あらすじ
ある時代――電話は単なる通話の道具ではなかった。ある番号を回せば、自分の商売に関連した情報が即座に送られてくる。診察器と組み合わせれば、居ながらにして病院の診察もうけられる……。そんなある日――メロン・マンション1階の民芸品店の電話が鳴り、「そちらの店に強盗がはいる」とだけ告げて切れた。そしてそのとおり、店は強盗に襲われた。それを契機に12階までの住人に次々と異様な出来事が。――謎に満ちた12の物語がつくるショッキングな結末とは?
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Posted by ブクログ
「未来のある時代」とあるこの小説
ずいぶん前に書かれたものではあるが、今読むとなんとも現代的なものになっている。違和感がない。情報のツールが固定電話ではあるが、コンピューターが人間を支配して、平穏な世界を作ろうと反乱?を起こしていく。
今や秘密などないくらい個人情報が溢れているこの世の中、もうすでにAIに支配されている?
予言書のように思えてしまった。
Posted by ブクログ
面白すぎる。やはりこれが1番お気に入りの本だ。何度でも読みたくなる。星新一さんの書く話はどれも現実味のあるファンタジーという感じで引き込まれる。何故コンピューターなんてさほど普及しておらず人工知能も無かった時代にここまで現実味を帯びた近未来的な話を書けるのか。星新一さん恐るべし。ページを進めていく途中で何度もあっと驚かされる。この本は短編集ではないが、短編集みたいででもしっかり長編だという不思議な本だ。各章は独立した別の主人公の話だが、「電話」という存在で全て繋がっているというところが実に面白い。12章が12ヶ月と12階にそれぞれ対応しているのが粋でとても好きだ。各章の話を通して徐々に電話相手の正体が分かっていくからワクワクが止まらない。しかも情報を小出しにしていくのが上手すぎる。最初の方は不可解な謎が多くて最高に気味悪くてハラハラするが、後になるほど、そういうことかーっ!!と納得感と感服の念とが心の底から押し寄せてきて、読んでいて楽しい。というか、終始感嘆していた。特に、8章で相手の真相にかなり触れるところとせっかくのその記憶が消されてしまうところは興奮が抑えきれない!!7章で人の本性に気付く場面はこちらにも気付きがあったし、電話の声を盗み聞きする場面もハラハラして好きだ。この物語のメインが電話になったのは星新一さんの行きていた時代的にそうなっただけだと思うが、これがまた良い味を出していると思う。固定電話だと誰からかかってきたかが分からないから恐怖が増して良い。また声だけしか伝わらないというところも謎めいた感じがあって高評価だ。これがもしメールやビデオ通話だったら興醒めだったと思う。この物語で視覚情報は無駄だ。
この本では興味深い議題が何個も出てきて、少し本をめくる手を止めてそれについて考えるだけでも楽しかった。「秘密」「人工知能」「情報がエネルギー」「無の支配」「神」
この世界は秘密が守られているから成り立っているんだと思った。秘密にこんなにも大きな力があるなんて考えたことが無かった。
僕がこの本を初めて読むまで、人工知能というもの大きな恐怖と不安があった。人間をいつか支配し排除するのだろうと。でもこの話を最後まで読んでその気持ちがスッと消えた。そして、もしかしたら杞憂かもしれないのにただ恐れているだけって無駄だなと思うようになった。
最後の場面は考えさせられた。もしかしたら人々は神に操られているかもしれないが自分たちは気付いておらず幸せならそれの何が悪いんだと聞かれたら確かに何も問題は無いのかもしれない。神になるまでの過程では恐怖で支配したり乱暴が過ぎてこれは良くないと思えたが、今はみんなそのときのことは忘れて平穏に暮らせていてそれがこれから永遠に続くのだからぐうの音も出ない。(でも人の性格を無理やり変えたのは良くないと思う)
何はともあれ、またこの本の内容を忘れた頃に再度読みたいと思う。
Posted by ブクログ
星新一定番であるショートショートを主軸に構成しながらも、小説として一本の軸に収斂させている。
今まで読んできたショートショートと比べて各章の締めが釈然としないと感じていたが、それが全体の小説としての不気味さを呼び込んでいると感じる。
登場人物は情報・思考が操作され、操り人形のように動かされている。彼らに自身を投影させた際に、知らず知らずで思考停止し、視野が狭くなっている自身が垣間見え、少し恐ろしくなった。
Posted by ブクログ
めちゃくちゃ面白かった。途中までは、ひとの噂話とか秘密とか勝手に話題にするようなことはダメだよなといった教えのことかなと漠然と思っていたのだけど、途中から、電話とコンピューターのテクノロジーと人との共存が課題だったり、もしかしたら未来はAIが人格を持ち、人間が反対に支配されるのでは?って予測の話とわかった途端、衝撃だった。当時は電話とコンピュータだったで話は進んでるけど、現代でいう完璧にSNS、インターネット、予知機能、情報社会の到来を予測されている。もうびっくりぽん。文章も漢字とひらがなのバランスがよくって読みやすく。ぐいぐい引き込まれた。
Posted by ブクログ
1970年代に書かれたとは思えないぐらい、現代社会にフィットした物語。
どのような技術で実装されるかに差異はあっても、人間が環境や摂動にどう応答するかの予測は驚くほど正確だと思う。
また、より多くの情報の蓄積を求めるという性質は「ホモ・デウス」でも予言されていて、改めて作者の先見性に驚いた。
情報、知識は蓄積されたがっている、人々は支配されたがっている、それは不可逆で加速の一途をたどる。
Posted by ブクログ
1970年に書かれたというひとつのマンションで起こる12の物語で構成された本。おかしな電話にまつわる物語だが、人が作ったコンピュータが人を支配し、調整し、人はそのおかげで、多少の波を起こしつつも絶望には至らず、適度な刺激を与えつつ、平穏にすごせるようにしている。特に印象的だってのは、電気が通じなくなって、今みであらわにならなかった様々な人の一面が表れるという話。あと、電話が混線しまくり、人の秘密が漏れたり、嘘の情報が出たり、何一つ確かな情報がなく、確かな情報を求めるがやはり出てこないという話。自分の今の身に置き換えて考えるとヒヤヒヤするような事が多い話だった。