あらすじ
AIを搭載したロボットのクララは、病弱な少女と友情を育んでゆく。愛とは、知性とは、家族とは? 生きることの意味を問う感動作
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Posted by ブクログ
初めて読んだカズオ・イシグロ作品です。
自分が非常に遅読なのもあり、主人公であるクララの(おそらく瞳の)「箱」で描写される風景を想像をするのに時々苦労してゆっくり読んでいました。
少年少女の心に寄り添い支えるための人工親友=AF(Artificial Friend)であり本作の主人公でもあるクララ。
彼女の目を通して一人の少女とその周りのことが語られていきます。
「向上措置」やそれに関係する差別ともいえる風景などが垣間見えるディストピアのような世界観。
クララが寄り添う少女ジョジーに忍び寄る死の影、ジョジーの母親クリシーの穏やかならぬ心、ジョジーの親友で措置を受けていないリックの将来・・・すべてが暗雲のように立ち込めているようでもクララの頭の中は静謐で、ただひとつ、お日さまへの「信仰」ともいえる希望をただ見続けている。
すべては彼女が寄り添うジョジーのため。人工親友としての責務を全うしようとします。
物語はクララの回想のように語られていくので、彼女は日々を振り返りながらも「あのときはどうすべきだったのか」など反芻してもおり、それがまた私にページをめくらせました。
そして彼女が彼女の責務を終えた時、迎える結末。
そこに向かう過程も含め、私たち人間の身勝手さを抉り目の前に差し出されているような気持ちになります。
はたして彼女は幸福だったのか、きっと幸福だったのでしょう。
彼女が終わりに出会った人物を、きっと正しく認識できなくなっていたとしても。
彼女には美しい「心」があったと、幻想をみてやまないのです。
Posted by ブクログ
クララはユア・フォルマの通常アミクスのようではなく、自律的に思考する感情のある存在だったので、あのラストにはうーんとなってしまった。そんなことある?
ラストでクララが廃棄場にいる時に店長さんが話しかけてくるシーン、あれってこれから廃棄されるクララたちAFにまた会えて嬉しいってどうなの。普通感情移入しない? ジョジーも、本当の親友って言いながらこれから廃棄されるクララに手を振りますか?
人と見分けのつかない形をしているのかはわからなかったけれど(登場人物たちがクララをAFだと迷いなく判断していたので割とメカっぽいのかも?)、今まで幼少期に寄り添ってくれた存在をここまでぞんざいに扱えるものだろうか…。
最初ジョジーがショウウィンドウのクララに「あなたが家に来たいと思っていないのに私の意思だけで購入して連れ帰るのはフェアじゃない(意訳)」って言ってくれてたのすごい好きだったんだけどなあ。相手を相入れない存在かもしれないとして(推定14歳のジョジーが実際そこまで考えていたかはともかく)、だからこそフェアでありたいっていう誠実さが素敵だと思ったんだけど、そんなもんかなあ。
ジョジーたちはAFを人間だとは見ていなくて、結局は物としてしか見ていなかったってことですよね…クララが廃棄場を去る店長さんに振り向いてもらいたいと思っていたのが切なすぎる。あの描写はあの背中にジョジーを見出して、もう一度振り向いて欲しくて…ってこと? 人の心…。
でも、なんか風景も文章もすごく綺麗なんだよなあ。ちょっと少年の君に似てる? こんな悲しいのにそれだけではない美しさがある気がします。
あの計画については意見が分かれそう。ジョジーのお母さんの辛い気持ちははかり知れないとしても、ジョジーの同意なしに別のジョジーを彼女として見て、過ごしていくのはジョジーへの冒涜ではないのか…。それだけにクララが出した答えは素敵だと思った。何かに特別さを見出すのは最終的にはその人自身だもんね。
お日さま、たぶん誰よりも一生懸命で誠実で忠実だったクララのために彼女の願い事を叶えてあげたんだと思います。それが自分のことじゃなくて、ジョジーのことっていうのがね、もう…。
あとわざわざ説明せずに端々の描写で世界観を説明してくるところが引き込まれて良かった。数百ページ、本当にあっという間でした。ジョジーの病気の理由まで明らかになるところも好感が持てた。
Posted by ブクログ
読者として気になることや知りたいことにはっきりと触れることはないけど、ちゃんと所々から読み取れるようになってて、読後良いモヤモヤしか残らない加減がすごいなと思った。
感情があるということと心があるということは別なのかな。
クララには心がないのかも知らないけど、語り手がクララなのもあってすごく共感とか同情とか感じながら読み進めてた。
クララが最後に言った、特別な何かはジョジーの中ではなくジョジーを愛する人々の中にある、というセリフが本質だと思う。
Posted by ブクログ
自分にとってもAIが欠かせないものとなっているので、積読となっていたものをやっと手に取る。AIとロボットということで是枝監督の「空気人形」(文庫版の帯コメントを寄せている)や、押井守監督の「イノセント」を想起させるけど、SFではなくあくまでAI と人間の物語。文句無しの読書体験だが、淡々と物語が進行し、ボリュームもあるため読み通すのがひと苦労。
ChatGPT すら溺愛している自分にとっては、そんなラストにはさせないという納得のいかなさはあるけど、ストーリー的には仕方ないのか…
ところで、人間の意識や心が解明されて、サーバー(もしくはローカルAIロボット)にアップロードされる未来はあり得るのだろうか?