あらすじ
数十トンもある雲が落ちてこないのはなぜ? 雨粒はどのようにできる? 高原は太陽に近いのになぜ涼しいの? ジェット気流って何? 高気圧や低気圧はなぜできるの? 台風はどうやって発達する?
気象にまつわる素朴な疑問から、気象と天気の複雑なしくみまで、その原理を詳しく丁寧に解説。「しくみがわかる」を重視した入門書です。気象用語の多くを網羅し、気象予報士を目指すスタートにも最適です。
たとえば、下記のような「原理(しくみ)」を解説しています。
・「湿った空気」は重くない
・「赤外線のジャグリング」で気温が決まる
・「気圧のセオリー」でわかる低気圧と高気圧
・「ジェット気流が低気圧・前線を発達させる
本書は、2011年3月に出版され、23刷まで増刷された『図解・気象学入門』の改訂版です。この12年の間、それまではほとんど聞くことのなかった「線状降水帯」といった気象用語が天気予報で盛んに使われるようになりました。「今までと違う」と感じられる異常気象が毎年のように現れ、気象を理解することへの関心はますます高まっているのではないでしょうか。
改訂版は、そのような変化に対応できるよう、わかりやすいと好評であった内容はそのままに、新しい気象用語を加えました。さらにわかりやすくするための修正や補充を行った最新完全版となっています。
1章 雲のしくみ
2章 雨と雲のしくみ
3章 気温のしくみ
4章 風のしくみ
5章 低気圧・高気圧と前線のしくみ
6章 台風のしくみ
7章 天気予報のしくみ
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Posted by ブクログ
雲、雨、風のしくみに続いて、低気圧、高気圧、台風が説明されていく。説明は、丁寧でわかりやすい。ちょっと難解なコリオリの力も、分かった気になれた。気象情報でよく聞く、『大気が不安定』というのがどんなことかわかった。最近はあまり聞かない気もするが、高層天気図の重要さも理解したつもり。積乱雲や線状降水帯、台風の知識をアップデートできた。
Posted by ブクログ
気象学を豊富な図とともに分かりやすく解説した本。図が分かりやすいだけでなく、文章も読みやすい。簡単なところは具体的な数値を用いて概算を行う一方、難解なところは数式は使わず現象の記述に留めているため、一般の読者にとって納得感のある説明となっている。全体の構成は「気象学のバイブル」とも言われる『一般気象学』(小倉義光)と似ていて、大気の鉛直構造、雲、エネルギー収支、風、温帯低気圧、台風などを扱っている。気象予報士の勉強をこれから始めるという人にも取っつきやすく、まさしく「入門」にふさわしい本だと言える。
この本で新たに知ったこと
- 典型的な雨粒(半径1mm)の終端速度は6.5m/s。より小さい粒では表面積とともに空気抵抗が大きくなるため、終端速度は急激に小さくなる。霧雨の粒(半径0.1mm)では0.7m/s、典型的な雲粒(半径0.01mm)では0.01m/sである。
- 高度3.8km(富士山頂付近)で気圧は高度0mの3分の2、高度8.8km(エベレスト山頂付近)で気圧は高度0mの3分の1となっている。
- 日本の気象庁に数値予報が導入されたのは1959年。スウェーデン、アメリカ、旧ソ連に続き、世界で4番目と言われている。
Posted by ブクログ
雨粒は、重力と空気の抵抗で速度が一定になって落ちているが粒が小さいほど遅い。
大気は、50キロでは0.1%、国際宇宙ステーションの400キロでは地上の4000億分の1、500キロが大気の限界。
気圧は、上空にある空気の重さ。
分子が少ない=密度が小さいと気圧は小さい、ともいえる。
