あらすじ
有馬喜兵衛、吉岡一門、宍戸某、そして佐々木小次郎。さらには――。
最後の難敵との死闘を終えた宮本武蔵は吐き捨てた。今日まで剣に生きてきて、兵法というほどのものではないな。ただのチャンバラにすぎん……。
直木賞作家の手で鮮やかに蘇る、数多の強敵との名勝負! 「剣聖」とも称される二刀流の達人が、激闘の果てに辿り着いた境地とは?
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Posted by ブクログ
宮本武蔵を描いた歴史小説。
佐藤賢一さんらしく、武蔵視点、独白での構成は面白いです。
さらに、各章が決闘をメインに持ってきているのですが、相手の技を破る思考展開が目新しくて面白くて、読みなれた武蔵ものでも楽しめました。
それにしても、対策を考えるため、危機一髪になった時に気を当てるのはずるいです。
新しい「ムサシ」像…。
2023年8月読了。
中世フランスを舞台とした小説や、突然「アル・カポネ」や「モハメド・アリ」の人生を冴えた筆致で描いてきた著者ですから、それほど驚きは無かったんですが、今「宮本武蔵」をやるのか…、と虚を突かれた思いでした。
数多ある剣豪小説で散々書かれてきた〝武蔵〟を、「剣聖」「日本一の剣客」と云うより、その場,その場で必死に相手の出方を窺い、物理的な“理”で勝ち抜く方法を考え出す、極めて現代的な思考をする人物像に成っています。
有名な「吉岡一門」との決闘も、むかし“下り松”を見たことがあるので、まるで映画を見ている気分で圧倒されました。
やがて、戦国乱世も終焉し、「豪快な武芸」がどんどん疎まれていくのを肌感覚で、自分も共にその場に立ち会っている気分に成りました。船島での決闘は、ほぼ歴史史料に即しているようなので、立ち会い後のドタバタ劇は、正直苦いものが有りました。“果たし合い”など見世物同然で、もう“剣豪”など要らない時代に成っていっていたのですね…。「所詮はチャンバラ」と云う言葉が、この小説を通して何だか哀れなものに見えてきて、切なかったです。
最後の決着を見せないのは、続編を考えているのでしょうか?何となく結末が見えているので、結果を知りたいような知りたくないような、そんな複雑な気持ちで読み終えました。