あらすじ
◆全世界で読まれている「投資のバイブル」
1973年の初版以来、全米累計200万部を超え、「投資の名著」として絶賛されるベスト&ロングセラー、A Random Walk Down Wall Streetの最新版。本書の主張は「インデックスファンドへの投資がベスト」というシンプルなものだが、類書と異なる点は、なぜ他の投資方法がインデックス投資に比べて劣っているのかを、データを示してしっかり論じているところだ。過去のデータを鑑み、アクティブファンドの長期リターンが市場平均を下回ることを証明し、「猿がダーツで選んだポートフォリオを運用するのと等しい」とこき下ろすあたりは、読んでいて痛快かつ明快である。
硬派な内容でありながら、数式はほとんどなく、グラフや表を多用しており、初心者にも理解しやすくなっている。間抜けなテクニカル分析手法やチューリップからITに至るバブルの話など、読み物としても面白く読める。
◆改訂版の特徴
原著第13版は初版から50周年の記念版。著者のマルキール氏はインフレは当面続くとみているが、その中でもこれまで示してきたインデックスファンド投資が最強という論を引き続き展開する。
新たな内容としては暗号通貨、NFT、ミーム株(オンラインコミュニティで人気になり、一時的に高値がつく株)について触れるが、これらも最終的には有効ではなく、これまでの手法の良さをさらに強調する材料となるだけである。
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Posted by ブクログ
ランダム・ウォーク理論
株価の動きは予測不能であり、過去の価格変動から将来の値動きを正確に予測することはできない。
テクニカル分析(チャート分析)やファンダメンタル分析(企業業績の分析)は、長期的に市場平均を上回る成果を出すのが難しい。
市場の効率性
「効率的市場仮説」によれば、市場にはすでにあらゆる情報が織り込まれており、個人投資家が優位に立つのは難しい。
短期的な売買を繰り返すよりも、インデックス投資を行い、長期で保有する方が有利。
バブルと市場の非効率性
市場は完璧ではなく、バブルや過大評価される銘柄も存在する。
しかし、これを見極めて利益を得るのは極めて困難。
推奨される投資戦略
低コストのインデックスファンドやETFに分散投資し、長期的に資産を成長させる。
リスク許容度に応じてポートフォリオを組み、資産配分を定期的に見直す。
感想
本書は、株式投資の基本的な考え方を学ぶのに最適な一冊でした。特に、「市場は効率的であり、個人が市場を出し抜くのは難しい」という点が強調されており、短期売買に頼るのではなく、長期的に資産を増やすための戦略を考える重要性を再認識しました。
また、「バブルは必ず起こるが、それを正確に予測して利益を得るのは至難の業」という指摘には納得させられました。歴史上のバブル(ITバブルやリーマン・ショックなど)を振り返ると、市場の非効率性は確かに存在するものの、それを利用して安定的に利益を得るのは簡単ではないことがよくわかります。
個別株の売買で一攫千金を狙うのではなく、インデックスファンドを活用し、長期的な視点で投資を続けることが成功への近道であることを改めて学べる本でした。株式投資に興味がある人、特にこれから投資を始めようとする人には、ぜひ一度読んでほしい一冊です。
インデックス投資のバイブル
読み終わりましたのでレビューを書きます。
インデックス投資の有効性を様々な戦略と比較しながら書いていた作品でした。
中盤からは専門用語なども出てくるので難しく感じますが、皮肉の効いた文章のおかげで飽きずに読んでいくことができます。
これから投資を始めたい、もしくは始めてみたけど有効な方法が分からない、といった方にはうってつけの一冊ではないかな、と思います。
長く専門用語も出てくるので決して簡単に読める訳ではありませんが、知らない事を調べながらでも読む価値があると思います。
逆に言えばこの本で知らない事を見聞きしたときに調べるくらいでなければ海千山千の株式市場で利益を出すことなど望めないのかな、という厳しさを感じるものでもありました。
Posted by ブクログ
投資本の「古典」に立ち返る意義とは?
株式投資に関する書籍は星の数ほど存在するが、その中で半世紀以上にわたって読み継がれてきた『ウォール街のランダム・ウォーカー』はまさに「古典」と呼ぶにふさわしい存在である。著者であるバートン・マルキールは、米国プリンストン大学の名誉教授であり、自身も投資実務に関わってきた人物だ。その理論と実証のバランスが取れた語り口は、初心者から経験者まで幅広い層に響く内容である。
2023年に邦訳された第13版では、近年の暗号資産ブームやミーム株(GameStopなど)に対する考察も盛り込まれており、常に時代の最前線を意識したアップデートがなされている。単なる古典の焼き直しではなく、現代投資家にも強い示唆を与えてくれる一冊である。
ランダムウォーク理論とは何か?
