あらすじ
人間たちは、テングとブタに二分されている。鼻を持つテングはブタに迫害され、殺され続けている。外科医の「私」は、テングたちを救うべく、違法とされるブタへの転換手術を決意する。一方、自己臭症に悩む刑事の「俺」は、2人の少女の行方不明事件を捜査している。そのさなか、因縁の男と再会することになるが……。日本ホラー小説大賞短編賞受賞作「鼻」他二編を収録。著者の才気が迸る傑作短編集。カバーイラスト/はんだじゅんこ
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Posted by ブクログ
表題の「鼻」だけでなく、他短編も秀逸。
「暴落」
・人の価値が株価のように市場に左右される社会。自分がいくら善行を行なっても、周りの人間の悪行によって自身の市場価値にも影響されてしまう。自分を守るためだったら平気で人を裏切られるだろう。道徳心や思いやりの心など存在するだろうか。
・完璧な資本主義の社会に染まりたい人はこの世界に住んでみたらどうか。
・主人公はクズのようだが正直彼の生きている世界皆クズだ。彼らのような性格はこの世界の標準なのではないか。
「受難」
・宗教に心酔した女性が聖行為だと信じて虐待を行うストーリー。
「鼻」
・最下層の「テング」を救おうとする最上層の「ブタ」である医者を応援していたけれど、最後の最後で彼が刑事が追っていた犯人だと知り、複雑。
・私は、最後の最後まで「現実」を信じることができず、「妄想」の世界に呑み込まれてしまった。
→威圧感が強い、思想が偏向すぎる刑事(現実)と物腰が柔らかい医者(妄想)だったら肩入れするのは...。
Posted by ブクログ
「暴落」 「受難」 「鼻」の三部作の短編集でした。
個人的には一つ目が一番好きだったかな。
鼻に関しては、解説を読んで初めて理解した。
テングとブタの、種族の生き残りを賭けた大戦争を想像していたけど、もっと身近で気味の悪い話だった。
Posted by ブクログ
ホラーというよりブラックな怖さでした。
収録されている「暴落」「受難」「鼻」では、「受難」にゾッとしました。ピンチなのに、やってくる人誰一人まともに話が通じないの怖い。ひょこたんはこうやって霊騎士だと思った人を弱らせては埋めてるんだろうか……
「暴落」は筋が通ったわかりやすさ読みやすさでしたが、その分?「鼻」の狂気が際立った気がします。「私」はずっと彼だけの世界に居るんだろうなと。。体臭恐怖症の刑事も彼だけの世界だったけど、「私」の見ている世界の方が歪でした。