あらすじ
アルゼンチン発 科学×本能の融合
教育・芸術の創造性にも通ずる「無意識」をトレーニングする新たなパラダイム
神経科学の実用→瞬間的な認知の獲得→プレー実行スピードの加速
アーセン・ヴェンゲルは「サッカーの試合を変革する次のカギは、神経科学だ。次に学ぶべきステップは、脳のスピードなのだ」と言った。なぜなら、現代サッカーは肉体的、戦術的ともにもはや極限のレベルに到達し、リオネル・メッシが1秒でプレーを解決するように、今や無意識下でのプレーを覚醒させるフェーズを迎えているからだ。2022年のカタール・ワールドカップを制したアルゼンチン生まれの「ヴィセラルトレーニング」は、神経科学を実用的に用い、無意識をトレーニングすることで、瞬間的な認知を可能にし、プレー実行スピードを加速させる。ドリルトレーニング、アナリティックトレーニングといった伝統のトレーニングを覆し、エコロジカルアプローチ、ディファレンシャルラーニングのさらに上を行く、「本能、直感を刺激する」先鋭のトレーニング理論がいよいよベールを脱ぐ。
【構成】
監修者まえがき
第1章 序論
第2章 拡張されるトレーニング
1 拡張されるトレーニング
2 拡張される専門性
3 ヴェーバー・フェヒナーの法則とヴィセラルトレーニング
4 ヴィセラルトレーニングにおけるマルチタスク
5 3本の柱(専門性・移行・モチベーション)
6 時間軸における緊急性
7 なぜヴィセラルトレーニングなのか?
第3章 複雑系
1 ヴィセラルトレーニングと複雑系のパラダイム
2 偽の複雑系と偽のエコロジー
3 サッカーにおけるTPNとDMN
4 「高速認知1」対「高速認知2」
5 TPN・DMNネットワークの戦術的・戦略的な価値
6 計画と直感
7 精神速度の遺伝学と身体速度の遺伝学
8 コオーディネーション能力のキャパシティ
9 無意識の重要性
10 マルセロ・ビエルサと無意識
第4章 パラダイムチェンジ
1 10個のパラダイムチェンジ
2 エコロジカルパラダイム
3 変動性
4 自己組織化と自己創出
5 自己組織化についての学び
6 自発性の調整
7 カオスの探求
第5章 神経科学
1 奇をてらわない神経科学の適用
2 サッカーと神経科学の融合
3 視床腹内側部と意思決定
4 ドーパミンと「新規性」
5 大脳基底核と行動の調節
6 小脳と予測
7 前帯状皮質と忍耐力
8 扁桃体と脅威の検出
9 海馬と欺瞞
第6章 ヴィセラルトレーニングの導入
1 ヴィセラルトレーニングとは何か?
2 ヴィセラルトレーニングとメタ認知プロセス
3 急に出現する「柔軟な行動」
4 認知的葛藤
5 意識よりも優れた無意識
6 即興性
7 非線形教育学
8 心の理論と相互作用主義
9 統計的学習
10 ヴィセラルトレーニングと暗黙的学習
11 暗黙的学習の強み
第7章 ヴィセラルトレーニングにおけるその他の関連項目
1 ヴィセラルトレーニングとディファレンシャルラーニング
2 進化を助ける手段としての「失敗」
3 牡蠣なのか? それとも真珠なのか?
4 サッカーと人生における失敗の価値
5 失敗・因果推論・フィードバック
6 なぜ失敗を避けるのだろうか?
