あらすじ
作家の郷里・紀州の小都市を舞台に、のがれがたい血のしがらみに閉じ込められた青年の、癒せぬ渇望、愛と憎しみ、生命の模索を鮮烈な文体でえがいて圧倒的な評価を得た芥川賞受賞作。この小説は、著者独自の哀切な主題旋律を初めて文学として定着させた記念碑的作品として、広く感動を呼んだ。『枯木灘』『地の果て 至上の時』と展開して中上世界の最高峰をなす三部作の第一章に当たる。表題作の他、初期の力作「黄金比の朝」「火宅」「浄徳寺ツアー」の三篇を収める。
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Posted by ブクログ
めっちゃ良かった!!
ずっと積読していて、今回が中上健次の作品読むの初めてだが、魅力に気づけた。
舞台は和歌山県南部、田舎の貧困が蔓延っている狭い集落が主な舞台。どうやら、いわゆる被差別部落を描いているそうなのだが、あまり部落の歴史に対して知識がなかったのでわからなかった。戦後の混乱期のことも結構出てくるので、そういう時代だったのかなあとか思ってしまった。まあ中上自身も、部落というものを解放しよう!みたいな社会的意義を小説内で表現したいのではないく、その部落で起きる物語や人間ドラマを描きたいのだと感じるが。
そんな集落では、戦後の混乱や貧困のせいで人間関係がドロドロだ。腹違いの兄弟がいるのは当たり前、父親が愛人を作ってほっぽり出したり、人が傷つくのをなんとも思ってなさそうな性格だったり、主人公も荒っぽく、現代の観点から見ると妻とかをボコボコにしてるシーンとかあって引いてしまう。
主人公は、そんな場所に生まれ、生まれてしまったがゆえにこの家族内の因縁や、ちゃんと愛してもらえなかったことを抱えて生きている。しかも、父親が全く尊敬できない人間なのに、自分も自分の母親のことも捨てたのに、そんな尊敬できない父親の血を引いておりカッとなると暴力的になってしまったりして自己嫌悪に陥ることなどが、この短編集の中で繰り返し描かれる。
この作品の登場人物、特に主人公は強く愛を求めている。誰かから本当に必要にされたかったということ、けどそれを過去の時点では、充分に満たしてくれる人がいなかったということ。それをそれぞれ抱えて生きており、だから衝突したり、暴力沙汰が起きたり、他人と完全に関係を回復できなかったりする。なんかそんな人間関係の生々しさと苦しさが、特に『岬』はすごい濃度で描かれており、圧倒された。
Posted by ブクログ
秋幸が最後妹とまぐわうことで自分の血を凌辱するという展開が予想外だった。それによって自分の出自を受け入れて、消極的な生から積極的な生に転換するところが臨場感にあふれていて、これが人間っていう感じがした。
Posted by ブクログ
かなり力強い純文学。個人的にはかなり好みだった。
とにかく一つ一つの話の力強さが凄い。鬱憤が溜まって仕方なのない人達の苦悩が、切れ味そこそこのナタで全力で振り下ろされているようだった。話は辛いものが多いが、鈍くもなく、鋭くもない。そこそこの切れ味。そこがとても良かった。
文学としてもかなり読み応えのあるいい作品だった。北方謙三が中上健次を読んで純文学を諦めた理由もわかる。文才が凄い。登場人物が少しごっちゃになってしまう時もあるが、一度で理解しきれずとも、何度読んでも面白そうなのでオススメです。誰が読んでも楽しめると思います。
Posted by ブクログ
筆者の生い立ちから作り出された家族関係が複雑に描かれている作品でした。ラストに向かうにつれて姉がおかしくなっていってどう終わるのかと思えば、自分の血の繋がり全てを陵辱するために妹と交わるのは衝撃でした。
Posted by ブクログ
表題作のみ読んだ。
田中慎也「共喰い」を想起した。
平易な単語ばかりで、句読点が多く軽快な文体で読みやすい。しかし、内容は極めて難解に読んだ。
噛み砕ききれず、だがなにか心を掴まれたような気がして、秋幸になにか自分と似たところを感じた気がした。
人の解説を読んでようやく少しずつ掴めてきた気がする。他人にがんじがらめになっているところが、秋幸に共感したんだと思う。
紀州サーガをまた読もうと思う。
262 彼は一人になりたかった。息がつまる、と思った。母からも、姉からも、遠いところへ行きたいと思った。あの朝、首をつって死んでいた兄からも自由でありたかった。