あらすじ
認められたくて、必死だったあいつを、お前は笑えるの? 青山の占い師、80億円を動かすトレーダー、ロレックス・デイトナを巻く漫画家……。著者自身を彷彿とさせる「僕」が、怪しげな人物たちと遭遇する連作短篇集。彼らはどこまで嘘をついているのか? いま注目を集める直木賞作家が、成功と承認を渇望する人々の虚実を描く話題作!
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Posted by ブクログ
最近イチオシの作者。
これまでの印象は「よく下調べをして史実に虚構を織り交ぜるのが上手」という感じだったが、いよいよ自らを主人公にすることで自分自身を隠れ蓑にしてフィクションを作り出すという荒技に出ていて新鮮だった。
この人の賢いのは「自らの物語すら演出を加える」という前提を最初の章で言い切ってしまうことでのちに続く話が全部「嘘でも面白ければ構わないだろう」というスタンスを明示しているところ。
短編のうち、個人的に好みだったのは「三月十日」。同じ丸一日でも、3.11はみんな何をしてたか記憶をしているのにその前日は何をしていたか覚えていられない、という一見くだらない雑談の一部を面白おかしく広げられる作者の力量に脱帽。