7 生存トレーニングとしてのヴィセラルトレーニング
8 結論
監修者あとがき
訳者あとがき
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Posted by ブクログ
聞き慣れない言葉が多く難解で何度も挫折しかけた。
しかし、それと同じくらい読み進めたページから戻り、読み返し、理解したいと自然に思えた。
サッカーだけではなく、人生における様々な場面に応用できる考え方だと思う。
ヴィセラルトレーニングは「本能、直感を刺激する」トレーニング理論である。
また、神経科学を実用的に用い、無意識をTRすることで瞬間的な認知を可能にし、プレー実行スピードを加速させる。
トレーニングは行われるものだが、試合は感じるもの。
ヴィセラルトレーニングの目的は、機械のように選手を自動的に動かすようにすることではなく、柔軟な自動化である。
p68
難易度の高いフレンドリーマッチが1つの優れた手法
p218
賢い指導者や賢い選手は、絶対的に試合をコントロールすることが不可能なことを知っている。
確実性は人生の本質ではなく、明らかなサッカーの本質でもない。
サッカー選手が不安定な環境でプレーすればするほど、それらの不安定な環境が試合に現れたとき、彼らは影響を受けなくなる。
「真の教師は、私たちを自分自身に押し戻す。教師のすべての努力は、私たちを独立させることを目的としている。(中略)しかし、普通の人間は自由になりたくない。彼は依存したいと思っている。他の誰かに、導いてもらいたいと思っている。なぜか?そうすれば、すべての責任をほかの誰かに負わせられるからだ。しかし、他人の肩に責任を負わせるほど、頭が良くなる可能性は低くなる。知恵を生み出すのは責任であり、責任への挑戦なのだ。」
p236
ヴィセラルトレーニングの核は、挑戦、困難、斬新
p263
急に出現する「柔軟な行動」
「何を描いているのかわからなくなって初めて、画家は良いものを生み出す」
エドガール・ドガ(フランスの画家)
サッカーにおける創造性の概念がテクニックのある選手に限定されすぎている。
実際には、革新的な解決策を提供する能力こそ創造性だ。
「セレンディピティ(幸運な発見)」は、固定観念や厳格な心の遺産ではない。それらの心は、従来の解決策しか受け入れない
p363
スペインの心理学者で、作家として児童向けの絵本を出しているベゴーニャ•イバローラ
「認知と感情は、コインの裏表に似ている。それは切り離せるものではない」
Posted by ブクログ
自分の知識量の低さもあり、難解な箇所も多かった。しかし、選手に教えるのではなく、選手が多くの失敗を通して解決策を模索していけるようにアプローチしていく手法や、様々な経験を練習を通して積んでいくことであらゆるシチュエーションに強くしていくなど指導者としてたくさんの気づきがあった。
Posted by ブクログ
精神的な強さは緊急事態を経験する事と注意力によって育まれる。
同じトレーニングを続けるとパフォーマンスは下がる。マルチタスクが日常的になればパフォーマンスは向上する。
マルチタスクによってタスクの優先度に応じてリソースを柔軟に割り当てなければならなくなるので賢く判断する必要がある。
ジェットコースターに乗っているように複数の刺激を与え続ける。
それぞれが矛盾する刺激を与える事で認知的葛藤が生じ、その状況下でスピードを落とさない事が求められる事で効果的なトレーニングとなる。
異文化適応の探求は個人が成長する道を開く。慣れ親しんだものを捨てる事で自分自身を含めた人間の状態をより包括的に理解しようとする。
選手が緊張している時や重要な試合の前は選手に伝える情報はできるだけ少なくする。
自チームがフロー状態にない時か、相手チームがフロー状態にある時は何度も介入する。
自チームがフロー状態にあるか、相手異チームがフロー状態にない時は介入せずに継続させる。
自動化されていた機能が禁止される状況を作り出す事。パターンの変更を強いる。
トレーニング方法について
安定から不安定へ
予測可能から予測不可能へ
減らすから増やすへ
執行的から知覚的へ
事前に組織化されたものから自己組織化を促すものへ
不変から変化へ
秩序から混沌へ
機械的から自然発生的へ
認知科学では、目新しさは注意、感情、記憶、行動の刺激を与えるものとして認識されている。
年齢を重ねてエネルギーが低下するにつれて、物事をより予測可能にしようとする衝動があるが、脳のために重要なことは常に斬新な状況に置き、斬新な挑戦を与える事。
ストレス過多の状況に対処するトレーニングをする事で、そのストレスとより調和しながら自然な方法で対処できるようにする。
何を描いているのかわからなくなって初めて画家は良いものを生み出す。
音楽家の脳活動を観察すると、即興演奏中に得られた脳波信号は構造化された演奏中に得られた信号よりも複雑だった。精神状態の混乱度が高い方が創造的なフロー状態を促進する。
成功するために直面する必要があるのは逆境。
トレーニングの目標はチームが精度を維持できる速度を上げる事。
脳に常に挑戦し、その可塑性を活用する事で新しい繋がりが生まれ、驚くべき結果が得られる。
以前は興奮をもたらした体験がもはや興奮をもたらさなくなる事をヘドニック適応という。
失敗するリスクを冒すからこそ成功を満喫できる。
パス成功率の高い選手はボールは奪われないが、味方にとって完璧なタイミングでボールを供給する事も少ない。