あらすじ
AIを搭載したロボットのクララは、病弱な少女と友情を育んでゆく。愛とは、知性とは、家族とは? 生きることの意味を問う感動作
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Posted by ブクログ
自分のためじゃくてジョジーのためだけに全てを尽くすクララが持ってるのは、果たして人間的な心なのか。思いやりや憐憫は確かに心の一側面ではあるやろうけど、保身、嫉妬、依怗みたいな醜い感覚が排除されてるそれを心と呼んで良いのかは難しい。
とはいえそんなクララが、人間を特別たらしめるものを看破してるのが何よりも尊い。
お日さまとの約束とかいう、信仰に近い論理に心からの希望を見出してる感じ、映画『A.I.』と同じくSF作品の中でファンタジーに解決策を見出す矛盾と無力感があった。このパターン心が苦しいからやめて欲しい。
最後の店長の「B3型には愛情を感じられなかった」という言葉、人間に近づき過ぎたものには抱けない愛情の存在な。
Posted by ブクログ
AF(Artificial Friend:人工親友)の女の子であるクララの目線で語られる、未来の世界の物語。
他のカズオ・イシグロ作品でもしばしば見られるように、柔らかく優しい語り口でとんでもないディストピアを描き出す。(好き!)
クララは病弱な女の子、ジェシーの家に買い取られ、ジェシー、その母親および家政婦と共に暮らすようになる。ジェシーの"親友"としての役割に邁進するクララだが、ジェシーの病状は次第に悪化し、さらに家族の仄暗い秘密も明らかになっていく。
物語の世界において当たり前に存在するらしい、優勢思想的な技術もストーリーに影を落とす。
クララは非常に優れた人工知能を有しているが、人間と比較すればその思想は単純である。それでも、登場人物の中で、彼女が一番優しく、信心深く、そして正しく感じられる。しかし、ラストシーンで彼女がハッピーエンドを迎えられたわけでもない。
知性の複雑さが正しさに直結するわけではないこと、そして正しくあることが幸せに直結するわけでもないことが見につまされる。
愛、知性、信仰、倫理観、家族、友達…どこまでが人間だけのものなのか。愛、知性、幸せとは一体何なのか。読者の心に投げかける物語。
Posted by ブクログ
献身的なクララが運命を変える、的なハートフルな話と思いきや、かなりブラックな話だと感じた
確かに、クララ目線ではジョジーが回復して、様々な体験ができてハッピーなのかもしれないが、実際は用済みとして廃棄されている
途中にもところどころ、向上手術を受けたか受けていないかで格差が決定づけられている描写や、ジョジーの母親の言動に違和感しかないなどの要素が散りばめられており、現代の能力主義の行き着く先として、人の心の温かみが軽視され、誰もが取り替えのきく代用品になる暗い未来が描かれていると感じる
Posted by ブクログ
クララはユア・フォルマの通常アミクスのようではなく、自律的に思考する感情のある存在だったので、あのラストにはうーんとなってしまった。そんなことある?
ラストでクララが廃棄場にいる時に店長さんが話しかけてくるシーン、あれってこれから廃棄されるクララたちAFにまた会えて嬉しいってどうなの。普通感情移入しない? ジョジーも、本当の親友って言いながらこれから廃棄されるクララに手を振りますか?