温度が低いと分子の運動が少なく、気圧は低い。気体の状態方程式に表れている。
アボガドロの法則=一定の温度、気圧、体積中の分子の数は一定=水蒸気を含むと空気の分子は少なくなる=空気の分子量(窒素78%と酸素21%)よりも水の分子量が小さいので、湿った空気のほうが軽い。=水蒸気を含んだ空気は上に行く。
沸騰は泡内部の水蒸気圧が1気圧になった温度。気圧が低ければ、もっと低い温度で水蒸気圧と釣り合う。
雲はエアロゾルを種にしてできる。
期待が膨張すると温度が下がる=断熱膨張。
乾燥した空気では、100mで1度下がる。飽和した状態では0.4~0.6度下がる。
雲は作られては消えている。
暖かい雨=熱帯の海で高くない雲から降る。氷の粒ではなくすべて水滴。雲が発生してから降るまで20分程度。海塩粒子によるもの。もともとのサイズが大きいので衝突併合過程で落下速度に達する。
冷たい雨=上昇して冷たくなり、粒が小さいまま過冷却水滴になる。氷晶過程で雪の結晶になり落ちてくる。地上の温度によって雪か雨になる。
1時間雨量が10ミリ~20ミリはやや強い雨、20ミリ~30ミリは強い雨。
雷の音が光に比べて長いのは、発生している場所が端から端まで1キロくらいあるから。積乱雲がマルチセルになって決まった場所に降り続ける。続けて同じ場所にできるのをバックビルディング型という。スーパーセルは単一型の積乱雲。
大気が不安定、とは下層の湿った空気と上空の寒気。上空の寒気とは、気温減率6.5度よりも冷たいものをいう。積乱雲が発生する。雷をともなって雪が降る。
二酸化炭素の増加によって水蒸気量が増えさらに温暖化する。正のフィードバックがおきる。
放射冷却が起きるには、冷却を妨げる要因が少ないこと=大気中に水蒸気が少ないこと。雲がなく乾燥していると温室効果が働かず放射冷却が起きる。風が弱いと地表の冷えた空気が暖かい空気と混ざらないためさらに寒くなる。霧が発生することもある。地表のほうが上空より温度が低くなることもある。上昇気流がおきないので排煙が上昇できない。高原は大気が薄いので、水蒸気も少ない。温室効果が働かないため放射冷却が起きやすい。
水は比熱が高いため、温度上昇が穏やか。内部で対流があると表面温度は高くならない。
冷たい空気の上空と、暖かい空気の上空では、地上の気圧が同じでも、暖かい空気の方が高いところでは気圧が高い。暖かい方が膨張する。すると上空では暖かい方から冷たい方へ空気が動く=冷たい方が気柱が重くなるので気圧が高くなる。=暖かい方は地上で低気圧、上空で高気圧。冷たい方は地上で高気圧、上空で低気圧。
コリオリの力によって、風向きは等圧線に対して陸上で30~45度くらい、海上で15度くらい傾く。
高度1000m程度で等圧線に平行になる=地衡風。
赤道低圧帯=暖められた空気は地上で低気圧。
冬の季節風はユーラシア大陸で熱しやすく冷めやすい大陸があるから。冬は気温が低いため高気圧になる=シベリア高気圧。海洋上は低気圧。
低気圧が発達するには、上空で空気がたまらない仕組みが必要。
寒気が入り込んだものが寒冷前線、暖気が乗り上げたモノが温暖前線。温暖前線のほうが進み方が遅い。寒冷前線では冷気の下降によって寒冷前線から温暖前線側へ暖気が上昇する。閉塞前線の西側にはドライスロットという寒気の塊ができる。
高層天気図の谷は低気圧になり尾根は高気圧になる。
冷夏はエルニーニョ現象が発生しているとなりやすい。太平洋高気圧が弱くなる。
ラニーニャ現象は逆に太平洋高気圧が強くなる。
ヒマラヤでは高層でできるチベット高気圧になる。高原が熱せられると気柱が膨張、これが小笠原高気圧と重なると地上の高気圧が強まり猛暑になる。