あらすじ
「私はただ、ずっと彼のそばにはりついていたいのだ」――OLのテルコはマモちゃんに出会って恋に落ちた。彼から電話があれば仕事中でも携帯で長話、食事に誘われればさっさと退社。すべてがマモちゃん最優先で、会社もクビになる寸前。だが、彼はテルコのことが好きじゃないのだ。テルコの片思いは更にエスカレートしていき……。直木賞作家が濃密な筆致で綴る、〈全力疾走〉片思い小説!
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面白い!!!
報われない恋をしたことがある人なら共感できるところがたくさんあって、でも客観的に見るとどうしてそうなるの、、、?!って思うところがあり2つの感情を楽しめる面白いストーリーでした!どうかテルコちゃんには幸せになってほしいけどやっぱり彼を選んじゃうだろうな、、、。
良かった
すごく続きがあるのではと思ってしまった。と言うか、の先テルちゃんが幸せになる気がして、テルちゃんがすごく強くて良かったと思える作品。途中までなんだこれ、と思いながら読んでいたけど、流石角田光代。言葉の節々に自分の人生と重なるところがある。
Posted by ブクログ
主人公にまったく感情移入できなかったけど面白かった。好きな人のために仕事に支障をきたすのやばいけど、主人公はそんな自分を客観的に見れているからアホじゃない。それなのに片思いの相手に会うと極端な行動をとってしまうのはまさに恋は盲目って感じ。普通は脈なしだと判断したら身を引くんだろうけど主人公にはその選択肢がない。ラストで彼女が選んだ道は狂気を感じて別の生き物を見ている気分になった。
マモちゃんのどこがいいのか分からなかったけど、「プラスの部分を好きになったら嫌いになるのは簡単だ(要約)」という文章で腑に落ちた気がした。あのシーンが1番印象的だった。
Posted by ブクログ
友達である葉子には猛反対されてもより燃え上がる恋。
恋にひたむきすぎるテルコ。それは、まもちゃん(想い人)を「好き」、自分含めたその他すべてを「どうでもいい」に容赦なく分類するほどの徹底ぷり。仕事にも職場での人間関係にもがたつきが生じるほどに。
でも、ここで面白いのは、両想いとなり恋人へと関係性が昇格する、という乙女めいた盲信はせず、自分自身を冷静に、時に卑屈に俯瞰しながら恋愛に狂っているところだ。
「マモちゃんの行動パターンはこの5ヶ月で完璧に把握した。三日、乃至四日会わずにいると、私に会いたくてたまらなくなるということでは、どうやらないらしいと近頃私は気づきつつある。単純に、ごはんをいっしょに食べる友人のローテーションなのだ。」
という文章や、自分の行為はストーカーと総称されるだろう、という悟ったような語り口が面白い。
テルコは、他人の目にどう映ろうが、自分だけがこの独りよがりな恋愛観を理解していればよいと考えていた。多少の外野からのヤジは、むしろテルコを焚きつける要素でしかなかったのかもしれない。
「どちらにしても、マモちゃんは私の嘘を信じる。午前0時20分に、空腹のまま家で何もしていない人間がいるかどうかなどと彼は疑わない。人として品がいいのだ、と私は思う。」
