あらすじ
歴史小説の巨人・飯嶋和一が描いた、一級の娯楽巨編。
江戸寛永年間、栄華を誇った海外貿易都市・長崎に二人の大馬鹿者が生まれた。「金屋町の放蕩息子」「平戸町の悪童」と並び称されたこの二人こそ、後に史上最大の朱印船貿易家と呼ばれた末次平左衛門と、その親友、内町火消組惣頭・平尾才介だった。代官であった平左衛門の父・末次平蔵の死をきっかけに、新たな内外の脅威が長崎を襲い始める。そのとき、卓越した政治感覚と強靱な正義感を持つかつての「大馬鹿者」二人が立ち上がった。
感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
竹中重義の陰謀から長崎を守った末次平左衛門の話。ルーツの中に隠れキリシタンの家系もいるので興味深く読んだ。ページ数が多くて読むのに1か月以上かかった。
Posted by ブクログ
実権が徳川秀忠から徳川家光に移る過渡期における長崎を舞台にした小説で、鎖国への道を歩んでいく貿易政策の変化と切支丹への取締の様子を描いている。
史実に基づいているのか、末次平蔵の変死とか、内町火消組の組頭・平尾才助の最期とか、いささか勿体ないような退場の模様である。長崎の民町を守る、その一点だけでぶれることなく凛とした末次平左衛門が魅力的だった。
“夢を見ているのか現のことなのかどこか判然としないまま右肩越しに平左衛門が振り返った時、蝶は再び高く上昇し、焼け野原となった町を軽々と飛び越えて見えなくなった。夢のなかに一人だけ置きざりにされた思いばかりが平左衛門の内に残った。”
Posted by ブクログ
先に読んだ『天地明察』のライトな感じにいささか不完全燃焼な感じを覚え、私としては珍しく続けて歴史モノをチョイス。高校日本史Bの教科書に名前が載っていた末次平蔵の息子・平左衛門(二代目末次平蔵)が主人公。
もはや小説なのか歴史書なのか、どこまでがフィクションでどこからが史実なのかわからんほどに書き込まれていて、しかも次々新しい人名が登場するため、一見不親切で難解に見える。けれど、重要な部分は繰り返し筆を費やしているため、いつの間にか気にならなくなってくる。さすが信頼の飯嶋和一クオリティ。
ついつい歴史的考察の深さにばかり目が行ってしまうけど、作者が創作したエピソードもすごく面白い。了介のもとに持ち込まれた連続失踪事件とか、真三郎の作る童の銅像の話とか。
非常に魅力的な人物が二人も死んでしまうので、そのたびに口が開いてしまった。そのうち後者のエピソードが、さほど本筋と絡んでこないのが少し残念ではあったが、竹中重義の悪政を描出するために彼は犠牲に供されたということなのだろう。アーメン。。。
この作品と『出星前夜』が繋がってるらしいので、そっちもぜひ読みたいです。
Posted by ブクログ
才介とともに神学校のいんちき牧師に「オイタ」をする若き日の「やんちゃな」平左衛門。そのころと変わらぬ無骨な正義感で人種に関係なく長崎に住むひとの生活を第一と考ええ、グローバルな地政学的観点で行動する外交・政治感覚を持つ長崎奉行としての平左衛門(二代目平蔵)。この主人公を軸に様々な人物が登場し絡み合う。この登場人物の多さを壮大とみるか、苦痛とみるかは意見の分かれるところか。自分にとっては少し苦痛だった。外堀を埋めながら竹中重蔵を追い詰めてゆくものの成就までいかず歯がゆさが残った。