あらすじ
いつか自分たちの土地を持ち、
ニワトリやウサギを飼い、
土地からとれる極上のものを食べて暮らす──。
しっかり者のジョージと怪力のレニーは小さな夢をもっていた。
自然豊かな一九三〇年代のカリフォルニア。
貧しい出稼ぎ労働者の、苛酷な日常と無垢な心の絆を描く、
哀しくも愛おしい名作が新訳で登場!
感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
なんともいえない読後感が残る名作だと思う。
貧しい渡り労働者のジョージとレニーは、いつか自分たちの土地を持つという夢を語り合う。現実には、労働者の多くが同じような夢を持つが叶わない。厳しい現実の中でもジョージが夢を語れたのは、相手がレニーだったからだろう。レニーはジョージの言うことを信じて素直に土地を手に入れるのを楽しみにしていて、否定的なことを言わない。それだけに、最後は切なかった。
黒人の馬屋番のクルックスの部屋での会話が印象に残っている。
「人間はあまり寂し過ぎると、病気になっちまう」(p.122)
訳者解説で、タイトルの由来が知れたのも良かった。
Posted by ブクログ
1930年代のカリフォルニアを舞台に、貧しい渡り労働者のジョージとレニーを主人公とした小説。あらすじだけ読んで労働者の悲哀を描いた作品かと思っていて、じっさい厳しい境遇は出てくるのだが、あまり労働そのものを描いた場面は登場せず、どちらかというと人間関係で苦労する様子が描かれる。結論もまた人間関係に起因するものである。レニーは読んでいてややもすれば肩入れをしたくなるような無垢な人物であることがわかっているので、その彼が殺されてしまうというこの結論は結構つらかった。「夢オチ」ではないかと期待してしまったほどである。しかし、(作中でそうとは明言されていないが)知的障碍を抱えているが無垢であるという一種のステレオタイプのような人物像は、いまの価値観でいうとどうであろうか。もちろん執筆当時の背景を無視して現在の価値観で断罪しようというつもりはない。ただ、やはりどこか受け容れがたい部分も感じてしまったのは事実である。あと、レニーはあまりにも怪力すぎないか? そこもちょっと気になってしまった。よい小説ではあるし心に響くものもあるのだが、やはり「古さ」も否めない。
Posted by ブクログ
スタインベック、というと、名前は知っているけれども、どういう本を書かれているのか、まったく知らずにはじめて読んだ本でした。
アメリカの田舎、労働者の生き様。
読み終えてから解説を読むと、1930年代の大恐慌の影響を受けたアメリカ社会を描いているようでした。
大恐慌の時代では慢性的な労働過剰の傾向がみられ、人件費などを変動費化することが求められ、貧しい渡り労働者たちを生み、格差と貧困が拡大、精神的な疲弊が身近に火即状況下にあったと言える、と解説されています。
レニーとジョージというコンビというか、
2人で農場などの仕事場を渡り歩いているのですが、
それ以外の登場人物もそれぞれ孤独を抱えているみたいで、
やるせなさがにじみ出る内容でした。
当時から約100年経った今のアメリカも、
最近ではラストベルトの状況がクローズアップされていますが、
広大な土地で今は人がどのように生きているのか、
想像は全く行き届かないのだけれど、
それぞれの、その時々の経済状況の中で、
レニーとジョージのように、固有の人と人が互いの存在を支え合って生きてきているんだということを、また少し想像させられました。
いつか土地をもって、小さな小屋をで一緒に良い暮らしをすることを言葉に手確かめ続ける。
そしてそこで、ウサギの世話をさせてもらえるように、今頑張る。そしてー。