マモちゃんのことを全肯定するテルコは、マモちゃんの、飲み友さえ見つけられれば良い、テルコの事情にはさして興味がない軽薄なやつだと薄々わかってはいても、なんとか誉め言葉を探し出してきてマモちゃんに当てはめる。
これは、恋が冷めないためのテルコなりの精一杯の抗いなのか、それともテルコが勘違いしないように頑張っているのにそれでも期待させてくるマモちゃんへの僅かな反撃の意味を込めての皮肉なのか。と、私たちならその二択のどちらかの心理だなと睨むだろう。
しかし、その直後にマモちゃんに呼び出されて、テルコが「ひゃっほう」と声に出してわかりやすく浮足立っていることから、先述の「人として品がいいのだ」といった冷静ぶった発言も、単純に恋の熱に浮かされて出た言葉だという考えに大きく傾く。
そう、恋に振り回されている間は論理が通用しない。私がこうして真面目に考察してみようとする姿勢こそ滑稽なのかもしれない。
「でも言っておくけどさ、マモちゃんは私が徹夜したなんて知らないよ、知ってたら自由席をありがたく受け取ってくれたと思うな、私、余ってるチケットがあるって言っただけだから」
チケットを徹夜で取ることが、引かれるような行為だと自分でもわかっているのだろう。マモちゃんがありがたく受け取る以外の反応、例えば感謝がなかったり、引いたり、といった反応をされることが薄々わかっていたはずだ。また、それがもととなってテルコのマモちゃんへの幻滅へと事が進むことが怖くて徹夜したことを言わなかった、という側面もありそうだ。
マモちゃんとの関係性をわきまえて、満足し、冷静に現状維持の関係を楽しんでいるように思われたテルコだが、ひとたび関係性に発展の兆しが見えると、「そうしているつもりはないのに、耳に届く自分の声はでれでれしている。」という具合にしっかりと大衆恋愛に沿った乙女の反応を見せている。
マモちゃんといる時は、素気ない態度や胸中での冷えた分析を織り交ぜつつ、愛の暴走をセーブしている分その反動で親友の前では解き放たれ、でれついている。しかも、自分の声が耳に届くまでにはでれでれしているということに気がついていない様子だ。これは相当の厄介ものだ。愛の暴走をセーブできているというのはテルコの思い上がりで、その実、水面下で愛をより大きく育ててしまっている。結局テルコも例に漏れず、こうした客観的に見て頭の悪い恋愛をしてしまっているのである。
Posted by ブクログ
サクッと読めるかなと思って久しぶりの読書。
1週間くらいで読めた。
いつかマモちゃんのことスパッと捨てていい彼氏ゲットして前も向けて終わるのかと思ったら全然違った。もはやホラー。愛ではなくて執着だよ。
何度もえー!?!?って思う場面があった。もうここでさすがに目が覚めるでしょ、ってところ何回もあったのに。ここまで自分のこと蔑ろにするのは家庭に問題があったのか?と思ってしまうくらい。この恋愛は20代前半までだよ…。
ナカハラくんは色々理由をつけたとしてもちゃんと区切りをつけれてえらいと思うよ。
私もテルちゃんみたいな女の子のことは嫌いだと思う。恋愛でここまで人生狂わされたくない。
(嫌いだけど私もテルちゃんみたいな一面持ってるなと思う。自分を客観視できない時は特に。)
マモちゃんが成田凌なのはなかなかいいチョイスだと思う。成田凌にクズ役のイメージができてしまったのはこの映画が原因なのか?