人と見分けのつかない形をしているのかはわからなかったけれど(登場人物たちがクララをAFだと迷いなく判断していたので割とメカっぽいのかも?)、今まで幼少期に寄り添ってくれた存在をここまでぞんざいに扱えるものだろうか…。
最初ジョジーがショウウィンドウのクララに「あなたが家に来たいと思っていないのに私の意思だけで購入して連れ帰るのはフェアじゃない(意訳)」って言ってくれてたのすごい好きだったんだけどなあ。相手を相入れない存在かもしれないとして(推定14歳のジョジーが実際そこまで考えていたかはともかく)、だからこそフェアでありたいっていう誠実さが素敵だと思ったんだけど、そんなもんかなあ。
ジョジーたちはAFを人間だとは見ていなくて、結局は物としてしか見ていなかったってことですよね…クララが廃棄場を去る店長さんに振り向いてもらいたいと思っていたのが切なすぎる。あの描写はあの背中にジョジーを見出して、もう一度振り向いて欲しくて…ってこと? 人の心…。
でも、なんか風景も文章もすごく綺麗なんだよなあ。ちょっと少年の君に似てる? こんな悲しいのにそれだけではない美しさがある気がします。
あの計画については意見が分かれそう。ジョジーのお母さんの辛い気持ちははかり知れないとしても、ジョジーの同意なしに別のジョジーを彼女として見て、過ごしていくのはジョジーへの冒涜ではないのか…。それだけにクララが出した答えは素敵だと思った。何かに特別さを見出すのは最終的にはその人自身だもんね。
お日さま、たぶん誰よりも一生懸命で誠実で忠実だったクララのために彼女の願い事を叶えてあげたんだと思います。それが自分のことじゃなくて、ジョジーのことっていうのがね、もう…。
あとわざわざ説明せずに端々の描写で世界観を説明してくるところが引き込まれて良かった。数百ページ、本当にあっという間でした。ジョジーの病気の理由まで明らかになるところも好感が持てた。
Posted by ブクログ
読者として気になることや知りたいことにはっきりと触れることはないけど、ちゃんと所々から読み取れるようになってて、読後良いモヤモヤしか残らない加減がすごいなと思った。
感情があるということと心があるということは別なのかな。
クララには心がないのかも知らないけど、語り手がクララなのもあってすごく共感とか同情とか感じながら読み進めてた。
クララが最後に言った、特別な何かはジョジーの中ではなくジョジーを愛する人々の中にある、というセリフが本質だと思う。
Posted by ブクログ
最初の方は読みやすくすらすら読めましたが、途中気が滅入ってしまいました。
特に、リックとヘレン、その昔の恋人とのやり取りは、この物語の中でも特に醜悪なやり取りだったと思います。
クララが純真で愛情深く謙虚なAFであるからこそ、そのやり取りがより醜く見えてしまい、そこから読み進めるのが億劫になってしまいました。
また、その反面、クララのお日さまに対するあまりにも真っすぐな感情には、「そんなことで病気が治るわけがないのに……」という苛立ちのようなものを覚えてしまいました。
なので、最後にジョジーの病気が治ったことにはとても驚きました。ご都合主義的というか、ファンタジーなシーンだと思いましたが、その先の展開は苦みの残るものだったなと思います。
全体を通して、あまり楽しめなかったというのが正直なところですが、特別な何かはそれを愛する人の中にある、というフレーズはとても印象に残りました。
Posted by ブクログ
評価は正確にいうと⭐︎3.5。
学生時代に読んだ『わたしを離さないで』の世界観が好きだったので、あらすじから似たような雰囲気を察知してこちらも読んでみた。
AIロボット視点で語られる美しくて精細な情景描写に対し不穏な気配が根底に漂っていて、そのアンバランスな雰囲気が本当に良かった。
ただ、ディズニー的なファンタジー要素があるとは思ってなくて、そこだけちょっと拍子抜けだったかも。
作中でたびたび登場する用語の意味を調べたときに、検索結果に出てきたAIによる要約で物語の核となる計画のネタバレを喰らってしまったことが本当に悔やまれる。
それさえ無ければもっと衝撃を味わえたかもしれない。
ラストで店長さんと再会して話すシーンは、穏やかさと退廃的な雰囲気が感じられて素敵だった。ぜひとも映像で見てみたい。
「特別な何かはあります。ただ、それはジョジーの中ではなく、ジョジーを愛する人々の中にありました。」
終盤で語られるクララのこの言葉から、私の人生のバイブルである少女漫画『フルーツバスケット』の以下のセリフが思い起こされた。
「例えば人の素敵というものがオニギリの梅ぼしのようなものだとしたら その梅ぼしは背中についているのかもしれません…っ」
一個人を特別なものにする何かはその人自身には見えない(=感じられない)ものでも、その周囲の人にはきちんと見えている(=感じられる)。
人はその人自身では完全な一個人にはなれなくて、周囲と関わり合いを持つことでようやくその存在を完成させることができるのかもしれない。
どんなに完璧なAIでもそこの溝を埋めることはできないのだなとわかって、改めて人間らしさとは何かというものが少しわかった気がする。