あらすじ
嬉しいのに涙が出て、傷ついても信じてみたい。自分にそんな感情があることを、初めて知って驚いた。こんなに大事な想い出を、人は忘れてしまうもの? ううん、忘れ去るなんて、きっとしない。見えなくて触れないからこそ大事だって、分かってる。人間って侮れないんだよ――。きらきらと胸を打つ、大人のための長編小説。
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Posted by ブクログ
鯨崎町の子どもたちにだけ知られていることだが、ゴツゴツとした崖を降りていった所に、そのお店はある。
「おもいで質屋」
丸い文字で書かれた木目調の看板が掲げられたカシスムースのような見た目の可愛い小屋。
そこに住む魔法使いに想い出を預けてお金と交換する。20歳になるまでに取りに来なければ、想い出はヒトデになって海に沈んでしまう。
遥斗はお母さんに怒られたり嫌な想い出を毎日毎日預け、里華は一切想い出を預けずそれでも毎日のように質屋を訪れる。
大人になる前に掴むことができる柔らかな想い出。
シンプルなファンタジー。
魔法使いと男の子と女の子。それぞれがそれぞれの時で感じる思いを繊細に描いたストーリー。
20歳になると「おもいで質屋」のことを忘れてしまうという、子どものためだけの物語が純粋すぎてあまりにも美しい。
10代の頃の想い出って、その時には預けてしまっても良いかなと思うんだけど、大人になるとその頃の想い出はあまりにもキラキラしていて、こういう話を読むと羨ましくなってしまう。
年明けから良い本を読みました。
Posted by ブクログ
想い出を質にいれる。
その子が20才になるまで、魔法使いが預かってる。
20才になると その記憶すらなくなって。
はるとくんのカバンが切なかったな。
あとは リカちゃんが20才になったとき。
もう会えなくても それでも想い出はきちんとあって。
ある意味、特別だなと思ったり。
海の底のヒトデ。
静かに静かに とても穏やかなイメージ。
Posted by ブクログ
おもいで質屋。
海の近くにひっそりとあるこのお店は子どもにしか見えない。
ここは質として想い出を差し出し、20歳の誕生日を迎えるまでにお金を返さないと一生返してもらえなくなってしまう。
差し出された想い出に魔法使いが値段をつけ、子どもたちにお金を渡す。
お小遣いが欲しい子どもたちが今日も想い出を預けに来る。
以下ネタバレ。
主人公の女の子が魔法使いと最初に出会うのは新聞部の取材。
彼女は最後まで想い出を預けるということに反対します。
想い出を預けることはなくても、魔法使いとの関係は20歳まで続きます。
彼女の時間とともに物語は流れていく感じなのかな。
母親との想い出ばかり預ける男の子。
おばあちゃんを轢いた犯人を捜そうと魔法使いに頼む男の子。
いじめられている想い出(想い出とはいわないか)を預ける女の子。
みんなそれぞれ思いを抱えて想い出を預けに来る。
10代の思い出そのものが結晶化した物語。
と帯に石田衣良さんのことばがありましたが
この物語は10代のころの一生懸命な友情や恋愛を一気に思い出させてくれました。
雪成(主人公の彼氏)のことばはなんて身勝手なんだと思ったけど
魔法使いがいった
「想い出にならない人。それが運命の人よ」
ということばにすごく共感しました。
そんな人に出会えたかな……