あらすじ
【泉鏡花の少年時代を描いた、明治怪異ミステリー第2弾!】 時は明治、古都・金沢で過ごす変わり者の美少年・泉鏡太郎。(のちの泉鏡花)おばけ好きな鏡太郎は、人力車夫の義信とともに怪異の噂の真相を解き明かす。 魚の化生ではないかと噂される陸軍少佐夫人、神隠しから帰って来た医者の息子、河童の正体……など。 そして、ある不思議な噂が、金沢を揺るがす大きな事件へと発展していく――!
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Posted by ブクログ
シリーズ第2段。
文豪•泉鏡花が、少年時代に英語講師をしながら人力車夫の武良越義信と組んで怪異の噂を探訪するというバディもの。ここで探求した金沢の怪異が後の泉鏡花の作品に影響を与えているという体裁だ。今回は5話から成っている。
鏡太郎が魚の化生ではないかと噂される陸軍少佐夫人の家庭教師を引き受ける「海神別荘」
天狗に攫われて行方不明になっていた医者の息子が、まるで別人のようになって帰って来たことから始まる騒動を描いた「茸の舞姫」
義信が偶然見かけた河童のような生き物。それを銃で撃ちたいと言い出した人物を現地に案内する「貝の穴に河童の居る事」
貸本屋の瀧の許嫁•矢代知里が神隠しにあった。知里は躑躅の咲く丘を超えて行くと大きな建物に辿り着いた。そこで亡くなった母のような優しさで添い寝をしてくれた女性に会ったと言うのだ「竜潭譚」
金沢の町のあちこちに赤い旗が立てられ、おかしな噂が囁かれる。"炎のように赤い猿の群れが旗を立てていた" "赤い旗を持った美しい女が道で子どもに忠告した"どの噂も導く結末はひとつ。"近いうちに金沢で大火事が起こる"「朱日記」
日本古来の情緒あふれる幽玄な怪異譚を多く描いた泉鏡花。それは現代のホラーや恐怖譚のような論理性などとは無縁の世界です。この作品をきっかけに、泉鏡花作品にも触れる人が増えるといいですね。
そしてこの第二巻では、明治以降に失われていったものたちへの哀悼の思いが溢れています。それが特に良かったです。よって星五つとしました。
シリーズ第3段も出るのかな?「榲桲(まるめろ)に目鼻のつく話」なんかは使えそう。期待して待ってます。
Posted by ブクログ
泉鏡花もとい鏡太郎くんの年上女性に対する賛美が相も変わらずで安心してしまった。
泉鏡花作品は『天守物語』とあと数作しか読んだことがないので、「少年時代の泉鏡花が体験したことを基に作品を書いた」という設定のこの物語、後書きで先生も言及されていたとおり、泉鏡花作品の入り口としても面白くありがたい話だと思う。
あの体験したあとで、実際どんな話を書いたんだろうと気になりますもの。
各話が終わるたびにあるコラムもまた興味深い。
解説も楽しみなのです、いいぞもっとくれ。
と、実際の泉鏡花作品との架け橋にもなるこの作品、今回は初手から鏡太郎くんの賛美が止まらない女性が登場。
山姫様がクールに去ってしまわれてからどうなるだろうと思っていたら、前述通り安心するという。
この話、決して安堵できるような話ではないんですけど。
しかもこの初手話が最後に文字通り大きく「火を噴く」話になるという。
そんな展開は想像していなかったよ!
