あらすじ
いい詩とは、ひとの心を解き放つ力をそなえているばかりか、生きとし生けるものへのいとおしみの感情をも誘いだしてくれます。詩人である著者が、その心を豊かにしてきた詩の宝箱の中から忘れがたい詩の数々を選びだし、情熱をこめて語ります。ことばの花々にふれてみなさんは、きっと詩の魅力にとらえられるでしょう。
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Posted by ブクログ
好きなバンドのボーカルがオススメしてたから読んだ
以下好きだった詩とか茨木さんの言葉とか
賭け(黒田三郎)
“馬鹿さ加減が ちょうど僕と同じ位で 貧乏でお天気屋で 強情で”
“毒舌を吐き散らす 唇の両側に深いえくぼ”
僕はまるでちがって(黒田三郎)
“ぼくはまるでちがってしまったのだ”
“それでもぼくはまるでちがってしまったのだ”
君はかわいいと(安水稔和)
を紹介したあとの茨木のり子の言葉
↓
言葉のヤツはくるしがって君のからだ中をかけめぐり憤然と死んじまうに違いない
葉月(阪田寛夫)
“おれはほんまにつらい あんまりつらいから 関西線にとびこんで死にたいわ”
“まるでろうやにほうりこまれて 電気ぱちんと消されたみたいや”
“そやけど むかしから 女に二時間待たされたからて 死んだ男がおるやろか それを思うとはずかしい”
練習問題(阪田寛夫)
全文
顔(松下育男)
“これらと 世の中 やってゆく 帰って 泣いた”
見えない季節(牟礼慶子)
“できるなら 日々のくらさを 土の中のくらさに
似せてはいけないでしょうか”
言葉(川崎洋)
全文
ちびへび(工藤直子)
“暖かいのだもの 散歩は したいよ”
てつがくのライオン(工藤直子)
全文
便所掃除(濱口國雄)
全文
住所とギョウザ(岩田宏)
を紹介したあとの茨木のり子の言葉
↓
はるかに心にぐさりと突き刺さる。それは作者が自分の恥の痛覚を隠していないからです。
愛(谷川俊太郎)
“いつまでも そんなにいつまでも むすばれているのだどこまでも”
一生おなじ歌を 歌い続けるのは(岸田衿子)
全文
くらし(石垣りん)
全文
茨木のり子の言葉
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浄化作用(カタルシス)を与えてくれるか、くれないか、そこが芸術か否かの分かれ目なのです。だから音楽でも美術でも演劇でも、私のきめ手はそれしかありません。
読んでよかったなー、と思った本だった
学校で詩を教えてくれるのは素晴らしいことなんだな
Posted by ブクログ
『詩のこころを読む』
茨木のり子さんの選んだ詩と解説&メッセージ。
まず、最初から私の大好きな詩。谷川俊太郎さんの「かなしみ」
学生の頃、「何かとんでもないおとし物」が気になった。歳を重ねた今でもその思いは変わらない。いやより一層大きくなっている。
恋の詩といえば、黒田三郎さんの「僕はまるでちがって」
恋は風景の彩りを変える。
「白い美しい蝶」をもたらした黒田三郎さんの妻はこの詩が公表されてプンプン怒っていたという。自分に対してだけのラブレターであってほしかったのでしょう。
黒田三郎さんの「夕方の三十分」も忘れられない。
子ども達と暗唱した詩の一つ。
父が「自分でしなさい 自分でェ」と言うと
小さなユリが「ヨッパライ グズ ジジイ」とやり返す。
でも最後に訪れるのは「静かで美しい時間」
たまらなくいい!
茨木のり子さんは、法律によって、木挽町、紺屋町などの町名が変えられていったことを嘆いている。
これもとんでものない落とし物のひとつだろうか。
Posted by ブクログ
1979年、著者が53歳くらいの頃に書かれた本書は、一切古さを感じさせない文章で「詩を読む楽しさ」を教えてくれる。
著者がそれまで出会ったお気に入りの詩を選りすぐり、ユーモアを交えながら卓越した考察力で読み解いていく。
「誕生」から「死」までの5段階で流れるように並べられているので、小説のように一気に読み進めてしまうところも魅力だ。
『はじめに』の冒頭3行で、全てが語られている。
「いい詩には、ひとの心を解き放ってくれる力があります。いい詩はまた、生きとし生けるものへの、いとおしみの感情を優しく誘いだしてもくれます。どこの国でも詩は、その国のことばの花々です。」
自分の気持ちを代弁してくれる詩に出会い、心にスーッと入って感じるカタルシスは最高の慰めになる。そして何より優しい気持ちになれるのだ。
あまり詩というものに触れてこなかった自分にとっては目から鱗であった。
自分が53歳になる頃にはお気に入りの詩を並べてみたいと思う。
Posted by ブクログ
「茨木のり子」という著者の名前も、教科書で目にした記憶しかない。それくらい不勉強な私でも、一編一編、著者の視点を通して詩の世界にぐっと近付けてもらった。
自分の気持ちに合う詩、を探すことは、自分自身にとって新しい読書体験になるかも。
印象に残った言葉
・言葉が着陸の瞬間を持っていないものは、詩とはいえない。
重装備でじりじり地を這い、登山するのが散文
地を蹴り宙を飛行するのが詩
・詩人が人々に供給すべきは、感動である。
それは必ずしも深い思想や、明確な世界観や
鋭い社会分析を必要としない。
気になった詩
・I was born 吉野弘
→どこかで読んだことがある気がするが、
いつも最後にドキリとしてしまう
・練習問題 阪田寛夫
→思春期をお洒落に表現している
・くるあさごとに 岸田衿子
→くるくる、、
忙しい毎日、駆けまわる毎日を思ってしまう
・海で 川崎洋
→粋な若者たちの冗談に、心が爽やかになる
・風 石川逸子
→戦争に基づく詩のようだが、
今のSNS社会を風刺しているように感じる
・新しい刃 安西均
→また1つ成長する息子を眩しく見つめる視線に
親近感を覚える
・その夜 石垣りん
→働き続ける女性に病が迫る日があったとしても
「私ひとりの祝祭日」と受け止める強さを持ちたい
・悲しめる友よ 永瀬清子
→古いジェンダー観と切り捨てることもできるが
もし苦しむ友がいれば、この詩をそっと教えてあげたい