Posted by ブクログ
再読
この最初から最後まで胸が苦しくて、すごくわかるけど絶対ダメって知ってる片思い。素敵な人の周りを物欲しげにうろついて、自分で自分を満たせないかわりに誰かを満たすことで、自分を肯定してほしいって全力でアピールする愛情乞食。わたしがなったことも、されたこともあるけど不毛だし痛いし正直自分でも終わりどころを探してるところもあるのに。具体的な魅力があるわけでもないのに大好きだからやめどころがわかんない。テルちゃんも、わたしも、終わりはまた先延ばしになってしまった。
Posted by ブクログ
星3.4
どこにでもありそうな、平坦な、大きな事件や事故があるわけでもない、ただ当人にとっては大きな問題がある。
そんな、どこかにありそうな「日常」を描いた物語は、その主人公の思考の動き、表現が面白ければ面白い。
序盤から主人公の思考の動き、言葉選びや表現は面白かった。
だから、面白かった。
大きな事件や事故があるわけではない、と書いたけれど、主人公はなかなかの変人である。
好きな男に片思い。病的な片思い。常軌を逸していると、冷静な立場からは思えるだろう。
冷静な立場からは変人、と捉えられる主人公の物語といえば「コンビニ人間」もそうだったが、彼女たちの思考の中には、多少なりとも納得させられる点や、共感できる部分もある。
大人なら、ほとんどの人が片思いを経験したことはあるだろう。
誰かにお熱になったとき、大なり小なり常軌を逸した行動をとった経験が、ほとんどの人にあるのではなかろうか。
私も、心当たりはあった。
冷静さを失う瞬間、行動。
多くの人が、どこかで冷めて(覚めて)成長していく。
読んでいる最中は、変人を客観的かつ安全地帯から冷静に「やべー方向に進んでるな」と、冷笑するように、性格悪く達観するような立場から
もしくは
あ、ここはわかるぞ、そうだよな、そうなっちゃうこともあるよな、と、やや共感する立場から
その二択の捉え方がいったりきたりするような感覚だった。
中盤から、きっとこれはテルコの成長の物語なのではないか、と思うようになった。
部屋が荒れて、そこに友人の葉子がやってきてテルコが再びアルバイトを探し始めたとき、きっとテルコの目が覚めるのだろう、と。
そこを振り切った後半と、結末は予想外だったし、そこが点数を押し上げた。
マモちゃんとの関係性を維持するために、好きでもない男に抱かれても、愛が無くても、まさに「愛がなんだ」という覚悟で、好きでもない男との交際を決意する。
永遠にマモちゃんの呪縛から逃れられず、永遠に続く、なにものより優先される片思いを続ける哀しさ。
哀しさを感じる結末のようにみえるが、それだけとは思えないのが、この物語の巧さとも思える。
ここに登場する人物たちは、誰一人として、正解といえる恋愛はしていない。
そもそも恋愛に正解なんかあるのか、というと疑問であるが、この場合の「正解」とは、100人に聞いて、少なくとも半数の50人以上は「いい恋愛だねー」とか「幸せだねー」と言うだろうな、ということとして定義する。
そうすると、ここに出てくる人たちは、みんな
「そんな恋愛やめたら?」などと、周囲からいらんお節介を焼かれそうな恋愛をしている。
葉子の、自分が優位に立つことに対する執着も
葉子の母の、尽くす恋愛も
ナカハラの、いつか報われるのでは?という期待も、決して葉子を悪く言わない間違えた優しさも
マモちゃんの、浅い発想と、テルコを切ると宣言して結局踏ん切りつかずキープするだけはしてしまう芯の無さも
ひたすらに、みんな違ってみんな変。
みんな間違っている。
唯一、ナカハラは少し希望の見える結末だったかのように思えるが。
それはさておき「間違ってる」と書いたが、それって誰が決めることなんだろう、と思った。
結局、当事者にとっちゃあ「いらんお節介」なんだろう、と。
幸せは自分で決めたらいい。
外から見て、テルコ、そんな報われない恋愛はやめなさいと言ったところで、そんなものは不毛なのである。
そう、この「愛がなんだ」は
「お前らが言う愛がなんだ」と、自分が信じる道へと進む連中のことを指すのだと、私は解釈した。
そして、腑に落ちた。
だから、結末がとてもよかった。
だから、面白かった。
Posted by ブクログ
超真っ直ぐストレートな恋愛小説。
盲目な恋を経験したことがある身なので冷静に読めなかった笑。ただ、恋愛なんて痛い思いしてナンボですから。
シラフでは会えないから一杯引っ掛けてから会いに行くシーンが特に切なかった。マモちゃんの前では理想の自分でありたい、という想いが空回ってて、それでも繕わなきゃ会えなくて。好きな人の理想が自分なら楽なのにね。
ただ面白いのがこれだけ身を焦がすような片思いをしていても、ある日突然目が覚めて現実に戻される。その辺りも非常にリアルで面白かった。
表題にもある「愛がなんだ」という気づきが、今後のテルちゃんを支えてくれると思う。