あらすじ
小学校で独りぼっちの「私」の居場所は、母が勤めるマッサージ店だった。「ここ、あるんでしょ?」「ありますよ」電気を消し、隣のベッドで客の探し物を手伝う母。カーテン越しに揺れる影は、いつも苦し気だ。母は、ご飯を作る手で、帰り道につなぐ手で、私の体を洗う手で、何か変なことをしている――。少女の純然たる目で母の秘密と世界の歪(いびつ)を鋭く見つめる、鮮烈な中編。芥川賞候補作品。(解説・又吉直樹)
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Posted by ブクログ
小学生の視点で、分かることと分からないことが明確に書き分けられているのがすごいなぁと思った。
お母さんがマッサージ店で働いている間、隣のベッドで待つ主人公。「言っていい?」とか「こわれたところを直す」とか、主人公が性的な施術を分かりきれてないところも、行為の生々しさを際立たせていた。
「変タイマッサージ店」とか杏仁豆腐にハムスターのウンコ乗せられたりとか、あからさまにいじめを受けているのに、傷ついているように見えなかった。ハムスターが死んだときも。お客さんからお母さんに向けられる、蔑む視線以上に禍々しいものはないのかも。
描写を小学生までにとどめることで、突き放しも引き寄せもしてもらえない痒さが、純文学って感じした。
世の中にあるエンタメ、すべて人間関係がテーマになってると思うと不思議だな。その視点で読み解くと、それぞれの癖が見えて面白そう。
Posted by ブクログ
何度か親のそういった場面に遭遇したことがありますが、子どもの頃の親の性的な行為って強烈に残る。
子どもが大人になって「あれはこういうことだったのか」が繋がった時のなんとも言えない気持ち悪さ。
性的に大人になって数年経つので忘れてましたが、数年ぶりに思い出させられた作品。
しかも主人公の場合、親の相手は親が愛した人でも何でもなく、自分の担任や政治家、知らない汚い大人たち。これが数年後に理解できるようになってしまったとき、主人公は親のことをどう思うのだろうか。
気持ち悪いと思うならまだ真っ直ぐ生きれてると思うけど、
「うちの親おくれてるから仕方ない」と納得してしまうことが、一番最悪の結果。
けど大きくなるにつれて、親がおくれてること(とまでいわなくても周りと比べて変なこと)、気づいちゃうもんね。おくれてるからって世界に蔑まれていい理由には全くならないのに、この世界に生きてると、そんなクソみたいな理不尽に納得してないと、自分の首を絞めることがあるのが現実。
きっと主人公はこの体験が人生の大きな壁になることでしょう。貞操観念も狂っちゃうんじゃないかな、とか考えたら苦しくて、他の方のクチコミにもありましたが「文学的すぎて子どもを装った大人が書いてる感」を多少感じつつ、気付いたら感情移入?してた事に、読み終えてからの胸糞感で気付きました。
又吉さんの解説で納得した部分もあり、私にとっては又吉さんの解説ありきでこの一冊を自分の中に落とし込めたと思ってますが、主人公の体験を「この時期の大切な経験」だとは思えなかったです。これからこの時期を迎える子どもたちにはできれば誰一人こんな経験せずに生きてほしい。
Posted by ブクログ
簡単に言うと親ガチャに失敗した少女の内面の成長の物語。
幼い少女の目を通して描かれる社会があまりに残酷で、何度も目を背けたくなった。
影のない父親を含めて男たちの人間性がどれもこれも悍ましいのだが、現実世界にも確実にこの手の男は存在するだろうという嫌な説得力がある。
母親の行動や描写に少し引っかかったが、おくれてるという表現で腑に落とされた。
この母の人生も読んでみたい。
Posted by ブクログ
所々のひらがな・子供なりの変換能力があり、子供視点になりやすかった。
小説と映画で、小説にしか出せないものってなんだろうと考えていたが、まさにこの作品だった。
誰も名前が明かされないまま話が進む。
(選挙ポスターのお父さんを除く
異様なまでに会話が少なく、主人公の心情がベース。
拙い表現で、よく汚れを思い浮かべる。