋愛なら、好きだって保証してくれる人がいるから。少し世界が違って見えて、それって良いことだと思ってた。ー嫌いな自分にフタして、好きな相手の言葉や価値観だけで自分の中をいっぱいにしたら、そのときは甘い気持ちでいられるかもしれないけど、相手のほうは逆にどんどん原さんが見えなくなるよ。原さん自身だって。
ーそういう危うい女の子たちが本当に救われたら男の子たちはどうするのかなって。それはまるで彼らが、救われたら困る、と言っているようにも感じられた。
自立ってひとりぼっちになることじゃない。ひとりぼっちでも大丈夫になることじゃない。
ー私は亜紀くんが好きだった。私と混ざる前の、ただそこに単体として存在していた彼のことが好きだったのだ。
言葉がこんなにもギュンギュン沁みた。空っぽになった2人。自己表現が下手な子と、内向的で自信のない子との2人が空っぽなまま付き合って。周りにいる健全な人たちに支えられながら、自分の弱さと向き合う物語。私にもこんな時があった。私を愛してる?ってなに?という疑問は、悲鳴に聞こえる。私は私を愛していないのに。という言外の叫びが聞こえる。
コロナ禍の男女を島本さんが描くとこうなる、それはすごく繊細だった。
Posted by ブクログ
若い頃の不安定な心の描写がリアルだった。ずっと一緒にいたいという彼には躊躇するけど、元カノの話をされると嫉妬したりする。上手いなあ。
銀河鉄道の夜をもっと読み込んでからこの本を読むと、もっと良かったかも。