他にも、鏡太郎くんの過去に関わる話も登場。
まあ義信さんの過去に関わる件もあるにはあったけれども、彼は一作目で粗方やりましたしね。
鏡太郎くんが過去に体験したことへの答え合わせ、そのオチも含めて印象深かったです。
でもやはり一番印象深かったのはラストの話。
作中で一番やっていることは過激で、それでいて幻想的で、山の恐ろしさというか、人智の及ばない世界の恐ろしさを感じた話だったなと。
妖怪の出てくる『くらがり堂』に繋がる話でもあるので、科学では説明できないことが出てきても大丈夫な世界観のはずなんだけれども、それでも驚いて。
でも綺麗なんだよなあ、美しかった。
読み手側でもそう思うのだから、鏡太郎くんがあの景色をどう捉えて後にどう表現したのか、気になりますなあ。
問題は、私にはまだ泉鏡花の話は難解すぎてなかなか読めないんですよね……あの妖しくも美しい世界観を読んでも理解しきれない。
易しい現代語訳にしちゃうと魅力半減する気がするし、でもそうしてくれないと理解できないというね。
もっと読解力上げないと駄目だなあ。
個人的な愚痴はさておき、鏡太郎くんと義信さんのもはや気の置けないバディな二人のやり取りが頼もしくも微笑ましく、今回も本当に楽しめる作品でした。
更なる続編、お待ちしております、先生!
Posted by ブクログ
泉鏡花の奇譚録
第2弾
やっぱり読んじゃう
手に取っちゃう
始まりは陸軍少佐夫人の不思議なウワサから…
怪奇現象はもちろん気になるけど
このお話で一番心に残るのは
この明治時代のこの階級にいる女性たち(全員とは言わないけど)
切なく悲しくもどかしい人生
怪奇現象と共にこの時代に翻弄された人たちの
やり場のない感情
巡り巡りたどり着く神隠し
今この場所ではなく
向こう側に惹かれる泉鏡花の儚さ
怪奇現象から感じられるのは怖さではなく
静けさと優しい空気感
また続きを読みたいなと思う一冊
物語とは別に
このお話に出てくる場所がわかるので
読んでいても想像がしやすく
この本を持って
書かれている場所を巡るのも面白いかもと
思っている…
Posted by ブクログ
前作に引き続きすらすらと読めてしまいました。
明治時代の時代背景なども散りばめられており、読んでいてとても面白かったです。
「朱日記」は読んでいてとても切なかったですが、雪や喜平が無事あちら側に辿り着き、心穏やかに暮らしていることを願います…。
Posted by ブクログ
少年泉鏡花シリーズ第二弾。前作は車夫の義信が自分の人生に一区切り付けて前を向きましたが、今回は一区切りとまではいかないかもしれませんが、泉少年がちょっと大人になった気がしました。一つずつの事件の後、最後の話で1冊分の話がまとまる構成なので一件落着感もありつつ、続きも期待出来るという。
最近機会があって筆者の金沢の妖怪についてのお話を拝聴出来たのですが、その内容が全て詰まった話ばかりで楽しみも倍増でした。
Posted by ブクログ
少年泉鏡花の物語2弾。どのお話も不思議で鏡花の小説にもっと触れてみたくなる。1人の登場人物を通して明治期の女性の悲哀も描かれるがそれに憤る鏡花は優しく、年上女性が好きだったという当人の性質もよく表していると思う。自分が「言葉が足りない」と自覚し文学に触れ始めたのは小説家になる予兆か?
Posted by ブクログ
文豪泉鏡花を探偵役にした小説の2巻目。泉鏡花が金沢で、受験生でありながら私塾の英語講師をしていた時代のお話である。鏡花は英語を学ぶ車夫の義信が持ち込む怪異の謎を解き明かしていく。
本書も五つの短編からなっていて「海神別荘」、「茸の舞姫」、「貝の穴に河童の居る事」、「竜潭譚」、「朱日記」となっている。魚の化生と噂される夫人、神隠しから帰ってきた息子、深山の河童等が登場する。前作同様に後の鏡花の作品のモチーフになったかもしれない物語という設定である。
鏡花の年上の女性に対しての憧憬、あるいは崇拝は本書においても描かれている。連作短編集なのだが、巻をとおしてのヒロインが前作では山姫とすると、今巻のヒロインは薄幸の人妻である雪か。
鏡花は、当時の封建的家父長制での女の立場に憤り、物語の中で共感し、さらに救済しようとする。やはりミッションスクールに通っていたことも影響しているのだと思う。
あとがきからすると、今シリーズは本書で終わりかな。