本書の根幹をなす理論が、タイトルにもある「ランダムウォーク理論」である。これは株価の動きが短期的には予測不能であり、過去の値動きから将来の値動きを予測することができない、という考え方に基づく。
この理論は「効率的市場仮説」とも深く関係している。つまり、株価にはすでにすべての公開情報が織り込まれており、個人投資家やファンドマネージャーが市場を出し抜くことは難しいとする立場である。
この理論に立てば、テクニカル分析やファンダメンタル分析によって「割安株」を探そうとする行為そのものが否定されるようにも思える。しかしマルキールは一貫して「完全な効率性」を唱えているわけではない。あくまで平均的には市場に勝つのは困難であり、長期・分散・低コストのインデックス投資こそが合理的だと主張する。
投資家心理とバブルのメカニズム
本書の中盤では、過去の金融バブルを取り上げながら、人間の非合理な行動がいかに市場に影響を与えてきたかを示している。チューリップバブルからITバブル、そしてサブプライムローン問題まで、歴史は繰り返す。
これらのバブルに共通するのは、「今回は違う(This time is different)」という心理である。マルキールは繰り返し、この言葉に警鐘を鳴らしている。どれだけテクノロジーが進化しても、投資家の心理は数百年前から変わっていない。人間の欲望と恐怖が交錯する限り、バブルは形を変えて現れるのである。
この視点は、2021年以降のミーム株現象や、ビットコインをはじめとする暗号資産の急騰・急落を理解する上でも重要である。マルキールは、こうした「ノイズ」に振り回されず、愚直に長期投資を続けることの大切さを訴えている。
アクティブ運用 vs インデックス投資
『ウォール街のランダム・ウォーカー』が世に出て以来、最も議論を呼んだのがこの対立構造である。アクティブ運用は、個別銘柄やセクターの選定により、市場平均を上回るリターンを目指す。一方でインデックス投資は、S&P500やTOPIXといった市場平均に連動することを目指す、いわば「凡庸の美学」である。
マルキールは、豊富なデータをもとに「アクティブファンドの大多数は長期的に市場平均を下回る」と結論づける。手数料、売買コスト、税金といった“目に見えにくいコスト”が、アクティブ投資のリターンを蝕んでいるという指摘は、特に日本の投資家にも深く刺さるであろう。
実際に日本においても、インデックス投資の優位性は徐々に浸透してきている。「eMAXIS Slim」シリーズや「SBI・Vシリーズ」など、低コストな投資信託が人気を集めているのも、本書の主張が支持されている証左といえる。
FIRE志向者にとっての教訓
FIRE(Financial Independence, Retire Early)を目指す層にとって、本書は一種の“投資バイブル”である。定年を待たずに経済的自由を獲得するには、安定した運用戦略が不可欠である。
ランダムウォーク理論に従えば、投資で一発逆転を狙うよりも、時間を味方につけて複利の力を享受する方が現実的である。マルキールは「投資に必要な最大の資産は“時間”である」と説いており、この言葉はFIRE志向者にとって重みがある。
また本書は「市場に居続けること」の重要性も強調する。相場が大きく下落したときに退場してしまえば、回復時のリターンを得ることができない。精神的なブレを抑え、投資方針を堅持するための“教養”として、この本は大きな役割を果たすだろう。
まとめ
『ウォール街のランダム・ウォーカー<原著第13版>』は、時代を超えて読み継がれる名著である。ランダムウォーク理論という堅固な理論的土台の上に、投資家心理、市場の非効率性、アクティブ運用の限界、そしてインデックス投資の有効性といったテーマが、実証とストーリーテリングの双方で語られている。
特にFIREを目指す読者にとっては、長期・分散・低コストという基本に立ち返る契機となり得る一冊である。単なる知識としてではなく、「なぜこの投資法が有効なのか」を腹落ちさせることができれば、本書はあなたの資産形成の“羅針盤”となるだろう。
Posted by ブクログ
ベストセラーということで読み進めたが、前半のバブルの歴史等に関しては興味として勉強になる部分も多かった。しかし、中盤で多くの数字や変数などが出てきた際に、少々ついていけなくなり読みスピードもわかりやすく落ちた。もちろん、この本が50年に渡り13版が出ている事実からも名著であることは間違いない。そのため、もっと株式投資についての前提知識を持った上で読み直したいと感じた。
結論としてはインデックスが正義ということ。他の株式などにも手を出す場合には、それについてのアドバイスも載っていて、その多くをラインマークしたので確認したい。
抑えておくべきは、短期でお金持ちになることは目指さないこと。